三十八話 憎悪と憎しみの果て
「ドカン...どうして君が?」
「よお!使えねえカス共」
そこにいたドカンに誰もが驚きの様子を見せる。それもそのはずだ。ドカンは、アリス達の街を壊そうとして、倒されたのだ。本来ならこんなところにいないはずだ。
ドカンはニヤリと笑いながら斧を取り出す。この斧は黒く異様な雰囲気を醸し出している。
「...ドカン、それなに」
「闇魔!!」
「なんか恐竜の魔物から貰ってな。これも爆発を起こせる武器らしいんだ。どうだ?俺にぴったりだろう?」
そう言いながら持っている斧を見惚れたように眺めている。その斧を一回降り来いと言わんばかりに指を動かして挑発をするルビスはドカンの方に向かっていった。ドカンをいち早く闇魔から離れさせなければ...その一心で剣を振るうルビスだったが、ドカンは目に前で爆発をさせてルビスの進行を防ぐ。
「厄介なことしやがるな..!」
戦闘しているルビスの後ろから、後ろから水の塊と小さなお菓子のようなものが飛んでくる。だがドカンはそれを簡単に弾いてしまった。その攻撃して来たのが遠くにいるザーザとモグモンだとわかると、小さな丸を生み出すとそれを勢いよく斧で打った。
その丸い物体は凄い勢いで向かってくる。だがそれはザーザ達の近くで勢いが無くなり落ちて行く。
「グーグ、ナイス〜」
それはグーグのスリープワールドだった。この無機物さえも眠りに落とし動かなくする能力に、よく勝てたものだと当時彼らと戦っていたことを振り返り思う。
「よそ見してんじゃねえよ!!!」
ザーザの方を見ていたルビスにドカンはそういいながらけりをいれる。そして今度は黒い立方体の形をしたものを出すとそれをルビスの方に向けて発射する。向かって来た直方体をルビスが斬ると大きな爆発を起こし煙が立つ。
「俺はも理想郷を作り上げられなかった!だが!ハルガンデスとかいう魔物が素晴らしい世界をつくりあげようとしているじゃないか!!そこでだ、お前らにチャンスをやる。どうだ?お前らも来ないか?」
「もうこの美しき僕らは君の操り人形じゃない」
「お菓子食べてたほうがいいよー」
「...あなたの話には..乗らない」
キンキ達のその言葉に「そうか...」とだけ呟いてまた立方体を何個か空中に作成する。そしてその立方体とともにキンキ達の方に向かっていった。
「じゃあお前らは要らないな!!消えろ!!」
「もうあんな思いはしない!」
キンキが飛び出すとドカンと剣を交える。周りに浮いている立方体の爆弾を
キンキにさしむけようとした時、ザーザが水でできた弾で器用にドカンの周りの浮いていた立方体を破壊する。立方体は大きな音を立てて破裂するとドカンはチッ、と舌打ちをする。すかさずキンキが攻撃を仕掛けようとするが斧で防がれてしまう。
「爆轟地撃!!」
そう叫びながらドカンが地面を叩くと地面が割れると同時に大きく周りに爆発が起きる。それは近くにいたルビス達はもちろん。遠くで遠距離攻撃をしていたザーザやモグモンの方にも及ぶ。
「あー!!うるさい!!」
凄まじい音にさっきからずっと寝ているグーグはそう言いながら近くに薄透明な枠を生み出す。それに爆風が当たるとその音はおろか爆風までもがかき消されてしまう。
「グーグ...寝てていい」
「わかったー」
グーグがーはどれだけいうと眠りについた。キンキとルビスはもう一度攻撃を仕掛けるがドカンが作り上げた立方体のせいで思うように攻撃がいかない。
「なら!秘剣村雨!!」
ルビスはスキルを使って立方体を全部斬りつけた。だが立方体は先ほどよりも大きな爆発を起こし、周りにあった何個もあった立方体が一斉に爆発するとその威力は凄まじいものとなっていた。もちろんドカン自身も安全というわけではなく、多少なりともダメージは喰らっていた。一方でルビスは至近距離にいたため大きく深手を負ってしまうのだった。
