四十二話 ジ・アライバル
「見よ！これがこの世界の到達点！！！始まりでもあるのだ！！」
「いや！まだだ！主人公の俺がいる！！」
その言葉に反論をするマブに、ハルガンデスは「主人公だと？」とマブにそのおっかない目で睨んだ。マブはハルガンデスに睨み返し大きく手を広げてこう高らかに宣言をする
「そうだ！！！そして、この俺が主人公だってことを証明してやる！」
「主人公？とやらは分からないが来い！」
「この野郎！！」
そう叫びをあげながらハルガンデスに攻撃を仕掛けようとする。 だがハルガンデスは空に飛び立ち攻撃を当てることができない。ハルガンデスはまたトゲのついたボールを空中でばら撒き始める。マブは棘に逃げ惑いながら空にいるハルガンデスに起こったように声を荒げる。
「おいお前！！！空中なんてずりーぞ！！早く降りてこいこのヤロー！」
「ふん。面白い奴だなお前」
そんな言葉ももちろん聞かずに棘のボールをばら撒くハルガンデスに地団駄を踏みながら棘を避けたり剣で弾いたりする。
「くっそー！降りてこい！！」
「ずっと空中にいても面白く無い。いいだろう！！」
ハルガンデスはドシンと音を立ててマブの前に舞い降りる。やはり人間の何十倍と言う大きさがある。マブはハルガンデスを見ながらどうにか倒せないかとハルガンデスの体や翼、足を見ながら弱点となりそうなところを探る。だがそんなものは見つから無い。マブは「どうする...どうする...」と呟きながら武器を強く握りしめる。
「なんだ？」
その時だった。何かが凄い勢いで混沌魔砲を放つ機械に突っ込んでいくのが見えた。それがその機会に到達すると、空中で大きな音を立てて混沌魔砲を放っていた機械は爆発を起こして地上に落ちて行くのが見えた。その機械は地上で大きな爆発を起こし炎と煙が広範囲に渡って巻き起こる。
「何だ突然！？なぜこんなことに...！」
突然のことにただ燃えている野原を見ているハルガンデス。その後ろから2つの影がハルガンデスに向かって襲いかかってくる。魔物の姿から戻ったアリスとガーディスの２人だ。混沌魔砲を解除され驚きのあまり呆然とするハルガンデスに追い打ちをかけるようにアリス達の攻撃が襲いかかる。グオオオオオオと言う大きな悲鳴をあげてハルガンデスは膝をついた。
「何だかよく分からないけど助かった...！」
「混沌魔砲とか何とか言うやつを放ってたのが消えてる！ってことは誰かが破壊したのか？でも、一体誰が...？」
「まあとにかく、今はあいつを倒すこと専念しましょ」
「そうだな！」
それを遠くで見ていた男がいた。そいつはアリスが元に戻ったのを見てニヤリと笑った。隣にいた茶色のトカゲのような生物はその光景を不思議そうに見ながらその男にこう尋ねた。
「ゲッゲッゲ！リグよ。なんであの人間を助けるんだ？？あいつが魔物になろうがどうなろうがどうでもいいじゃねえか」
「ああ、やっと見つけたからな...俺のアリス...！」
「俺の...アリス...？」
「まあお前には分からなくてもいいだ。いくぞ」
去ろうとする男にトカゲの魔物は「おい！」と声を出してそれを呼び止める
「よく分からないがあの人間はお前の知り合いなんだろ？会わなくていいのか？」
「ああ、直ぐに会えるだろうからな....俺のアリス...」
「おのれ！だがそんなに消されたいのなら、魔物化ではなくお望み通り消し去ってやる！！来い！！！」
ハルガンデスは口から緑色の液体をいくつも吐き出す。
その液体は草にくっつくと草をあっという間に溶かしてしまう。何回もハルガンデスの口から出てくるその液体を避けながらハルガンデスに近づいて行く。
ハルガンデスの近くに行くとアリスとガーディスは同時にスキルを放つ。その声は同時に各々のスキルの名前を叫んだ。
「新！魔刀の雷！！！」
「鬼閃・風月！」
2つのスキルはハルガンデスに直撃すると木をなぎ倒しながらハルガンデスを吹き飛ばしていった。
だがハルガンデスはすぐに起き上がるとものすごい勢いでこちらに向かってくる。あのスキルの攻撃を受けて怯みもしないハルガンデスはまた棘のついたボールをアリス達に向かって発射する。
「またそれ！？もうその攻撃は効かないから！」
「どうかな？」
そういうとそのボールは破裂せず、大きな回転を起こしていく。そして回転しながら四方八方にゴムボールにように跳ねながらいくつもの棘付きのボールは右往左往を始めた縦横無尽に飛び跳ねるボールを破壊しようとすると前放った時のように棘が拡散する形で飛んで行った。
「第二形態に移ってから攻撃パターン増えすぎでしょ！なにこれ！！」
「これじゃあ迂闊に攻撃もできねえ！！スキルもさっき使ってまだ使えないし...！」
「ははは！どうだ！！」
「ミラクルシュート！！」
その声とともに大きな三日月の斬撃が飛びボールを次々と破壊して行く。それを放ったマブはアリスとガーディスに向かってこう叫んだ。
「主人公の座は今回はしょうがねえから譲ってやる！！こんなバケモノとっとと倒しちまえ！！」
「うん！」
アリスが剣を腹に突きつけるがまるで沼のようにアリスの体はハルガンデスの体に入っていく。アリスの手がハルガンデスの中に入るとすごい力で引き込んで来て抜け出そうとしても中々抜け出すことができなかった。アリスの体はそのままハルガンデスの中に取り込まれて消えてしまった。
「アリス！！」
「あいつ！まだあんな奥の手を残していたのか！？」
「ククク、これだけは使いたくなかったがしょうがない！」
「お、お前！！アリスをど、どこにやったんだ！？」
マブがそう尋ねるとハルガンデスは腹を指差し2回ほど腹をその指でつつく。腹のなかにアリスがいると言わんばかりに。
「これは全てを吸収し自分の力とするものだ。これを見せる時がくるとはな。さて...と、人間を魔物にする計画もできなくなったし、貴様らもなかなかやるようだしな」
「お前っ！そんな事させるか！！！」
そう言いながらハルガンデスの方に向かうマブを掴んですぐに体の中に取り込んで行く。取り込むと先程より少しだけ大きくなる。ハルガンデスは舌なめずりをして腹を両手で2、3回ほど叩く。そしおガーディスの方を見た。
「まあいい。お前はなかなか骨があるからな。近くに街があった筈だ。そこで吸収してから戦うとするかな」
そういうとハルガンデスは翼を大きく広げて飛び立つ。ガーディスもそれを追おうとするがその早さに走る足を緩める。
