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三十四話 レッド・ハート




「倒す?それは無理ですよ。なぜならレッド・ハートが守っているのですからね」



ペラペラとヘントールは自分たちのことを話し始めた。その「レッド・ハート」という聞きなれない単語にモグモンはその言葉を繰り返して、星型のチョコを口の中に入れた。



「レッドハートぉ?」



「そうです。それは言うならばハルガンデス様の心臓とも言えますね」



「心臓...」



「はい。そこからハルガンデス様に力を送り込んでいるのです。もちろん心臓が止まれば生物は死に絶える。



ヘントールは両手を心臓に見立てて心臓が鼓動するかのように手を動かす。だがそれはだんだん遅くなって行き、心臓に見立てた手はしばらくして動きを止めてしまった。心臓が止まった様子を表しているのだろう。



「じゃあそれを見つければいいんだねー」



「見つかる訳がありませんよ。絶対にね」



「余計なことを...まあいい。それを知ったところでお前たちに出来ることは何もない」



「そんなこと!まあ、美しい僕に酔いしれるがいいさ!」



そう言いながら、キンキは剣を振り上げてハルガンデスの方に向かう。後ろからザーザの水とモグモンの作り出したお菓子達がキンキを追うように飛んで行く。キンキが素早く腹のあたりを切りつけるとすぐさまザーザとモグモンの追撃が直撃する。だが全くと言って言うほど傷ひとつない。

ルビスも加勢するがルビスとキンキの攻撃を受けてもハルガンデスは平気な顔をしていた。



「一心の剣技!」



「秘剣!村雨っ!」



キンキとルビス2つのスキルが合わさりハルガンデスに直撃する...のだがやはりどうにもない。

自分の周りを動き回るキンキとルビスを叩き落とし地面を叩くと周りの地面が爆発したかのように砕けてその範囲は遠くにいたザーザー達にも及んだ。




「なんだこれ!」



「...強い」



「んもう...うるさいなあ!!」



やっと起きたグーグは不満そうにそう呟きながら杖で地面をコン、と1回ついた。するとグーグから眠りにする空間が広がっていき、その範囲は、ハルガンデスの方にまで届く。だがハルガンデスには全く効いていない。



「やっぱりボスには状態異常にはならないよね...」



範囲の外で見ていたルビスはそう呟く。ハルガンデスはグーグに近づいて腕に一振りであっという間に吹っ飛ばしてしまう。グーグは草むらの中に転がっていてしまった。



「バケモノか...あれは」



「俺たちはこの世の終わりにでも来ちまったのか?」



そう言いながら空を指差すルビス。ルビス。誰もがルビスの指差す方を見ると、それは空にまるで散りばめられたように何百という数のこちらに凄い勢いで向かって来る巨大な隕石だった。



「おいおい、嘘だろ?こっちに来るぞ!!」



ルビスはそう言いながら、ただただその隕石を見ていた。その隕石がどんどんこちらに近づいてくるとその姿や特徴があらわになってくる。ゴツゴツとしていて緑ががった茶色のその石は勢いを落とさぬまま地上に向かっていた。

飛んできた石の一つが地面にぶつかると、轟音とともに石は砕け周りに衝撃を走らせた。その衝撃は周りのものを吹っ飛ばすほどのものでルビス達も魔物の軍勢も吹っ飛んで行く。最初に到達した隕石に続くようにどんどんその隕石は地上に到達しては凄まじい威力を発揮する。



「一体なにが起こってんだよ!!」



いくつもの巨大な隕石が地面をえぐるように激突する。そのあまりにも多い数に避けることが難しく弄ばれるように隕石やその隕石の衝撃で魔物やルビスが吹き飛ばされていった。

隕石がやむ頃には月のクレーターのように床にいくつもの石が落下した跡が残り、ハルガンデスを守っていた魔物の軍勢も四分の一ほどになっていた。



「止みましたか...一体なんだったのでしょうかね?あれは。っておや、あの人たちがおりませんが?」


よく見ると先ほどまでいたルビスたちの姿がなかった。隕石に気を取られていて、どうやら逃げたようだ。



「やはり、あの方々でもダメでしたか。わざわざ呼んだというのの。さて、私の本当の目的を果たせる人はいらっしゃるのでしょうかね...」







「てんめえ!!!私たちまで消す気か!!」



ここは、人間と魔物の戦いが巻き起こってる場所からそう遠く離れていないところ。一人の女は一緒にいた男にそう怒鳴った。その女は金髪でサイドアップの髪を揺らしながら、男に近寄る。近寄られた男はは「まあまあ」とその女をなだめようと赤い大きなボールに乗りながら白い手のひらサイズのボールでお手玉を始めた。その男は小太りで赤と白のシマシマの服に顔は白く塗りたくられ目の下に涙や赤い星が描かれていてそのお手玉をする姿はまるでピエロのようだった。



「メイキス、落ち着くのでアール」



その様子を見ていたのは黒い服に十字架のペンダントをつけた背の高い男。手には黒い本を持っている。



「だって、こいつのあの隕石みたいな奴で死にかけたんだぞ!!!」



メイキスと呼ばれた女はピエロ男を指差す。どうやら先ほどの隕石の攻撃はこのピエロの仕業だったようでメイキスという女の怒りは収まらない。



「クラウも謝るのでアール」



「ええー」


そのクラウと呼ばれたピエロ男はそう言いながらお手玉を続けている。

ハーッとため息をついたメイキスに十字架のペンダントをした男は持っていた本を渡す。



「おいノーブル。これは?」



「この本は聖書でアール。これを読めば少しは落ち着くのでアール」



そのノーブルと呼ばれた男の黒い本を受け取るとそれを開いてみる。だがそこには文字はおろか、小学生が書いたかのような下手くそな人の絵があった。赤や青の配色はちゃんとされているが何が書いてあるのかすらわからない。メイキスは本を思い切り地面に叩きつけこう叫んだ。



「ただのお前の落書き帳じゃねーか!!」



「夫婦漫才してる場合じゃないよー」



「夫婦漫才じゃねーよ!!」



クラウのその言葉にメイキスは即座に反応する。このノーブルとかいう男とそういう風に見られるのはあまり快く思っていないようだ。



「ふざけてないで探すでアールよ」



「お前のせいだろ!」



「ヴェラードが言ってたのってこの辺なの?」



「ヴェラードの情報だと、確かこの辺だって...」



「もう探すふりでいいんじゃなーい?」



「私たち七天聖は星7装備所有者を探すのが仕事であーる。それを忘れないでsーる」



星7の装備。それは武器が所有者を見つけ、その認めたもの以外には効果を発揮しないというとても珍しい武器だ。聖竜からアリス達を救った白の魔術師という少女もそれを持っていて、七天聖はそれを探しているのだった。



「ほら、無駄話してる暇あったらいくぞー」



「はーい」



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