六十二話 七天聖二位 聖刻ラグナ
「何?あなた」
「俺はァ!七天聖の序列2位!聖刻のラグナ!お前が星7を連れてるって言うやつだな?」
「やっぱり星7を...!」
七天聖と言う時点で分かって星7を狙っていたのか。このラグナという男は、先程から大きな斧を地面になんかいも突いている。そのせいか斧の周りには小さく穴が空いている。
「何で街を..?」
「とりあえず全部壊せば出て来るだろうからよぉ!!」
「そんな...!」
「てめえ!!」
「お?やるか?まあお前らは弱かったからそこの女、来いよ」
手の指を折り曲げてアリス達を挑発する。だが、勝てないと分かっているアリスはそんな安い挑発などのは乗らない。
「なんだ?作戦でも練ってるのか?作戦なんて練らないで直球勝負で来いよ!それとも、この最強の俺にビビる前も腰抜けの雑魚なのか?」
「あんたが最強ねえ...?序列2位が最強なんてあるのかしらねえ?」
その煽りに即座に反応したのはテティだった。いろんな奴に悪態をついているだけはある。
「ぐっ...うるせえ!グチグチ言ってないでとっとと来い!!!」
1位の奴...名前はルナと言っていたか、の事を言われるのは相当嫌だったらしくそう言う。
「どうするの?アリス」
「面白そうなことしてんじゃねーかラグナ。俺も混ぜろよ」
その時に現れたのはヴェラードだった。ヴェラードは剣を抜きながらラグナに近づいて行く。
「んだぁ?ヴェラードか。何か用か?」
「ああ、そうだな...!」
そういうとヴェラードはラグナに斬りかかる。突然の事で予期してなかったのか、咄嗟に斧で防ぐ。金属音とともに斧と剣が交わる。
「なんのつもりだ?話がちげえじゃねえか」
「ちょっとなっ...!」
剣を浮かせてもう一度斬りかかろうとするがラグナはそれを避ける。
そしてヴェラードはアリス達にこう叫んだ。
「お前ら逃げろ!!」
「ここはあいつに任せて逃げるぞ!」
アンバーグのその言葉に一斉に走り出す。遠くなるヴェラードを見ながらアリスは心配そうな顔で遠くなるヴェラードを見ていた。
どのぐらい走っただろうか。もうヴェラードどころか街まで見えないぐらいの位置に来た。走っていると向こう側に人が見える。その人の方に向かうと何やら見たことのあるような人物達がそこには居た。
「あれ?あんた達は...」
「あ!お前は!!」
「ホワイって奴と一緒に居た奴でアール!」
そこに居た四人組、七天聖のメイキス、ノーブル、クラウに後もう一人30ぐらいの
髪の長い白い服を着た女性がいる。
「あ!七天聖の...!とそちらは見たことない顔だね?」
「私はミーファといいます。よろしくお願いしますね」
おしとやかというか、上品な感じのお姉さんといった感じだ。
ふふふと笑みを浮かべながら握手を求めて手を伸ばす。
「そう言えば、あのホワイとかいう星7持ちは!?」
「さあね?あんたらには教えないけどね」
「この妖精風情が!!」
「メイキスやめるでアール!!」
「僕の球を見て落ち着いてー」
止めるノーブルにお手玉を繰り出すクラウ。その場はカオスとも言える状況になっていた。
「なんでおめえらは落ち着いてんだよ!!」
「これでも七天聖の序列7位、6位、5位なのよね」
「おい!これでもってなんだよ!こいつらと一緒にするなよ!」
「メイキスも一緒ー」
「一緒ではねーよ!!」
またこの漫才のようなやり取りを見せつけられたアリス達はため息混じりにラグナの事を喋り出す。
「そんなことより、ラグナってお前らの仲間なんだろ??どうにかしろよ」
「あ?あいつがどうしたってんだ」
今まであった事情を話す。ラグナというやつが街を壊し、狙っているということなどを全て話すと「ふーん」よいうようなあっさりとした返答が返ってくる。
