三十一話 動き出す魔族の王
「イテテ..テティ大丈夫?」
そう言いながらアリスは立ち上がり自分たちが落ちてきたところを見る。そこには、ぽっかりと穴があいていてそこから青空が見える。穴から差し込んだ光でアリス達が落ちてきた地下の空洞の一部が照らされそこだけ明るいが他は何も見えないぐらい真っ暗だ。
「下の方、こんな空洞があったのね」
「どうするの?私は飛べるけどアリスを担いで脱出するのは無理よ」
「進んでみよっか」
そう言うとアリスはポケットから薄く光赤と青の光を取り出した。これは光玉と言って暗いところで光るというものだ。これがあれば暗い洞窟などのダンジョンを攻略する時に役に立つアイテムだ。
赤と青の光は空中に浮いてアリスの周りをふよふよ浮かんでいる。アリスが歩き出すとそれに合わせてついていくように動く。
「それにしてもなんでここってこんな空洞になってんのかしらねえ?」
「さあ?でもとりあえず進むしかないね」
しばらく道なりに進むがずっと一本道が続くばかりでなかなか変化が現れない。だが、もう少し歩くとやっと一本道に変化が現れた。何か赤い光を放っているものが向こう側にあるようだ。。アリスがそれを指差して少し早歩きで進むと広い場所に出た。
「なに?これ」
アリスはその物体を見て、不思議そうにそう呟いた。そこにあったのは赤い心臓のような物体だった。それはアリスの何十倍もの大きさがあり。時々ドクンドクンと鼓動を鳴らしている。その不気味は天井と床に伸びた赤い触手のようなもので支えられて宙に浮いている状態だった。
「何?この気持ち悪いの」
「さあ...?」
「おやおや、困りましたねえ。こんなところにまでネズミが入りこむとは。どこから入ってきたのでしょうねえ?」
その聞き覚えのある声は後ろから聞こえてきた。振り向くとそこには1匹の魔物がいた。緑の恐竜のような見た目でスーツを身につけている。それはオノマトピアとの戦いで闇魔を配っていたヘントールだった。
「あんた!!えーっと確か闇魔の..」
「どうやって入ってきたかはこの際いいでしょう。なぜならあなた達はここで私の実験材料となるのですからね」
「そ、そんなことないわこの気持ち悪いヘンテコ恐竜!!」
相変わらずキレッキレの毒舌を披露するテティに表情1つ変えないヘントール。いつの間にかその後ろ時はぞろぞろと魔物達が集まってきていた。牛やカエルなどのさまざまな魔物がいて、しかもその手にはかつてアリス達を苦しめた自分の身を削る危険な武器、闇魔を持っている。
「あれ!闇魔!」
「あなた方が戦っていたものとはまた一味違うんのですと。そうですねえ...あなた方人間の言葉で言うならバージョン2といったところでしょうか?」
「今度こそあなたを捕まえてその武器を作らせない!!」
「やってしまいまさい」
ヘントールが薄い黄色の縦笛を取り出し綺麗な音色を奏でる。すると闇魔を持ってる魔物たちは凄い勢いでアルスの方に向かっていった。どうやらあの笛で操っているようだ。バージョン2だろうが闇魔は闇魔。闇案は一度戦って打ち勝っている。そう易々と負けたりはしない。
牛の魔物が斧を振り下ろす。それを避けるとカエルの魔物が槍をこちらに向けて突き刺してくる。アリスはスキルの雷を放ち牛とカエルの魔物を一緒にふっとばした。
「アリス凄い!」
「なかなかやりますね」ならばアレを出すしかないでしょう」
ヘントールがパチン!と指を鳴らすと奥からとても大きな魔物が現れた、それは...。
「武器喰らい」
それはピロンが作った武器喰らいだった。どうして武器喰らいがここにいるのか...。武器喰らいは大きな唸り声を出してアリス達を威嚇する。へントールが増えを鳴らすと武器喰らいは勢いよくアリスに突進してきた。
横に避けるもすぐにアリスの方に向いて足を持ち上げ踏みつぶそうとする。
アリスは足を剣で止めるがその力に押し負けそうになる。
なんとか武器喰らいの足を押し返して腹のところにスキルを1発お見舞いする。アリスの雷は確かに腹の辺りに命中したが少し怯んだぐらいですぐにその目をアリスの方に向ける。
「うそっ!」
「無駄ですよ。武器喰らいはその程度じゃ倒れません。お陰で笛で操れるようになって使い勝手が良いですねぇ。この魔物はどうやら人工的に作られたようですが作った人を見てみたいものですねえ」
「きっとあなたみたいな変な人だと思うよ」
「さておしゃべりはそこまでにしましょうかね」
武器喰らいはグーにした手で地面を叩くと地面から鎖が飛び出てくる。その鎖はあっという間にアリスを縛り上げてしまった。
「これ..オノマトピアで使った...!」
