五十二話 潜入!?マックスヒーローズ!!
「マックス...ヒーローズ?」
困惑するニアに、マックスヒーローズの3人は一度顔を見合わせてマブがここに来た経緯を話し出す。
「アリスって奴を知らねえか??アリスを追って穴を出たら、なんとびっくり魔物だらけの街と来た」
「そこで何かねえかとウロウロして、白羽の矢が立ったのがここって訳だ」
「俺が白羽の矢を立てたんだろうが!!」
アルの説明に口を挟むようにマブがそう訂正をする。だがマブは小さく「リーダーはあれやこれやって行ってただけでしょ」と呟いた。それが聞こえていたようでげんこつで一発、アルにお見舞いするとシューという音とともにアルの頭にはタンコブが出来ている。
「アリス...って人は分からないけどガー君と一緒にいた人は居たかな..」
「ていうかリーダー、アリス探してたんですか?」
「う、うるせえよ」
少し恥ずかしそうにマブは顔をそらす。口に手を当てて何やら喋っているようだったが小さく何を言っているかはわからない。
「とにかくだ!!!アリス...いやお宝を探してんだ。よろしくな」
「あ、うん..」
マブの差し出された手に応えるべくニアが手を出すと、マブにはとても冷たい手の感触が伝わり、つい手を引っ込めてしまう。
「冷たっ!なんだこれ!」
「そうかな?」
「リーダー早くアリスを見つけないんですか?
「お・た・か・ら・だって言ってんだろ!!まあいい。さて...どこから行くかな」
「案外こういう所にあったりしますよ」
そう言いながらアルがドアを開けるとそこは不気味な部屋だった。
青っぽい石の壁にロウソクがいくつか立っている。部屋は薄暗く窓もないため不気味さが増す
「なんだ?お前達は」
そこにいたドグロが椅子から立ち上がったその椅子もドクロを模した良いとはいえないデザインだ。
「なぜここに、人間が居るんだ?」
「お邪魔しましたっ...ってわけには行かないよな流石に!よし!お前をぶっ倒す..!」
椅子から立ち上がり戦闘態勢になるドグロを相手に、震える足を止めながらそう決意するリグだが、ホーがそっと耳元でこんなことを囁き始める。
「リーダーより...多分強い」
「うるさいうるさい!やってみないとわからないだろ!」
そう言いながら大きな斧を構える。この斧は、この魔物の世界でさっき買ったばかりのものだ。だがその重さで持ち上げてもすぐに床に置いてしまう。
「なんだかこの街にあった店でイイもん見つけたからな...こいつでお前をぶった斬る!!」
「できるものならな!!」
取り出した杖を振ると床から魔物が何匹も現れる。20、いや30はいるだろう。突然の魔物の出現に、まさかこんなに魔物を呼ぶとは思ってすらいなかったマブは少し慌てた様子になる。冷や汗を垂らしながら何とか切り抜ける策を考え、こんなことを言い出す。
「ああ、えーっと急用を思い出しちまってな...じゃ、帰らせてもらいます」
「逃げられるとでも思ったか?私の武器は魔物や人間を操ることができるんだ。どうだ?すごいだろう」
「え、ええ..?」
「リーダーなら行けるよー。だって最強のリーダーだもん!」
ホーのその言葉で調子に乗ってしまったマブは「よーし!!」という声とともに大量の魔物の軍勢の方を向く。斧は重くて使えなかったようでいつも使っている槍を取り出す。すると魔物たちが少し嫌そうな顔をしているような気がする。
「そんな小さな槍で勝てるとでも?」
「はっはっはー!!勝てないわけないだろ!!」
「どーすんだよホー!余計なこと言って!」
「でもー、リーダーに戦わせれば被害が少なくて済むじゃん」
アルとホーはそんなことをヒソヒソと話始める。ホーのその言葉に納得したのか、アルは手を叩いてリーダーのマブの方をみる。
「頑張ってください!リーダーならいけますって!!」
そんな思ってもない事をいうアルに手を振って任せろと言わんばかりにサムズアップをする。その隙にニアの手を引っ張りながらアルとホーはドアから出て行った。それを見たドグロは舌打ちをした。
「他のやつは逃げたか...まあいい、こっちも手はある」
「あの野郎ども!いつのまに!!」
「お前の作戦だろうが無駄な事だ」
その言葉を聞いてマブは「そ、そうだろー!!」と偉そうに腰に手を当てる。実リーダーを囮に逃げたのだとは口が裂けても言えない。そう思わせないためのただのハッタリだ。
「いけ!!」
その合図とともに魔物たちが襲いかかってくる。だがマブは冷静に近寄ってくる魔物達をただ見ているだけだった。
「行くぞ!!超奥義!!!スーパーミラクルグレイトバスター!!!!!!」
そう叫びながら槍を上に振り上げる。だが、すごい名前の技が来る気配すらない。
攻撃が不発したのかとドグロが少し油断しているとマブは一気にドグロの方に走りこんできた。
「そんな技あるわけないだろこのバーカ!!」
「こしゃくな!」
ドグロは何体かの魔物を防御に使いマブの槍の攻撃をその魔物に受けさせる。その魔物は浄化されるように消えて行った。
「ほう...これは厄介な」
