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五十五話 死霊人形使い(ネクロパペッター)



「し...死んでる?はは、何をバカなこと言ってんだお前は」



ガーディスは「死んでいる」というドグロの衝撃の言葉に、ひきつるような顔でそう返す。口調から明らかに動揺が見えていて震えるような声質だ。

いかにも真面目な感じのドグロは、無情にもそれに対してして「本当のことだからな」と返すとガーディスは今度は怒鳴るように叫ぶ。



「そんなわけあるか!!だって...」



「だって、なんだ??」



「今こうやって歩いてる。一緒にいる。だから....!」



「察しの悪いやつは嫌いなんだ。私が動かしてるに決まってるだろう」



ドグロが杖を上に振ると操り人形かのようにニアが片手を手をあげる。さらにクルクルと杖を回すとニアも回転を始めた。まるで操り人形のようにドグロが犬の真似をしろと言うと犬のように手足を地面に着きワン!とニアは吠える。



「っ!そんなわけ...そんなわけっ!!」



そうだ、ただ操られているだけで死んでいるという証明にはならない。自分にそう言い聞かせながら手に握りしめている武器を向けた。

確かに体が異様に冷たかった。だが、だからと言ってそうと決まったわけではない。



「そうだ...操られてるだけ....操られてるだけ...」



ドグロのその言葉には根拠も何もない。そんなことは分かっているが手が震えてて止まらない。根拠のない空想だと思う一方でどこかその空想が嘘ではないような気がしてならないのだ。



「私って...死んだの?」



驚いているのはガーディスだけではなかった。自分自身で死んでいると認識できるものではない。ニアにとってはただ空白があったにすぎないのだ。聖竜のブレスが自分に飛んできたところで途切れ、気づいたらこのドグロという男の前に居た。ただそれだけにすぎない。



「じゃ、じゃあ、私を助けてこの世界に送ったってのも??」



「ああ。そういう事になるな」



今まで出てきた者たちにも「助けた」などというそれっぽい言い訳をしたのだろう。



「私のこれは死霊人形使い(ネクロパペッター)と言ってな。死体を操ることのできる杖だ」



そう言ってドグロは先端にガイコツのついた杖を見せびらかす。白いデザインに赤い動脈のような細い線が絡みつくようについている。不気味さだけはとても高い。



「ただ、これには制限があってな。死ぬ瞬間をこの目で見えないといけない。だから苦労したよ」



「嘘だ...そんな事...!」



「そいつは勝手に死んだからいいが、死体を作るのに何体も魔物を殺してきたか」



「ひ...ひどい」



そのひどいという言葉に笑いながら、杖の先端にデザインされてるガイコツを撫で始める。



「クハハハハハハハ!!!この武器の一番楽しいところはこうやって知り合い同士をぶつける時だ!!!」



「うるせえ!!」



あまりにも最低な言動にガーディスは武器を振るおうとする。だが目の前にニアが立ちふさがり、ガーディスは攻撃の手を止める。死霊人形使い(ネクロパペッター)によって操られているニアには攻撃できない。



「どうしたら信じてくれるかね?そうだ!!」



近くにいたネズミのよう生物を発見するとそいつに近づく。そいつは鼠色のボディにフサフサとした毛が生えている。



「なんだ?オラになんか用だか??」



その瞬間ドグロは腹に小さなナイフを突き立てた。緑の血が流れ始め、すぐにその魔物は絶命した。

だがドグロはナイフをなんぢも突き立て死んだことを示す。ドグロの服や顔に血が飛び散る。

突然の事に誰もが何も言えなかった。ドグロはネズミの死体を2回ほど杖で叩くとネズミは起き上がり踊り始めた。そのネズミにまたナイフで3、4回ほど刺して再度生きていないということを示す。

その後ぐったりとしたネズミの魔物を再び踊らせる。



「どうだ?」



「なんて酷いことを」



まさかの行動に引いているガーディスとニアだが、ドグロはとても嬉しそうな表情をしている。



「そんなわけない!!そんなわけない!!」そんなわけ..!」



そう叫びながらガーディスは攻撃を再開する。ニアを避けるように隣からドグロを狙う。だが、横を通過した時にニアのナイフがガーディスの脇腹を直撃するのだった。血が出て熱い感触がする。