ドカンは斧を横に振り近くで大きく爆発を起こす。
「やはりお前らじゃ弱すぎて話にならねえな。あいつを呼べ!俺を打ち負かしたあいつ...名前は確か...ヴェラードとか言ったか?」
「ヴェラードって...あの人か!」
ドカンと最初に対峙したあの時、ドカンを結局倒したのはヴェラードだった。それも圧倒的な力を見せつけてドカンを倒したため、ドカンも相当根に持っているのだろう。
「...そんなこと言っても居ないものはいない」
「俺は今度こそあいつをぶっ潰せる!!」
「誰をぶっ潰せるって?」
耳に手を突っ込みながら現れたのは、なんとヴェラードだった。噂をすれば何とやらというが本当に話をしていると本人が現れるとは。まさかの突然の登場にドカンは嬉しそうな顔をする。
「お前を待っていた!お前をぶっ潰すためにな!!」
「へーそうなんだ」
そう言われても全く興味なさそうに今度は鼻をほじっているヴェラードに、ドカンは「まあいい」とだけいう。
「崩壊爆破!!」
ドカンはそう言いながら勢いよくヴェラードの方に向かい斧を振り下ろす。ドカンの斧が直撃した地面の近くは広範囲で大きく爆発を起こしている。ヴェラードもその爆発の中に消えていく。煙が立ちしばらくして何も起こらなかったような顔でヴェラードが立っている。
「こっちはいそがしいんだけどなあ」
そう言いながらヴェラードは持っている斧すら出さずにドカンの方に近づいて行く。目の前にまで迫って来たヴェラードに困惑の表情をするドカン。
ヴェラードは拳を上に上げるとそれを勢いよくドカンの頭めがけて振り下ろした。大きな音とともにドカンの顔は地面に叩きつけられる。ドカンはそこから全く動かなくなってしまう。
「すごい...ゲンコツ一つで...!」
「はーあ、気晴らしに可愛い子でも探すかなー」
そう言いながら立ち去るヴェラードをただ見ているしかなかった。これが七天聖。その凄まじい強さに、言葉を失いいルビス達はただ見ているだけだった。
「よーし集まったな?お前ら!」
マブは、アルとホーに対してそう言葉を投げかけた。アルもホーもまた何かを始めるのかと思いながらも、マブの方を見ていた。マブは「ふっふっふ〜」と笑いながら瓶を一つ取り出した。そこには何やあ半透明の青い液体が入っている。マブは、きつく締まっている蓋を開けてそれを飲み干した。
「うおおおお!力がみなぎってきたー!!!」
両腕を上にあげそう叫びながら効果を実感していた。投げ捨てられた瓶は音を立てて落下しコロコロと、転がって行く。
「それ、確か力を2倍ほどに向上させるっていうアイテムですよね?」
「ああそうだ!」
これを使えばその説明通り、一定時間だけ力が2倍になるというドーピングアイテムだ。これでハルガンデスのところに行きやっつけてしまおうという魂胆だ。マブの力が2倍になったところで勝てる相手かと言われると答えはノーなのだが、何も考えてないマブにはそんなこと御構い無しだ。
「さーて!!魔物どもかかって来い!!」
そう言っても魔物は全く現れる気配がない。この辺の魔物はどうやら殲滅した後のようだった
マブは誰も来ないことに不満そうな顔で歩き出した。それを見ていたアルとホーはマブに聞こえない程度で話を始めた。
「あれって確か、高値で買わされた、ただの水じゃなかったか?」
「それマブには言ってるのー?」
「言ってない」
「何2人で喋ってるんだ?」
アルとホーが喋っているとマブがこちらを向いている。どうやら今の話は聞かれなかったようだ。
「ほら、行くぞ!俺たちの戦いはこれからだんってやつだ」
「アンタ主人公じゃないし勝手に終わらせんでくださいよ!」