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二十五話 歪んだ理想郷



「理想郷!それは全てを手に入れることだ!!財も!人間も!!何もかもだ!!」



両手をいっぱいに広げてそう言うドカンに、ただルビスは「くだらないな」とだけ言う。



「そう思うのなら止めてみろ!!お前の力で!!勝てるとでも思ってるのか?お前ごときの力で!!!



「ああ...そのつもりだ」



だがそんなものはただの強がり、勝てる見込みはあまりなかった。主人公が戦う前にサブキャラが戦う時点で負けるようなものだが、真面目なルビスにはそんなことすら頭になかった。ルビスが駆け出すとドカンは槍をくるくると回して上に築き上げ、そして勢いよく地面に落とす。



「起爆」



ドカンのその言葉で、途端にルビスが走っていた場所が次々と爆発を起こしていく。ドカンの周りに大きな爆発が起こる。ルビスはその爆発に巻き込まれるも剣を振るがドカンの槍により防がれてしまう。それを槍で防いだ。槍と剣が擦れる音が聞こえてくる。



「一応聞いてやるがお前をそこまでさせるモンはなんだ?」



「教える義理は無いがまあ、この街もろとも吹っ飛ぶんだ。無駄だとは思うが教えてやろう」



そういうと静かに語り始めた。それは苛まれたいまわしき記憶。



「俺たちの生まれた所は本当にひどかった。富があれば勝ち組み、なければゴミ。そう言う所だった」



ーー


「お前らのようなゴミに与えるもんは何もねえ!!消えろ!!」



3人いる男のうち、金髪でピアスをはめている男は、そう言いながらまだ子供のドカンを蹴り飛ばした。まだ幼いドカン達5人はボロボロの服で靴を履いていなく、顔や服には泥がついていた。キンキやザーザが心配そうにドカンを見る。そしてその男はペッとドカンに唾を吐きかける。

ピアスの男はキンキ、ザーザ、ドカン、モグモン、グーグの5人を見てイラついたような顔になる。



「いいじゃねえか、少しぐらいくれてやっても!!」



別の黒い髪のタトゥーの男はそう言い、何かを放り投げた。それは魚の骨で、食べるところなどは全くない頭がついた白い魚の骨だった。それを見ながら3人の男はゴミを見るような目でクスクスと笑っている。



「これでも食ってろよ!」



「お前ら貧民にはお似合いだな!ギャハハ!」



「いいか?ここでは財が全て。金も。石もなんもないような奴らはゴミだ!ゴミはゴミらしく掃き溜めにでもいろ!!ギャハハ!!」



「ゴミがもう二度と目の前通るんじゃねえぞ!!!」



男たちはそう言うと去っていった。ドカン達5人は抵抗もできずにただ、そいつらを見ているだけだった。最初に声をかけたのはキンキだった。



「しょうがないよ、僕たちは貧乏だから、あの人たち見合いな生活もできない」



「でも!!」



そう言いかけてやめた。何を言っても事実は変わらない。ただ虚しいだけなのだ。ただ裕福な者にゴミのように扱われるだけの生活なのだから...。








「はっきり言ってあの街も何もかも!全てがゴミだ!」



回想が終わり、ドカンはルビスの方を見る。ルビスは少し怒ったようにずっとドカンの方を見ている。ドカンは一度下を向き再び顔を上げた。



「突然こんな世界にやってきてびっくりしたよ。ここでは武器を手に入れられ優劣がつけられる。なら今度は上に立てばいいじゃないか!!!この世界で上に立ち、全てを得てばいいってな!!」



「もういい」



ドカンが言い終わる前にルビスが攻撃を仕掛けた。だがそれはドカンの目の前を通過していった。ドカンの目が剣を振り下ろしたキンキの方を向く。そして「だからな」と呟いた。




