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三十三話 開戦!!



街の者達はとても忙しそうに右往左往していた。というのも、今までに見たこともない魔物の大群の姿が見えこちらに向かってきているからだ。しかもそこには他の魔物より何十倍の大きさ魔物の姿が見える。

街にはヤグラがあり、そこから見ると確か魔物の大群とその中心に大きな魔物が見える。あの魔物の大群はもう既に何十と街を破壊しているためこちらに向かってきているという事はこちらの街が狙い目だろう。



「お前達!!あんな魔物如きにやられてたまるか!!!絶対負けないぞ!!」



広場の壇上にいる、一人のその掛け声に「おおー!」と誰もが緑色の杖や茶色い槍など、様々な武器を空に突き上げて戦闘の意欲を見せる。

その場にいたルビスは群衆にアリスとアンバーグがいないことに気づいてそう呟いた。確かクエストに行くとか何とかと言っていたが帰ってきていない。何かあったのだろうか?

群衆の間を縫って広場の人混みから抜ける。集会場の方に向かうと集会場の入り口で誰かが話をしているのが見えた。その影は5人あり、一人は...受付のお姉さんだ。そして他は...。



「あらルビスさん!戦いの準備ですか?応援してますよ!」



「いやそうなんですけど...そいつらは...」



その見覚えのある4人に困惑したような顔になる。その4人のうちの一人は自分の自慢の金髪の髪を振り上げて「やあ、久しぶりだね」と声をかける。


「なんでここに...?」



「この美しい僕を覚えててくれたのかい?光栄だね?」



そこにいたのはオノマトピアの4人、キンキ、グーグ、モグモン、ザーザーだった。そしてそのまるでナルシストのような喋り方は、言うまでもなくキンキだ。向こうの方はこちらを無言で見てくる。何でこいつらがこんなところにいるのか。それはそのまま言葉として出た。すると受付のお姉さんがそれを説明してくれた。



「今は魔物が攻めてきてるって聞いて、敵だ味方だ言ってる場合じゃないと思うんです。そこでこの人たちに頼んだら引き受けてくれて...」



「でも、そいつら街を破壊しようと..!」



「...罪滅ぼし」



「この美しい僕達はドカンにやらされたとはいえとんでもないことをしてしまった。だから美しい僕達の罪滅ぼしなんだ」



途中についた「美しい」というワードのせいでなんだか説得力は無いが言いたい事はわかる。ルビスはそうか...と呟いて後ろを向く。



「大丈夫なんですか?いつまたあんなことをしでかすかも....」



「僕らは勝手にやるだけだから信じ無いならそれでもいいけどねー」



そう言いながらモグモンは相変わらず袋から出した菓子を無造作に取り出しては口の中に放り込んでいる。袋を口の方に持っていき、中に入ってる菓子をすべて口の中に放り込み始めた。グーグは中に入っている菓子が全部なくなったと分かると肥えた腹をポヨンと動かし今度はチョコレートの入った箱を取り出した。



「...わかった。人手がいるのは事実だし」



「この美しい僕が来れば誰でもイチコロさ」



「やっぱやめようかな」



「なんで!?」



魔物の軍勢に立ち向かうには一人でも多いほうがいい。今はあーだこーだ言ってる場合ではないだろう。とにかく戦力をかき集めて対抗しないと...。



「おお、お前らそんなとこにいたのか。出撃だってよー!」



そう言いながら手を振っているのはヴェラードだった。グッと拳を握りしめヴェラードの方に向かう。

しばらく歩くと入り口のところに何千という人たちが集まっていた。杖や剣、斧など自分の自慢の武器を持って戦いに挑もうとしている。

先頭に立った男は大きな声でこう、高らかに宣言する。



「さあ!戦いの時だ!!魔物なんぞに負ける冒険者じゃないだろう!!!」



「そうだそうだ!魔物なんてぶっ倒せ!!



