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四十四話 君を呼ぶ声




声が聞こえる。アリスを呼ぶ声。だが目を開けても暗闇しか見えなかった。手を伸ばすが黒くなった視界は全く見えない。声だけがこだまするように聞こえてくる。



「...リス!...アリス!!」



その声はしばらく続いたが、途中で途切れてしまった。聞き覚えのある声だが、誰が呼んでいたのかが全く思い出せない。頭の中にもモヤのようなものがかかっていて思い出すことができなかった。






「我はもう止まらない!!」



そう言いながら暴れまわるハルガンデス。それを止めようと何人もハルガンデスに挑むが、誰もがやられ吸収されて、糧となるばかりだった。吸収するたびにどんどん強くなって行くハルガンデスに、もう為すすべがない状況とも言えた。



「この辺の奴らは食い尽くしたか?」



「いや、俺達がいる!」



そう言いながら現れたオノマトピアの4人とルビス。もう勝てる状況ではないことは薄々気づいていたが、時間稼ぎにためにやるしかない。ルビス達は剣を取り出してハルガンデスの方に向かった。




「無駄だと分かっていてくるか!!」



「無駄だ?んなもんやってみないとわからねえ!」



ルビスの剣に後ろからザーザの水とモグモンのお菓子が向かってくる。先にハルガンデスに到達したザーザとモグモンの遠距離攻撃を腕で簡単に打ち消してルビスの首を掴む。ニヤリと笑うハルガンデスに、横からすかざずキンキの攻撃が襲いかかってくる。ハルガンデスがルビスをキンキに向かって投げるとそれはキンキに命中しルビスの上にキンキが乗る形で落下した。



「くそ...これ耐えられる気がしねえな」



「君の作戦はよくわかってないけど、今は耐える、でしょ?この華麗な僕等で!」



「華麗は俺も入ってんのか..?まあいいや、いくぞ!!」




ルビス達はもう一度ハルガンデスを攻める。ハルガンデスは口から緑の液体を吐く。それは前に使った何でも溶かすという危険な液体だ。

その液体がルビスの剣に触れると剣はあっという間に溶けてしまう。溶けた剣に驚きを見せるルビスを見ながら当たったらヤバイものだと判断してその攻撃を避け続けてハルガンデスに一度、攻撃を加える



「弱い!弱すぎるぞ!!!」



この美しい僕の攻撃すら効いてない..!?」



「ウォーターレイン!!」



ザーザのスキルで、キンキの後ろから凄い勢いの水がハルガンデスに向かって飛んでくる。だがハルガンデスはその水をゴクゴクと音をたてて飲み始めた。その勢いは衰えることなく、全て飲み干してしまった。



「ごちそうさまでした...!」



「なに..?あいつ!」



「凄いなあ!」



その光景を見てなぜか感心していたモグモンをよそにザーザは何回の水の球を作り出し攻撃をしかける。



「無駄だと言ったハズだ!!」



「無駄だとわかってても!時間さえ稼げれば...!」



そう言いながらキンキもルビスもハルガンデスに果敢に向かって行く。

ハルガンデスは突然、頭に手を当て膝をつく隙を見せたハルガンデスにルビスは持っていたもう一つの弓で、キンキは自分の剣でスキルを放つ。



「輝きの矢!」



「神速の一剣!」



「無駄だと何度言えばわかる?」



「効かなくたっていいさ...だって...」



その瞬間、ハルガンデスの体が一気に重くなった。体を動かそうにも体は動かない。突然の事にハルガンデスはなんとか体を動かそう手や足を無理やり動かす。

それが効いているのはハルガンデスだけでルビスもキンキもなんともない。



「どうだ?」



「なんだ?何をした」



「ここの街は魔物が入れないようにバリアが貼ってあってな。今までそれが使えなくなってたみたいだがどうやら復旧したようでな」



「そのシステムとやらのせいか..!」



「ああ。アンバーグ達にその装置をオンにしてくれと頼んだがこれが大正解だったな!」



「貴様...!」



「ああ。おいアリス!!聞こえてんだろ!!そんなやつのところでいつまで油売ってんだよ!!!おい!アリス!!」






声が聞こえる。この声は...ルビス?暗闇の中で全く何も見えない中でルビスの声だけが聞こえる。何も見えない中で手を伸ばすも何も掴む事ができない。声の先に行かなければ...そう思いながら何度も何度も手を伸ばす。すると遠くから小さくだが光が見えてくるのが見えた。

その光に向かって手を伸ばすと...。




「ぐおおおおおおお!!」



大きな唸り声をあげてハルガンデスが腹を抱えながら苦しみ出した。すると腹から吸収した魂が、凄まじい勢いで飛び出してきた。ハルガンデスはなんとか阻止しようと腹から出てくる魂を押さえつけようとするがスルスルとハルガンデスの手を抜け出してふわふわと飛んでいった。



「あの魂は??」



「ありゃ...おそらくあいつが吸収して行った人間だろう」



ルビスの言う通り、その魂は人間の形になってゆき、今までにハルガンデスに吸収された人間へと変わって行った。そこにはガーディスやバニア、アリスもいる。戻ってきたアリス達にルビスは「アリス!」とその名前を叫んだ。



「あなたの野望はもう終わりよ!!」



「人間風情が!!」



ハルガンデスはぎこちない動きでアリスの方に向かってくる。魔物を反する結界を張ったというのに凄まじい力だ。これが四獣と言われたものなのか。



「終わりよ!!!聖魔の剣!!」




アリスがスキルを放つとそれはハルガンデスの体を貫き、ハルガンデスは倒れてしまった。



「やった..?」



「たおした!!!」




おおおお!と言う喜びの声が上がる。ハルガンデスが起き上がってくる気配は何もない。やっと終わったのか...やっと...。




「はいはーいお疲れさーん」



その声は歓声を止める。そこに現れた3人組のメイキス、クラウ、ノーブルの3人。その視線の先にはホワイが写っている。



「あなた達は....誰だっけ?」



「メイキス忘れられてるでアールよ!」



「すぐに思い出させてやるんだよ!」



「ねえねえメイキスー怒らないでーほら、いつもよりお手玉すごいよー」



いつも通り大きな玉に乗ってお手玉をするクラウに、メイキスははあ、とため息をつく。



「とにかく!今度こそそこの白の魔術士を貰っていくわよ」



「ああ思い出した!DVD貸してた隣の....!」



「ちっがーう!!あんたの異世界に来る前の話なんて知らないわよ!!」



「おいお前!後ろ!!」



ルビスがそういうと後ろからボロボロだけの姿のハルガンデスがメイキスに向かって襲いかかってくるメイキスはハルガンデスの方を向くことすらなく、雷の剣で斬りつける。その一撃でハルガンデスは倒れ、ノーブルのハンマーでその巨体はどこかへ吹き飛んでしまった。



「おい、あんなハンマーなんて武器あったか??」




「ハンマーはどうやらこの辺じゃないようね。まあ、とりあえずその白の魔術師を渡してくれれば、痛い目にはあわせないから安心して」



「メイキスなんかかっこいいー」



「うるさい黙れ」



クラウの茶々にそう言葉を入れながらアリス達に近づいてくる。今の状況戦える状況ではなく。戦えたとしても勝てる相手ではないだろう。



「あなたも目的はなんなの?」



「目的はねー」



クラウがそう言うとメイキスが「おい」と言うのを止めさせる。するとクラウは口を手で塞いだ。



「言うわけがないだろ?」



「ゲッゲッゲ、やっぱりここにいたか」



そう言いながらまた別の奴が現れる。それはトカゲのような見た目の...。

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