「この世界に連れてきたのが誰かは知らないがこんな素晴らしい世界来れたことを幸せに思わないといけないんだ!!」



「お前の話はわかった。だがそんなもの元の世界でやってた奴らと同じだと思わねえのか?」



「人間なんて結局は自分が1番さ。爆発しろ!!」



ドカン!!という爆音とともにルビスの剣が爆発を起こした。ルビスは盛大に吹っ飛ぶがまた立ち上がりドカンに立ち向かう。

だがドカンを呼ぶ声でそれは一旦中断された。



「ドカン!!」



その声に誰もがそちらの方を向く。そこにはキンキ、グーグ、モグモンの3人の姿。ドカンは嬉しそうな顔になり「おお」とだけ言って受け入れるように手を広げ得る



「さあ!お前らも戦え!!わかってるよな?お前らにも爆弾が入ってることは。ザーザーみたいになりたくなきゃ戦え!!」



「ザーザは一体..?」



「ああ、ちょっと敵を倒すために犠牲にな。だが安心しろ!一人倒せたから」



「君の駒として動いてきたがやはりこれはおかしいよ!!」



その言葉にドカンの表情は笑みから失望に変わった。ドカンは少し怒ったようにキンキを見る。だがキンキは表情1つ変えない。



「おかしい?上に立つのが何がおかしいと言うんだ?」



「やめよう!!僕は美しいから争いはムダだ!」



「良さそうな場面なのにあのナルシキャラは消えないんだね」



「ピロロロ、なかなか面白いやつだ」




テティとピロンがナルシストキャラにコソコソ話でツッコミを入れる。そんな中でキンキとドカンの話は進んで行く。



「君の理想郷は...いくら美しい僕でも理解できない」


「そうか...」



ドカンが手を広げるとキンキは爆発した。ドサっと音を立て倒れ動かなくなった。ドカンはモグモンとグーグの方を向く。グーグは相変わらず眠っているがモグモンは体をビクッとさせて杖を取り出した。それを見てドカンは満足そうに頷いた。それを見たルビスは

さらに怒りの表情をあらわにする。




「お前、どこまでクソ野郎なんだ!!ぜってえお前の好きにはさせねえ!!」



ルビスは攻撃を仕掛けるが槍で防がれてしまう。そして爆破しろとという掛け声とともにルビスの剣は爆発を起こした。爆発は小さかったこともありルビスは軽傷で済んだがあの槍では迂闊に攻撃出来

ない。



「くそ!厄介な爆発だな...」




ルビスが攻撃を仕掛けるも、また槍に触れてしまう。切り返して攻撃を行うが

ドカンはまたルビスの剣を爆発させようとする。


「真・夕立!!」



ルビスのピカッと光りが見えた後に爆発が起こる。その前にスキルを出す事には

ルビスの剣から出た赤い光は爆風を切り裂いて行く。だがドカンも地面を槍で突いてすぐに爆発させ、その爆風で相殺してしまった。




「どうした!止めるんじゃないのか!!」



「この野郎!!」



なんとかドカンにの武器に触れないように攻撃をしようとするがなかなかうまくいかない。



「爆裂!葬!」



そう言うとドカンの周りで爆発が起きた。ドカンと近い距離にいたルビスは巻き込まれてしまう。ドカンが余裕そうに「もう終わりか?」と言うと遠くから「まだ...」というそれに答える声が聞こえる。そこには向こうでフラフラとしながら立つアリスの姿があった。



「ほう...あんな至近距離であの威力の爆発を食らって立ってるとは。あれでも威力は最大にしたはずなんだかなあ?」



「あなたが理想郷を語るあたりから起きていた...」



「じゃあお前も聞いていたわけだな」



「あなたにそんな理想郷は作らせない!!」



「なら..」



そう言い遠くを見る。空に朝日が出ようとして夜の終了を迎えようとしていた。それを見て「ふっ」と笑い、こんなことを持ちかけた。



「どうだ?あの朝日が昇るまでに俺を倒せばゲームクリア。できなきゃここは吹っ飛ぶってことでいいな?いや今決めた、決定事項だ」



「それまでに...あなたを倒せばいいのね?」



「その通りだ」










「ここまでくれば大丈夫でしょうね...」



へントールは路地の裏で息を切らしながらそう呟いた。後ろを見るが追ってはいない。どうやら巻いたようだ。ヘントールはふう、と安堵して視線を地面から前に戻す。するとそこにはひとりの

男が苦しそうにしている。その男は闇魔と戦っている時にルビスの前に現れた謎の男ゼロだった。その男を見てへントールは少し驚いたような顔になった。



「あなたは...もしや聖...」



「ぐうっ...!」



ヘントールがそう言いかけるとさらに苦しそうに倒れこむ。



「忌まわしき呪い...人間がはびこるこの街で...ぐっ!まずはここから滅ぼす..!」

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