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五十九話 逃れられぬカルマ



「ゲッゲッゲ、本当に行くのか?ユア」



「ああ」



ユアと呼ばれたそのユオに似た背の高い魔物はそう言いながらゲルムに背を向けた。1、2歩ほど歩いて何か言い残しがあったのか、その場で止まりゲルムの方に方向転換をする。

そして3歩ほど歩いては目の前にまでやってきて何かをゲルムに手渡す。それは何やら武器だった。



「そうだ、この武器をお前に託そうと思ってたんだ。きっとお前にも使えるはずだ。この武器はあまり好き嫌いをしないからな」



「お前...これって!!」



その魔物が取り出したのはドラゴン・バスターだった。ユアが今も伝説や英雄として語られているのもこの武器のお陰とも言えるぐらいだ。このドラゴンバスターは、星7というとても高いレア度に、そのレア度にふさわしい強さを誇る



「弟はきっと俺を探しに行くと言い出すだろう。『アナザー』は一回行ったらしばらくは戻って来れないだろう。あいつを...ユオをよろしく頼むよ」



「その剣はもって行かないのか?」



「え?ああ、とりあえず持ってかない事にしたよ」



手を上げて去ろうとするユアに「おい!」と呼びかける。ユアの方はまだ何かあるのか、というような表情でゲルムの方を見る。

ゲルムは下を向いたまま少しの間黙ったままだった。



「勝てないって分かってるから、これを渡したんだろう?...もう時間がないんだ...」



「倒せるそんなもんは最初から分かってたら面白くない...だろ?」



そう言って笑顔を見せるユアは輝いているように見えた。太陽が照らす光のような...。



✳︎



「『最初から分かっていたら面白くない』と、お前はそう言ったな。お前がアナザーで生きているかどうかはわからない。だがお前....いや我々ゲノムの使命であるギルメラの討伐をやるのみだ」



「おいあいつブツブツ何か言ってるぞ?」



噂でもするかのように近くにいたマブがゲルムを指差しながらそう呟く。アルとホーも何かを話しているようだったが、声が小さくゲルムには聞き取れなかった。



「お前らの相手をしてる暇は無いんだ」



「お前!!逃げるのか!?」



そんなアルの言葉も無視してゲルムは魔物の行き交う道に紛れてしまう。リグ達が追おうとしてもその人の多さにゲルムをすぐに見失ってしまう。



「ちょ、どうしますか?リーダー」



「うーむ...とりあえず探すぞ!」



「おやおや、何かお探しですかね?」



そこに現れた1匹の魔物。そのスーツの姿の恐竜はマブ達に近づいてくる。



「何だ?お前は」



「わたくし、ヘントールと申します。戻って来て見れば何やら面白そうな事をしていますねえ...これだから人間というものは愉快ですねえ」



「何言ってんだ?こいつ?あいつらの仲間か?」



「あいつら...というのが誰の事なのかは分かりませんが、私も混ぜてくださいよ」



「どうするんです?早くアリスと合流しないと...」



ヘントールは、アリスという名前に反応して少し嬉しそうな顔になる。その反応を見てマブが「どういう関係だ」と訊ねた。



「ほう、アリス!!あなた方もアリスさんとお知り合いでしたか。合流ということはアリスさんもここにいらっしゃると」



「お前は...アリスと何の関係が?」



「アリスさんには感謝しているんですよ??ハルガンデスを倒してくれたのですからね。闇魔を配ってやつを倒す予定...だったのですが倒してくれたので手間が省けました」



何やら嬉しそうにそう言うヘントールに、マブ達は怪しいやつを見るように接するがヘントールは相変わらず同じ感じだ。



「さて、何が起こってるのか説明して頂きたいですねえ...」



「何でお前なんかに...」



「教えてくださるのなら、いいものを差し上げるのですがねえ?」



「いいもの...?」



へントールは背負っていた荷物の大量に入った紫の布を床に置き広げる。そこには闇魔の装備や普通の装備などがまばらに入っている。



「いや、要らない」



「ええっ!?」



何にでも食いつきそうなマブのその意外な一言にアルもホーも驚いたような表情になる。マブの事だからこういうのにはすぐに興味を持つと思っていた。だがそんなことはなく。あのマブが断ったのだ。



