三十九話 進撃!!マックスヒーローズ!!
「そいつの処理は任せたぞ」
一方こちらは、武器喰らいと対峙している七天聖トリオ。メイキスはそう言うとノーブルとともに走り出した。残されたクラウの目の前には武器喰らいが今にもこちらに襲いかかって来そうなおぞましい形相でクラウに方を見ている。
「早く終わらせるよー」
杖を少し振ると近くに大きな石が出て来て凄い勢いで武器喰らいの方に飛んで行く。武器喰らいはお得意のバリアで守ろうとするがすぐにバリアにヒビが入りバリン!という音とともに壊れてしまう。そのまま武器喰らいの体に直撃した。
「君のそのバリア、見た感じ、良くてもそんなレベルの武器のバリアだねー。でも僕のはそんなんじゃ防げないよー」
移動も乗っている球をコロコロと転がして小さめの隕石を武器喰らいの方にいくつもさし向ける。武器喰らいの方も氷をまとった矢をいくつも出すとクラウに向けてそれを発射する。だが氷の矢程度では隕石は止まらず凄まじい勢いで武器喰らいに向かう。それを撃墜すべく武器喰らいは口から緑の液体を出し始めた。
「うわ...なにあれ?」
いきなり口から緑の液体を出す光景にクラウは少し引き気味にそう呟く。
すると武器喰らいはその緑の駅外の中にどんどん沈んでいった。
緑の液体はクラウの足元まで到達するとクラウはビチャビチャと音を立てて水を何度も踏んでいた。すると、クラウの足の下にある緑の液体から武器喰らいが飛び出してくる。クラウはボールを弾ませなんとか避けることができたが武器喰らいはすぐにまた緑の液体の中に入ってしまう。
「へえー。あの液体の中を移動できるのかー!面白いなー!」
先程までとは一転、とても興味津々に緑の液体を見ているクラウに対し武器喰らいは飛び出しながら別の武器のスキルを放つ。水を纏わせた腕を勢いよくクラウに向けて放つ。
だがクラウも乗っている球とともにピョンピョン飛び跳ねることで当てることができなかった。
「じゃあ、いっくよー」
そういうとクラウは杖を振り上げる。すると上から大きめの隕石がまた勢いよく地上に向かって降り注いだ。しかも、少し前に放ったものより大きめのものが今度はまばらではなく全て緑の液体めがけて降り注いでくる。
地上に到達した隕石はまた轟音とともに地上に穴を開ける。
いくつもの隕石が降り注ぎ、終わるころには緑の液体はおろか武器喰らいすら消滅するほどの威力だった。そこに残ったのはクレーターにように空いた穴だけだった。
「あの変なヤツ塵になって消えちゃたー。ま、いいかー」
クラウは満足そうに乗っているボールを動かしどこかに行ってしまった。
「うおおおおお!覚悟しろ!狼ども!!」
そう言いながら意気揚々とマブは狼の大群の方へと突っ込んで行く。もうどうなるかは目に見えていたがわざわざソレをツッコムのも面倒くさいのでアルもホーも何も言わずにそれを見ていた。マブは狼達に剣を向け、大きな声で必殺技名を叫ぶ。
「スーパーウルトラグレイトスーパー!!」
武器にそんなスキルはなく、マブが勝手に作ったものだ。なのでもちろん、そんなものを言って技が出てくるわけもない。
...のだが突然大きく青い爆発が起き、周りにいた狼達はあっという間に一掃されてしまった。
突然起こった爆発にあたりは何が起こったのかと静まり返る。
「すごい!!やっぱり俺ってすごいじゃないか!!」
突然起こった青い爆発が自分のものだと信じてやまないマブは嬉しそうにアルとホーのそう告げる。そのアルとホーは
「そうですねー」とやる気なさそうに答えて、またマブに聞こえないぐらいの声で話を始めた。
「なあ、あれって恐らくルビスってやつが武器喰らいの時に言ってた天叢雲剣って奴じゃないのか?」
ルビスが武器喰らいと戦っている時に数時間かかると言っていた奴だろう。だがマブは自分が必殺技を出したのだと大喜びしているのを見て、それは言わないでおいた。