「ぐっ..!」



よろめいて攻撃をしようとするが先ほどナイフで刺されたことで貧弱な攻撃になってしまった。スローモーションで誰でも避けられるようなゆるからな攻撃をドグロは避ける。

自由になったニアはガーディスにこう叫ぶ。「殺して」と。



「殺...何言ってんだお前は!一緒に帰るんだぞ!」



「無駄だ。私から一定以上離れることはできない」



そういえば、なぜかここから出れないと言っていた。それはこういうことだったのか。



「てめえ!」



「どうする?私を倒すとそいつまで消えるぞ?」



「っ!」


その言葉にまた攻撃が緩む。ドグロの卑劣な手はガーディスをどんどん翻弄して行く。ドグロは何度もニアを操ってはガーディスへと攻撃を促す。


「おい、どうした?」



ニアはぎこちないような動きでガーディスの方へと向かって行く。動きも遅くまるで抵抗しているようだった。

そこへガーディスがやっと一撃を加える。



「この!動け!!!」



そう言いながら杖を振るとニアの体はガーディスの方へと向かって行く。



「やれ!」



「ニアの振り回すナイフを避けるも体の所々にある傷が痛み少し反応が遅れてしまう。そこにまたニアがガーディスの体にナイフを差し込む。



「ぐっ!」



「よくやった!後は私が...!」



杖から青くて丸い魔法弾を2、3発ほど放つとそれはガーディスの方へとぐんぐん進んで行く。だが、ガーディスに届かずガーディスの前に立ったニアに全て直撃した。



「んっ?何をしてるんだ!」



ニアの突然に行動にドグロも困惑していた。杖を動かし、ニアが思うように動く事を確認する。

ならなぜ先程は勝手に動いたのか...。対象として動かしている限りは自分の手足のように動くはずだ。



「クソこいつ!!!勝手に動きおって!やってしまえ!!」



「今なら!!」



ニアの様子外の行動に今度はドグロの方が翻弄される。その隙に攻撃を仕掛けようとするのだが、ガーディスは、攻撃を中断してしまった。



「こいつをやったら、ニアは...」



「そうだぞ。お前は私を倒せない!!」


そう言いながら、ドグロはまた魔法弾を放つ。今度はちゃんと直撃して弾けた魔法弾のところに傷ができる。

躊躇っているガーディスを見て、ニアはドグロの方へと近づいて行く。



「ほら何やってる!!あいつにとどめを...っておい!」



「ガー君!!!今だよ!!私ごと!」



いうことを聞かず、ドグロにまとわりつこうとするニアにそれを振り払おうとするドグロ。攻撃するには絶好のチャンスとも言える。腕や体に絡みつくようにニアはひたすらドグロの攻撃を妨害する。



「だけど...ニアが!!」



「もう私はここにはいない!!私はただのまやかしに過ぎない!!」



「まやかし..!」



「くそ!離れろ!!」



「早く!私ごと!!」



走馬灯のようにニアと過ごした日を思い出す。そして武器を構えると大きな声でドグロに向かっていった。




「うおあああああああああああああああああああああ!!スキル:黒魔斬刀!!!」



その攻撃はニアもろともドグロに直撃した。次に見えたのは、ニアもドグロも倒れているという光景だった。



「...ニア!」



倒れているニアの方に急いで向かい抱きかかえる。ニアは少しずつ薄くなっているような気がする。



「どうやらお別れみたいだね。あの骨の人を倒したら本当に消えちゃう見たい。見て!まるで透明になっていくようだよ」



「ニア...ニア...!!」



ガーディスは涙を流しながら名前を叫ぶ。死霊人形使い(ネクロパペッター)。死体を操るという非道な杖。ガーディスはニアの手を握りながらひたすら涙を流し続けたのか



「ガー君と一緒にいれ....よか....さよ....ー君」



声も途切れ途切れになりどんどん薄くなっていったニアは消えた。キラキラと小さく光る光は空へと消えていく。



「うああああああああああああああああああああああああああああああ!!」



その場には慟哭だけが響いた。

武器紹介コーナー


死霊人形使い(ネクロパペッター)


ドグロが扱う死人を操る武器。ただし死ぬ瞬間を見ないといけない。

無限に作れる為、ドグロのように自分で死体を作れば簡単に仲間を増やせる。

強さはそのままなので強いほど操るのが難しいらしい。

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