「魔物に滅ぼされてたまるか!!」



男の言葉に口々にそのようなことを言い士気を高めている。先頭の男が上に突き上げた槍をゆっくりと前に出し、それが男の真横まで来ると大きな声で「行くぞ!!!」と叫んだ。その合図で入り口にいた大勢の者達が一斉に外に向かって走り出した。木を避け草を掻き分け魔物の群勢の方に向かっていく。

向こうの方に小さく見えていた魔物の軍勢はどんどん大きくなりそ圧倒的な勢力が目の当たりになる。だがそんなことで臆することはなく「うおおおおお!!」という声を上げて走る足を止めない。



「人間を滅ぼすのです!!」



魔物軍もヘントールのその合図とともに走り出し人間と魔物がついに対峙した。剣や槍の音が聞こえる。後ろからは弓や杖で魔物を攻撃する者が魔物を倒して行く。魔物の軍勢も負けじと自慢の爪などで人間に応戦をする。



「ハルガンデスとか言うやつはどの辺だ?」



遠くの方でハルガンデスを探しているルビスとオノマトピアの4人は敵を蹴散らしながら進んでいた。蹴散らしても蹴散らしてもあの巨体の姿がどこにもないのだ。



「おい!あのハルガンデスとか言うやつはどこにいるんだ?」



「あんな大きな奴なら探さなくても見つかるはずなんだけどどこに行ったんだろうねー」



モグモンは杖を振り回しながら相変わらず何かを食べている。戦闘中だというのによく食べれる者だと思ったがそんなことを言っておる余裕はなかった。



「仲間に戦わせて自分はどっかに行くのかよ!!くそ!」



「きっと...どこかにいる」



「それならば、案内しますよ?」



会話に突然割り入って来る声。その声の正体、ヘントールはそう言うとこちらに近づいてきた。突然のヘントールの登場に誰もが困惑の目でヘントールを見る。隣には赤と青の牛の魔物がこちらを見ていた。今、案内言ったか。一体何を言っているのか...?ルビスは怪しさ満点のヘントールを見る。



「ハルガンデス様にお会いしたのなら会わせて差し上げますよ」



「お前はあの時の闇魔の...なんのつもりだ?」



「どうせ勝てないと思いますので会っても問題ないだろうと判断したまでです」



「...罠だろうが何だろうが、親玉のところに行けうのなら行くしかないでしょう」



「そう来なくては」



それを承諾した。一気にボスのところにまで行けるのならラッキーだ。



「その前に一つ聞きたい。なぜそんなことをする?



「それは言えません」



怪しさ満点ではあるが。ついていくことにした。



木々と草が生い茂る場所を抜けると草原だけが広がる場所に出た。木々は見渡す限りどこにもなくまるで絨毯のように敷き詰められた草原だけが広がっている。そこをしばらく歩くと先ほどまで遠くにいた魔物の軍団がどんどん近くなってゆく。唾を飲み込み魔物の軍勢に近づくと胸の鼓動が騒がしく鳴り響いてゆく。

そして目の前にまでやってきた魔物達に圧倒されながらも一歩前に出る。鼓動は先程より騒しく危険信号を発しているようだった。




「ハルガンデス様、会いたいと言うもの達を連れてまいりました」



「うむ」



これが噂の魔物の王ハルガンデス。赤い体に人間なんかより何十倍と大きい体。ツノは2本生えていて恐ろしい形相をしている。ルビスの体をつたって汗が流れる。こいつを倒せば...全てが終わる。



「君がハルガンデスかい?」



「そうだが」



先手を取ったのは隣にいたキンキだった。ハルガンデスの前でもいつもの調子を保っている。正常なのかそうじゃ無いのか...そこはキンキを見ただけでは全くわからないがルビスもダメ元で話でなんとかしようとは考えた。



「おい!お前は何でこんなことをしている?」



「そんなもの人間を全て滅ぼすからに決まっているだろう」



聖竜といい四獣とやらは人間を滅ぼすことしか考えていない奴ばかりなのか。何にせよ言葉でなんとかなる相手では無いと言うのはルビスは察していた。となると戦うしか無いがルビスはその巨体を見て少し臆してしまう。



「ここで...倒す!」




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