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六十話 脱出!!



「ゲッゲッゲ!来たかアリス!!!相手をしてやりたいが、さてどうやって取り返すかな」



アリスを見てニヤリと笑いながらそう不気味に笑む。


「ゲルムさん...」



「ポロロ!まさかお前、この人間(ムシ)を元の世界に戻そうなんて考えてないだろうな?」



「いえ...そんなこと!」



そう言いながら、首と手を振りながらポロロはそれを否定する。



「あんな奴の言うことなんて聞かなくていいのよ!」



「でも...」



「ポロロ!ゲノムに任務を思い出せ!」



ゲルムが珍しく大声でそう叫ぶ。だがポロロの方はただ棒立ちのまま困り果てた表情でアリスとゲルムを交互に見ている。


「お前には同じように眠らせるのは効かないだろうからな...この剣で相手をしよう」



ゲルムが取り出した剣、ドラゴン・バスターは夜空に鈍く光っている。



「なんなの!?あれ!」



「これはなあ、星7のドラゴン・バスターだ」



「星7...って!!」



「さあ!来い!」



おそらく星7が相手では勝てる見込みはほぼないだろう。そう察したアリスは一歩後ろに下がる。



「なんであんたはそんな急いでるの?やっぱあの予言とかいうやつが?」



「テティ、なんの話?」



「アリスはしらなくていいことよ」



「その武器を...よこせ!!」



花火の音とともにゲルムが駆ける。取り出した剣を振るうゲノムに、アリスの方も剣を抜いてそれを受け止める。

大きな金属音とともにアリスはの足元の床が崩れた。



「どうだ?人間(ムシ)ィ!!」



「くっ..!」



その力にアリスの剣が弾き返される。そして、ゲルムが攻撃を仕掛けようとするとポロロが、アリスの目の前に出て手を横の広げた。



「もうやめましょう!どちらも話せば分かり合えるんじゃないんですか!?」



「いきなり渡せと言われて渡すやつがいるか?話をして絵空事だと言わない奴がいるか?ゲッゲッゲ!所詮はそんなものさ。だから...どけ!」



「どきません!戦いが何になるんですか!?争いをして何になるんですか?無駄に血を流して...!そんなもので解決できたって意味がないでしょう!!」



「手段を選んでるほど時間が無いのは知ってるだろう!」



「それは...っ!」



ゲルムは握りしめた拳を開く。予言なんてものはにわかには信じがたいが、本当に来るんじゃないかと思わせるようなゲルムに少し気を許しそうになったがやはりそんなものを信じれない。



「恐らく、何言ってもダメだよ!アリス!逃げるよ!!」



ポロロを連れて逃げだすアリスをゲルムは追う。パレードが始まっている人人混みに紛れるが周りが魔物だらけという事もありやはり目立ってしまう。

人が多く逃げ入れないと踏んだアリス達は、ピョンピョンとジャンプでパレード中の車に飛び移り逃げようとする。



「あいつしつこく追ってくるよ!!」



大きな花火の音が聞こえてくる。空を見上げると夜空に何発もの花火が打ち上がっている。赤や青、黄色の様々な色の花が空で咲き誇っているようだ。



「そこの人間を捕まえてくれ!!!泥棒だ!!!」



「ちょっ...!」



その掛け声とともに近くにいた何人もの魔物がアリス達に飛びかかる。パレードをやっていたこともあり魔物は見渡す限りに沢山いる完全なアウェーという感じだ。



「違うっての!泥棒なんかじゃないんだから!」



「え?違うのか?」



すぐに解放はされたが、その頃にはゲルムが目の前にいた。逃げようにも、恐らくこの魔物の量では同じような事をされて逃げ切るのは難しいだろう。



「おいおい、なんか楽しそうな事をやってるじゃねーかよ」



「ガーディス!?」



騒ぎを聞きつけて駆けつけたガーディスが剣を抜く。流石のガーディスでも恐らく勝つのは難しいだろう。どうする....どうすれば...。




「その時、アリス達の近くに、大きな門が現れる周りが石でできていて門は鉄でできている。その門が開き、中から光が漏れる。その門が開いた途端に、アリス達はその門に吸い寄せられるようにあっという間に中に吸収されていった。

アリス、テティ、ガーディス、ホワイだけが取り込まれるがゲルムもポロロも吸い込まれることはなかった。ゲルムが追おうとするが、入る前に門は扉を閉じ姿を消した。



「っ...!バーリム!そこにいるんだろう!?」



その怒ったようなゲルムの言葉に青い体でツノの生えた魔物が姿をあらわす。



「やっぱりお前か」



「なんだ?不満だったか?」



「なんで逃したんだ?あとちょっとで捕らえられたのに!」



「こういうのって逃げられるのが定石ってもんだろ?」



「バカか!世界が滅ぶっていうのに!」



その言葉にゲルムの怒号が飛んでくる。だがそのバーリムとかいう魔物は悪びれたそぶりもなくヘラヘラとしている。



「ゲルちんは真面目すぎるんだって!」



「あとそのゲルちんってのをやめろ。さもないとこれで叩き斬るぞ」



「おー怖!」



そういっても、バーリムは茶化すような仕草をやめないゲルムははあ、とため息をついた。



「んで?戻ってきたってことは収穫はあったのか?」



「いいやー?星7武器なんてどーこにもねえよ」



「そうか、で、レドミは?」



「あいつなら、あの人間どもの世界じゃないか?」



なら、ちょうどいい!追うぞ!」



「まじ?さっき戻ってきたのに?」



「誰のせいでこうなったと思ってる」



「へいへい」







「何が起きたの??」



突然の事に困惑する一同。だがその場所はなんだか見覚えのある場所だった。そこはアリス達が魔物の国に飛ばされた時の場所だ。



「戻って...これたの?」



「ここって、魔物の世界に行ったときの...」



「ホワイも杖もある!という事は脱出できたて事なのね!」



「なんか忘れてるような気がするけど...」




アリス達はマックスヒーローズの事など全く覚えていなかった。

当の本人たちがいまだ彷徨っているとも知らずに。



「おーい!アリスー!どこにいるんだー!」




アリス達は見合ってクスッと笑った。戻れたという安心感とホワイを守れた達成感のようなものが入り混じっている。


「とりあえず一旦は良かった...って事でいいのね」



「ええ!帰ろう!」



「俺は好きにさせてもらうぞ」



ガーディスはそう言いながらどこかに行ってしまった。アリスと戦うというのはもうとっくのとうに消えていた。

みんなどんな顔をするだろうか。そんな期待を込めて歩き出す。だが着いたその時は思わなかっただろう。この後に起こる事にー。



「なに...これ?」



急ぎ足で街に戻ると、そこには衝撃の光景が広がっていた。そこにはもう街というものはなかった。そこにあったのは、街だった残骸だけが残っている光景なのだから。


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