「リーダー、おかしい」



「どうしたんですか!?リーダー!!変なものでも食べました??」



2人のその言葉に、2人の頭にげんこつを1発入れる。げんこつを入れられたアルとホーの頭にはみかんほどの大きさのたんこぶができる。



「俺を何だと思ってんだ!お前ら!!」



「痛いよーリーダー」



「そうか、こんなもんを見つけたんだがなあ?」



ヘントールが取り出した武器は見た目が他と異なっていた。黒いデザインの弓でトカゲのような紋章が彫られている。その異質な弓に引きつけられるかのようにマブはその弓を手に取る。



「どうだ?興味を持って使ってみたんだが、ただの弓としてとしか使えないんだ。何かの能力があるかと見てみたが何もわからんだた分かるのは...見てください」



「手渡されたアルが手に取り、スッと指を弓になぞると大きなウィンドウが姿を現す。普通ならここにスキル名や強さ、レア度などが書いてあるのだが。全てが「???」と3つのクエスチョンマークになっていて何も見えない。唯一見える所はレア度のところでそこに記されている☆の数は7つ。



「これって...!星7ってやつですよ!」



「なんでそんなレアものが..!!貸せ!」



「それが、何もわからないんですよ。リーダーにわかるわけ...」


マブが同じように開くと今度は???の部分がはっきりと見えてくる。ちゃんと日本語がそこには表示されている」



「ん?なになに?『心移しの矢?」



「読めるんですか?リーダー!」



「ほほう、星7の武器は持ち主を選ぶと聞きます。もしかしたら...というやつですかねえ?」



隣からアルやホー、ヘントールがのぞいてもそんな文字は見えず相変わらず「???」という記号だけが羅列されているようにしか見えない。



「リーダー!これすごいですよ!!」



「お、そうか?よーし?早速あの魔物どもを倒すろするかー」



「いやこれアンタのじゃないし...」



「これはあなたに差し上げます。私が使えないんじゃ持ってても宝の持ち腐れってやつですので」



「でも今起こってる事を説明しないとー」



「いいんです。面白そうなので」



「この人がいいっつってんだからいいんだろ!!ほら行くぞー!しゅっぱーつ!!」



そう言いながら手を上に掲げて歩き出す。アルとホーは、ただそれについていった。








「あ、いた!!」


ホワイを連れて無事にあの場から逃げきれたテティは座っているポロロを見つけて近く。



「ああ、あなたは...ええーっと確か...」




「テティよ。あなたにお願いがあるの。あなたの武器って確か移動するやつだったわね?あなたにこの子を元いた世界に戻してほしいの」



「でも、テティさんは?」



「私はアリスを探してくるから」



「でも...」



ポロロはそう呟くと下を向いた。少し様子が変なポロロに、テティはどうしたの?と声をかける。



「でもやっぱりゲルムさん達を裏切れないんです」



「なんで!あいつからひどい仕打ちを受けてるんでしょ!?」



「でも...それでも!!」



「アンタはそれでいいの?あんな奴らに好き勝手言われて『はいそうですか』で終わるの?」



その言葉にまた下を向くポロロ。手をグッと握りしめて小さく「嫌です...」とだけ言う。



「じゃあ!」



「でもダメなんです!!!ダメなんですよ...」


震えた声でそう言うポロロになんて返していいかがわからない。確か下位の魔物は上位の魔物には逆らえない一種の上下関係があった。それに縛られているここの魔物達はそれに従うしかないのだ。



「そうなんだ...」



「ゲッゲッゲ!その通りだ!」



「アンタ...ゲルム!!」


あっという間に追いついてきたゲルムがじわじわと近づいてくる。



「この私の武器は...渡さない!」



「そうよ!」



いざという時はホワイの移動させる力がある。聖竜の時も見事にどこかにすっ飛ばせたし、最悪これで回避すれば良い。どちらかというとこちらに分があると言える



「この力で飛ばせるのはせいぜい1人...!だけどあなただけならっ...!」



ホワイは時を止めて杖をゲルムの前に通過させる。これでゲルムは消える...はずなのだが、ゲルムは消える気配は

ない。

時は数秒ほどしか止めることができずまだ時は元に戻る。



「あれ?なんで?」



「ん、今何が起きたんだ?」



ゲルムの方も何が何だかわかっていないようで、少し困惑している。



「何で、何で聞かないの!?」



使ったということになっているようで、スキルの所には次に使えるまでの時間と、時計のマークが記されている。



「効いて...ない!?」



「なんだかわからないが来てもらう!」



ゲルムが手を伸ばそうとすると声が聞こえてくる。その安心感のある声。



「テティ!」


「アリスーー!!」


アリスの声に安心したテティは少し情けないような声を出した。





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