武器喰らいはさらにアリスぐらいの大きさの黒い立方体を作り出しアリスに向けてそれを発射する。身動きが取れないアリスは避けるすべもなくそれに当たってしまう。鎖を破壊し凄い勢いでアリスを吹っ飛ばした。武器喰らいは近づくとアリスをその大きな手で握りしめる。
「すごい!食した武器のスキルを使えるのですね!!これは興味深い!!」
「アリス!!」
アリスはもがこうとするが抜け出すことができない。武器喰らいの締め付けはどんどん強くなって行く。その強さにアリスも「うぅ..」と言う情けない声を出し始めた。
「テティ!逃げて!!」
「え!?」
アリスのその叫びにテティは困惑した。自分では何もできない。だからといって見捨てて逃げるのか?何かできることはないのか..。こう言う時に自分は何もできないと言う無力さに腹がたつ。アリスはもう一度大きな声テティに逃げる方に指示をした。
「いいから早く!!」
「逃がしませんよ!!!」
ヘントールは黒っぽいデザインの弓を持つと先端が黒くの横の魔物鈍い銀でできた矢を放つ。矢は地面に到達すると、その矢が刺さったところから半径2センチほどの円を地面に描いた。テティは逃げようとするが、なぜか動かない。動かそうとしても全く動かない体に困惑しているとヘントールが近づいてきてしまった。
「これはですね。闇魔Ver2の行動封じの矢です。この武器の矢が到達した地点の近くに円を生成しその円の中では動くことができないと言うスグレモノなのですよ」
くっ...」
テティはヘントールを睨む。ヘントールは顔を近づけてテティを見ながらニッコリと笑い、顔を離した。
「あなた達は実験台になってもらいますよ。そう、闇魔の実験台にね...」
「それじゃ言ってきます」
アンバーグはそう言いながら受付のおお姉さんに手を振った。受付のお姉さんはニッコリと笑みを浮かべてそれを見送っている。アンバーグはこれからクエストに出るのだった。内容は、アンバーグでもクリア出来るような薬草などの収集だ。集会場を出て街を歩く。右に見えるガチャを回せる店では、またあのモヒカンの男がガチャをやっている。悔しそうに頭を抱えているのを見る限り、またダメだったみたいだ。
「今回はこれがあれば問題はないだろう」
そう言い懐から出したのは赤い液体の入った瓶だった。
それを見ながらニヤリと笑う。これは飲むとマジックポイントと体力を大幅に回復してくれるとっても貴重なアイテムだ。いざという時に使おうととりあえず懐にしまっておいたのだった。
歩くと街の出口が見えてくる。その奥には木や草が生い茂っているのが見える。
「よーし!!」
そう意気込んで出口の方に向かう。その付近には茶色い看板があり赤い矢印と文字で出口と書かれている。
ただの採取クエストだがいつもこの出口でふっ、と声を出してやる気を高めている。アンバーグは「ふっ!」と言う声を出して出口の方に進んでいった。草原が生い茂る道を進んで行くとスライムのような魔物や鳥のような魔物がこちらの様子を伺っている。
少し歩くと木々が生い茂るところに出た。こう言うところに薬草などは生えている。
「ん?」
かがんで草を撮ろうとすると向こうから声が聞こえてきてまた立ち上がる。そして声の方へとゆっくりと近づいていった。そこに見えたのはヘントールと魔物数匹。一体何をやっているのか。
「確かあいつは闇魔を配っていた...」
「そこでコソコソとしているのは誰ですか?」
その声にビクッと身を震わせる。ヘントールは明らかにこちらを見ている。どうやらバレバレのようだ。木に隠れていたアンバーグが姿を表すと「ほう...あなたでしたか...」とヘントールは呟く。どうしてこんなところにいるのかなどは気になったがとりあえず悪巧みしているに違いない。
そう確信したアンバーグは弓を構wる。
「ここであったのも何かの縁。面白い者を見せてあげましょう」
ヘントールは笛を吹くと誰かが姿を現した。それは...闇魔を持ったアリスだった。
「なんだ?ありゃ」
そう言いながら男は向こうの方を見る。そこには荒地に何千何万という魔物が行進している。赤や白、青など様々な色で、シカのようなものや鳥のようなものなど多種多様な種類が更新をしている。そして男の言う通り後ろの方には、赤いボディで鬼のような形相をしていてほかの魔物より10倍ほどでかい魔物が存在感を出している。
「あれ...まさか魔物の王..?」
武器紹介的なの
闇魔・行動封じの矢
レア度★★★
モブ魔物が使った武器。矢が到達した場所から一定距離にいる者を敵味方構わず動きを封じる矢。
行動を封じるためにあるような者で刺さっても痛いぐらいで攻撃力はほぼない。矢が刺さって痛いですむのもどうかしてるけど。