「あー、私達じゃどうもできんね。それか、あんのクソ獣に頼むか」
「あールナのことでアールな!!」
「どうせ聞く耳持たないよー。あの子何考えてんのかほんと分かんないもん」
「あのクソ獣は私は嫌いだね。なんか買ってきてくれって言ったり、遊んでくれってまとわりついてきたり...この前なんて...!」
ヴェラードも言っていた序列1位で全員でかかっても勝てないという相手だ。本当に話だけ聞いても一体どんな奴なのかが想像すらできない。
「それか、私たっていいんだけどね」
「誰がそんなこと...!」
「やめなさいクラウ。無駄な争いなどはしない事ですよ」
ミーファのその言葉にはーい、とクラウは返事する。なんだか今まで会ってきた七天聖が変なやつばっかとうこともあって、まともそうだ。
「で、そこのおばさんは?」
「おい、馬鹿っ!」
メイキスが「おばさん」というワードに対して反応する。なんだかその反応は、まるで禁句だと言いたそうな...。
だが、それはもう遅かった。
「オバサンですってぇぇぇぇぇぇ!!表でなさい!!!あんたを血祭りに上げてやるんだからああああああああああ!!!」
「なに!?」
突然ミーファが激昂し、アリスに掴みかかろうとする。クラウとノーブルは怯えたように小さくなっている。
「あんた達許さないわよおおおおおおお!!」
「落ち着けミーファ!!お前はお姉さんて感じだろ!!」
「そ、そうでアール!!!」
ノーブルとメイキスがそうなだめると、落ち着いたのかミーファは先ほどのおしとやかな感じに戻った。
先ほどの「まともそう」というのは前言撤回した方が良さそうだ。
「まあ、つー事であいつを止めるのは無理っつー話だ。んで、あのホワイとかいうやつはどこにいる?」
「言うわけないだろと何回言わせればいいんだ」
「だったら力尽くで...」
「いけませんよ?そんな事をしては」
ミーファの制止に、メイキスは頭を書きながら「わーったよ!」と不満そうな声を出す。
「メイキスはミーファには逆らえないからねー」
「運が良かったな!今日はこの辺にしといてやる...が今度はそうは行かねえからな」
そう言ってメイキス達はどこかに行ってしまう。ただそれを見ていた。
「で、どうすんだ?」
「どうするってそりゃあ...」
「お、意外と追いつくのは簡単だったな!」
入れ替わり現れたのはラグナ。こちらを見ながら鋭い牙のような歯を見せている。
だがラグナには戦うそぶりはなかった。ただその歯を見せてこちらを見るだけ。
「もう追いついて!!って事はヴェラードは..!」
「お前らに報告があってな。お前らが連れてたやつはもう回収した」
「そんなバカな!?!?」
「嘘だと思うなら見てみりゃいいけどな。それじゃあな」
なぜかラグナはそれだけを言いどこかに言ってしまった。嘘だ。あそこは普通じゃ入れないはず。一体なぜ...。
そんな事を考えていても仕方がない。真偽を確かめるために戻らなくては...。
「おい、どうするんだ?」
「一応確認しにいきましょ」
「そ、そうだな....!」
小走りで街の方に戻る。街に着くと相変わらず人の気配もなくボロボロの街だけが残っている。
急ぎ足でピロン達の店に向かい階段を降りる。ドアを勢いよく開けるとそこにはピロンがいた。その何も変わりない風景に安堵をした。ピロンの方は何がなんだかわからなくて様子だ。
「ピロロロ。おい、何をそんなに慌ててるんだ?」
「だって!ホワイがここから連れさら...」
言い切る前に何やら視界が暗くなってくる。なんだ??眠くなるような感じではない。そして薄れゆく中で、こんな声が聞こえてきた。
「連れてきてくれて、ありがとうよ」
その声を聞くや否や、ドサッという音と共にアリス達は倒れた。




