五十一話 裏切りの代償
長らくお待たせしてしまって大変申し訳ありません！！！
「アリス！！！」
激昂して獣鬼化というもので、まるで化け物のような姿へと変貌したユオは、アリスの名を叫びながら勢いよく襲いかかって来た。追い詰められて槍で突いてくるユオにやっとアリスは自分の剣を抜いてそれを防いだ。金属音とともにアリスの剣とユオの槍がぶつかり合う音。なんども槍でアリスの剣を叩きその音が2、3回ほど奏でられる。
「だから違うの！！話を！！」
「うるさい！裏切る奴は絶対この手で...潰す！！！」
「ほお...下位のくせに獣鬼化できるとはな」
「さっきからその...何とか化ってなんなの？」
リグのその言葉にテティが食いつく。リグはそう尋ねられると「知りたいか？」と言ってテティを見る。小さな舌を出したりしまったりしながら
「この世界は階級というのがある。魔物によって階級があり、『下位』『中位』『上位』に分かれていて、獣鬼化は、俺たち魔物の秘めたる能力を引き出す事のできる力だ。これは普通なら『上位」にしか使えないはずだが...コイツは特別のようだな」
「特別？」
「ほらほら、おしゃべりしてる暇にお前の人間はピンチだぞ」
ゲルムが指差す方にはアリスが防戦一方となっている姿。アリスは攻撃を受けているばかりで、攻撃をする素振りすらなかった。
「このまま裏切り者のお前が消えるばかりだぞ！！いいのか！！」
「だからアレはあいつの罠で...！」
「うるせえうるせえ！！！」
裏切られる事とてつもない憎しみのようなものがあったようで、何度も何度も言ってみるがまるで通じる気配すらなかった。ユオをここまでさせる裏切りというのは一体何があったのか...それを知る由もないアリスは、ユオの攻撃を避けるが防ぐ事しかしなかった。
「もう何回も言ってるのに、まるで聞いてないでしょ！無理なんだって！アリスそんな気味の悪いバケモノ、倒しちゃいなさいよ！」
ついにユオはアリスの首を掴むと地面に押さえつけてしまった。押さえつけている首のところに勢いよく振りかざした。
「アリスゥゥゥゥゥゥ！！！」
だが、寝ていたはずのリグが起き上がりアリスの名前を叫びながら起き上がった。その声に誰もがリグの方を向く。リグはアリスを確認するとググググという奇妙な声を出しながらアリスの方に向かっていった。とても笑みを浮かべたその表情で迫り来る様は悍ましささえも感じる。
「あんた！起きちゃったの！？」
「この眠らせる魔法はなかなか起きないはずだが...アリスへの執着がそれほどすごいのか...！」
「アリスアリス！！！アリスアリス！！！はっはっはっは！！」
なんだかリグの方はアリスを見るだけですごく嬉しそうだ。リグはアリスの方へと真っ先に突進していった。
アリスが避けるがリグは止まらず壁の方へと勢いよく走って行く。壁にまで到達するとすごい勢いで黄色っぽい壁を壊して、リグは止まった。そして再びアリスの方に奇妙な眼が向く。
「本当に気持ちが悪い...なんなの？コイツ」
「同感だな。この人間は異常だ」
「あんたに言われるほどとはね...」
このゲルムというやつも不気味で何を考えているかがわからないが、それ以上にこのリグという男のアリスへの執着心は見ていて不気味とかそういうものよりも恐怖という方がいいかもしれない。それほどこの男は狂っているのだ。
「アリス！！一旦引いた方が良いよ！ちょっとアリス聞いてる？」
少しボーっとしていたアリスはハッと我に帰ると、リグの方を見ていたユオの手を首から離させ、後ろに走り出した。勢いとアリスへの執着であっという間にアリスに追いついてしまった。
「そいつは俺のだ！！」
「『俺の？』だぁ？？？？俺のものに決まってんだろ！！！」
「紀伝・戦記！！」
そうスキル名を叫ぶとユオの槍は幻影のように赤や青といった様々な色の槍がリグに向かって襲いかかる。だがリグは地面を叩き巻き起こった衝撃でユオのスキルを全て打ち消してしまった。
リグが叩いた時に出た煙の中からユオに向かって斧が飛んでくる。斧に直撃したユオは大きな音を立てて床に叩きつけられてしまった。
「ぐっ...クソがぁ！！！」
「ここは俺とアリスの空間だ。邪魔すんな」
もう一度斧を振り下ろすとユオの姿は元に戻り、動かなくなってしまった。アリスが少し遠い位置にいるのを確認し、ドシドシと重い足音でアリスを追っていく。それを見かねたゲルムは杖を振るとアリスのところにまで視界が黒っぽいものに変わって行き、アリスもリグもまた眠ってしまった。
「やれやれ、この眠らせるスキルも、1回使うと次に使えるまで長いこと待たなきゃならない。逃げる前にもう一度使えて良かったなあ...ゲッゲッゲ。さて...コイツもドグロの方にでも送っておくかな...」
「ガーくん...どこに行っちゃってんだろう？？」
ニアはそう言いながら屋敷を歩いていた。戦いの後のようで石像が壊れていたり、天井に穴が開いていたり一部がボロボロになっている。
「なんかドグロさん？とかいうガイコツのおじさんにガー君の所に連れて行ってあげるって言われて、ガー君のところについたと思ったら突然苦しくなって...苦しくて良く聞いてなかったけど、ガー君がアリスが何とかって言って、飛び出して行ってしばらくするとその苦しいのも無くなって...一体なんだったんだろう...？」
歩いていると向こう側で3人組が何やら話しているのが聞こえた。今の距離では少し遠くて人物の認識はできない。少し近づいてみるとその話し声は大きくなってゆき、だんだんその3人の姿ははっきりと見えてきた。
「だからこんな所に何かあるわけないじゃないですか！！」
「う、うるせえ！見た感じ大きな屋敷だ。しかも何やら争ったような跡もある。これは何かあるんじゃねえのか？？」
「あ、あのー」
その怪しげな3人組に話しかけてみる。そいつらはビクッと体をさせてニアの方を見て青ざめたような顔になる。どうやらここの屋敷の人に見つかったとでも思っているようだ。
「え、えーっと、ここにきたのは偶然で、別になんかを盗ろうとなんて全く...！」
「リーダー、それ行っちゃったらマズいんじゃないんですか？？」
「ばっか！それを先に言えよ！仕方がない！バレちまったらお前をここで..」
「いや、私ここの人じゃないの！」
首と手を振りながらなんとかここの人じゃないとアピールする。それを聴くとリーダーと呼ばれたその男はホッとしたのかなにやら手下と思わしき2人と話し始めた。
「よーし、自己紹介をしよう！俺たちは！！マックーーーース！！ヒーローーーーーズ！！！」
「マックス...ヒーローズ...？」