「なんかあいつゾンビっぽいしこの浄化の槍でいける気がする!!!」
闇魔の時にアリスが使ったきり出番がしばらくなかった浄化の槍はどうやらドグロとの相性はいいようだ。攻撃をするとドグロの呼んだ魔物はどんどん消えてゆく。
「うおおお!」
一気に余裕モードになったマブは、魔物を消しながらドグロの方に詰め寄っていく。とうとうドグロの前にやってきたマブはドグロに向けて攻撃を仕掛けるが、その槍はドグロの杖に当たる。ドグロにあたってないが浄化の槍というだけあってドグロは少し苦しそうに呻いている。
「はっは!お前もここまでだ!」
「そう思うか?」
そういうとドグロの肩からは突起のようなものが現れ顔のパーツもどんどん変化して行く。これはあのユオの時と同じものだ。もちろんユオの時にいなかったマブはそんなことは知らずに変化するドグロを見て一気に血の気が引いた。
「これが上位魔物の力、『獣鬼化』だ」
「あー、トイレ行ってきていいですか?」
一方、マブを見捨てて逃げたアルとホーはニアを連れて部屋を探索していた。黄色い照明と赤いカーペットに暖炉がある。暖炉の上には女神の像が両手を前に出してまるで何かを求めるようなポーズをしている。
「んー何もないねえ」
「リーダーの犠牲を無駄にするなホー!!きっと何か見つかる筈だ!!」
アルは手を握りしめ「時々いい人だったなあ...!リーダー...天国でもお幸せに!!」と涙を流しながら呟いた。もちろんマブはまだ死んでいないが、ドグロに勝ち目はないだろうと、アルの中では完全に死んだ扱いになっているようだ。
「ええと、まだ死んでないじゃんじゃない?」
そのニアの言葉にも、アルは否定し上を見る。そんなあるを放っておいてホーは探索をしていた。本棚などを調べてみるがただ色々な色の本が並んでいるだけで変わりはない。
「何もねえなあ」
「何もねえなあ..本当に何かあるのか?」
そう言いながらアルは何気なく女神の像の両手のところに腕をのせる。
その手はガコン、と音を立てて女神の腕がアルの重さで下がると、大きな機械音とともに暖炉が横に動き出し奥にある道が姿を現した。奥の方は暗くて何も見えない。
「おい、これって!」
「隠し通路ってやつ?」
「行ってみるか」
暗い道を道を小さな明かりを照らして進む。天井も床も壁も、全て紫の石が敷き詰められており一層不気味さを増していた。しばらく道を進むと鉄製のドアが姿をあらわす。
「こういうのは蹴破るのが一番だ」
アルが何回か蹴りを入れてみるがもちろん鉄のドアというだけあって蹴っても開く気配などない。仕方がなくアルは剣を取り出してスキルの名前を叫んだ。
「うおおおおお!!烈風斬り!」
だがスキルが出る気配すらなく、ただ金属音が響くだけだった。もう何回か試してみるが結果は同じで出る気配すら全くない。
「多分、この辺は武器とかの能力が封じられてるんじゃない?」
「なにっ!じゃあどう開ければ...」
「何?うるさいな?」
ドアは普通に開き中から女性が姿をあらわす。どうやら鉄のドアには鍵などはまったくかかっていなかったようで普通に開けることはできたのだった。それをアルは確かめもせずに勝手に閉まってるのだと勘違いしたようだ。
「鍵なんて閉まってないじゃん...」
「で、君は?」
話を逸らすようにアルがそう尋ねるとホワイ...とだけ小さく自分の名前を呟いた。
それは確かにゲノムという奴らに連れ去られたホワイ本人だった。星7と言われているホワイの杖もちゃんと持っている。
「何でここに?」
「へんな奴らに連れてかれた。ここじゃ武器の効力が無いから脱出もできない」
あの隠し扉は一度閉まったら外からは出れない仕組みのようで、ここで監禁されているようだ。そしてここではホワイのいうとおり武器の効力が無くなり、ただの剣や斧でも壊せないほどの頑丈な作りの石に囲まれてただここにいるしかないという状況だった。
中はある程度の生活はできるようにベッドやら机やらはあるが、壁だけに囲まれてそれはまるで監獄のような内装だ。
「なんだかわからないがこんなところに女性を置いとくわけにはいかない。さあ行こう!」
「さっきからさーすごい音聞こえない?」
確かにホーの言う通り先程からものすごい音が聞こえてくる。それは何というか、なにかをぶち壊すような音だ。
「まあいい、いくぞ!」
階段を登り来た道を戻り入り口に戻る。だが入り口は瓦礫のようなもので塞がれていた。木や石がまばらになっていて出ようにも出れない。
「何だこれ!どうなってんだ!?」
「こっちからじゃ武器も使えないし...」
その時、なにやら大きな爆発音が聞こえ塞いでいた瓦礫は全て粉々に砕け散った。隙間からは日差しが溢れてくる。太陽を背に顔をのぞかせたのはマブだった。
「リーダー!」
「早く出るぞ!」
「どうしてここが??」
「まあ、お前らのことなあ何でも分かるからな!わっはっは!」
「で、これはどういう状況?」
それはもう屋敷という原型もなく、屋敷が破壊された後の瓦礫や木などが散乱しているだけの状況だった。