マブは調子付いて「いくぞー!!」と叫びながらどんどん突き進んで行く。本当にこれでいいのかと思いながらアルもホーもそれについていった。
少し進むだけで周りにたくさんの魔物達がこちらを狙っている。おそらくこんな大軍じゃなくてもお終いだろう。
だが、その予想に反して、マブは狼をバッタバッタとなぎ倒して行った。何というか、効果がなくてもあると錯覚して強くなっている、一種のプラシーボ効果のようなものがあるのか...。
「すごい!やっちまってくださいリーダー!!」
「ガンバッテー」
アルとホーは、マブへの信用が少しだけ回復したように感じられた気がした。マブは剣を使って次々と敵をなぎ倒して行く。強くなっていると錯覚しているマブはどんどんと突き進んで行く。するとマブの目の前にヤツが現れた。大きな巨体におぞましい風貌。ハルガンデスだ。
「骨のありそうなヤツだな。相手になってやろう」
「聞いてねえよ...」
突然のハルガンデスの登場にそこまで順調だったマブは尻餅をつく。今にもその威圧感に押しつぶされそうだ。だが、そこはさすがマブと言うべきか立ち上がり剣を抜いた。そしてこんなことを言い始めた。
「俺は天下無敵地上最強の男マックスヒーローズのマブ様だ!!!メイドの土産に、名前だけは覚えておくがいい!!」
「よかろう!」
マブがうおおおお!と言う声を出しながらハルガンデスに襲いかかる。ハルガンデスに剣で傷をつけるもすぐに傷をつけた部分が治ってしまう。それを見たマブは「マジかよ...」と言いながらまた剣を振るう。
だが結果は同じで何回やっても傷は治っていく。
「なんだ?こいつ!」
「無駄だと言ったはずだ!!!」
その大きな手は、マブを掴み持ち上げる。振り払おうとしても力が強く全く振り払えない。
その時、ハルガンデスの手は何かに斬られた。ボトッという音とともに切断された。手が地面に落ちる。締め付けられていた力もなくなりマブは脱出する。ハルガンデスの切断されたてはものの数秒もせずにまた腕が生えてくる。
「アリス!!!お前!!!」
「間に合った...!」
そう感嘆の声を上げるマブの目の前にはアリスとホワイがそこに立っていてアリスはハルガンデスの方を見る。さっき切ったはずの手が、また再生しているのを見て「やったダメね...」とだけ呟いた。
「なんだ?お前は」
「あなたを倒す者よ」
そう言いアリスは攻撃を仕掛けるが、結果はマブの時と同じで攻撃してもすぐに傷跡は治ってしまう。
「無駄だと言ったはずだが?」
「俺も手伝うぞ!!」
そう言い飛び込んで来たのはマブだった。だがハルガンデスの大きな咆哮にすくみ上がり申し訳なさせそうに後退する。
「よーし!後は任せたぞ!!」
「はいはい...」
「無駄だと言ったはずだ!!私を倒せない!!!」
「それは...どうかな?」
アリスが攻撃をしてハルガンデスに傷をつけるアリスの剣が触れた場所からは血が流れてくる。ハルガンデスはすぐ治るからと余裕の笑みを浮かべているが、その傷は一向に治ることがない。
「んん?なぜ治らない?まさか...いやまさかな...」
「多分、あなたの考えてることはあってると思うけどね」
「なんだと!!!」
その言葉に恐ろしい形相でアリスの方を向く。アリスは「そうね...」と呟いてニヤリと笑う。ドカンはその表情を見てさらに激昂した。
「レッド・ハートをまさか!?」
「やーっぱり、あのたまたま見つけた赤いやつがそうだったんだね」
「だが...一体誰が??」
ここは、とある場所。洞窟のようになっているそこには赤い心臓のようなものと、それにナイフを突き立てている男の姿があった。
「アリスお前!!!こんな危ないことやらせやがってー!!!覚えてろよ!!」
その男、アンバーグは誰もいないその場所でそう叫んだ。




