二十四話 プロジェクト・M(マックスヒーローズ)
「時は満ちた!『プロジェクト・M』始動!!」
「いいぞーリーダー!」
「リーダー」
マブが両手をあげて、そう高らかに宣言する。隣ではアルとホーが囃し立てる。その声とともに辺りに大きな地響きに見舞われ、何かが現れるような予兆を見せた。いつもはギャグのような扱いだが今回は何かが違うというのは、誰でももわかった。なんだか物々しい雰囲気が漂っている。
「何が起こるっていうの..?」
「あんた達は、某ボケットなモンスターのロケ何とか団みたいに『やな感じー』って感じで吹っ飛ぶのが役目でしょ?」
「うるさい!!うるさい!!今回はあんなことにはならんのだからな!!」
「わかった!展開的に何も起きないとか!!いつものごとく吹っ飛ばされて終わりとかじゃないか?」
「シャラーーーーップ!!!ドカンを倒す前にお前らに後悔させてやる!!」
マブは馬鹿にするように話していたルビスとアンバーグの方を指差す。なんだか今回は真面目なような感じが漂う。
「カモン!!武器喰らい!!!」
地響きののち、少し大き目の緑の魔物がそこに現れた。ゴブリンのような見た目で目は赤く鋭く光っている。大きさはアリスたちの5倍ほどある。緑で筋肉質の体は威圧感を増している。そこにあらわれた魔物は大きな哮りと赤い目でアリス達を見る。その大きさに圧倒されながらその武器喰らいと呼ばれた魔物を見ていた。
「はっはっはー!!!どうだ!!これがとある研究者と作りだした最強最悪の人工魔物その名も『武器喰らい』だ!!」
「武器喰らい?」
「ピロロロ!あれは私の作った人工魔物武器喰らい。その名の通り武器を喰らうことが出来るのだ!」
テティの横にはいつの間にか隣にピロンが居て、解説を始める。周りはまだあんまりよくわかっていないらしく頭にクエスチョンマークを浮かべている。ピロンは不気味に笑いながら武器喰らい《ウェポンイーター》の話を続ける。
「やつは私の最高傑作とも言える。もうあいつを動かしたら止まることはないだろう。地下に篭って研究を続けた甲斐があったものだ」
「店に行った時『忙しいから』とか言ってたのってまさかアレを作ってたのか?」
「ピロロロ、その通りだ」
「変な笑い声の他に変なものまで作っちゃって!!本当に変尽くしねあなた!」
「それは褒め言葉として受け取っておこうかな」
グルルル...と唸る武器喰らいはグルルルとうなり声を立てアルとホーの槍取り上げた。そして使うのかと思いきや、口の中に放り込みバリバリガリガリと大きな音を立ててそれを食べてしまった。マブは「おい!」と言い武器喰らい《ウェポンイーター》を見たがその恐ろしげな見た目に恐れ肩をすぼめてしまった。
「手下の武器を...!んーまあいい!!とりあえずここにいるやつらをやっつけてしまえ!!」
その言葉に反応するかのようにハカイ君はマブ達の方を見る。その恐ろしげな赤い目はマックスヒーローズの3人の方に向く。そして手を使いマックスヒーローの3人をあっという間に遠くにに吹っ飛ばしてしまった。
吹っ飛ばされ星になったマックスヒーローズを見て、テティは「ほんと何であいつらっていつもワンパターンなの?」と呆れたように呟いた。
「とりあえずあいつを止める!!」
「チェーンブレイク!
そう言いマブの剣を地面に刺すと地面から4、5本の鎖が現れ武器喰らい《ウェポンイーター》の手や足に巻き付いて行く。なんとか振り払おうと手足を動かすが擦れる音ばかりでなかなか鎖は外れない。
「すごい!これがあいつの武器のスキル!!」
「このマブの武器はスキルの鎖で動きを封じて攻撃で攻撃する武器...どう?」
鎖で動きを封じられた状態にルビスが攻撃を仕掛ける。だが武器喰らい《ウェポンイーター》は鎖を簡単にちぎりアリスの方へ向かう。辺りに鎖の破片が散らばりドシンドシンという音が近づいてくる。武器喰らい《ウェポンイーター》は大きく振りかぶり拳をアリスに振り下ろす。アリスは2つの剣をクロスさせて防ごうとするが防ぎきれず剣を弾かれ体にその拳は命中する。
「アリス!!!」
「大丈夫か!?」
アリスの2つの剣が転がる。武器喰らい《ウェポンイーター》はアリスに目もくれず落ちた武器の方に向かう。マブの剣を拾い上げるとそれを口の中に放り込みガリガリと音を立てて食べ始めたのだ。武器を食べるのに夢中になっている武器喰らい《ウェポンイーター》を見て、アリスは隙をみて自分の剣を拾い上げそちらに向かって行く。だが武器喰らい《ウェポンイーター》に向かって行くアリスに地面から鎖が伸びてきて体を拘束されてしまう。手や足、体に巻き付いた鎖は剣で攻撃しても外れる気配がない。
「あれって、さっきアリスが使ったマブってやつの...!」
「あいつは武器を喰らうことで喰らった武器と同じ能力を得ると言う厄介なやつだ。素晴らしい出来だろう?ピロロロロ」
「って事は武器を食べれば食べるほどなんでもできる厄介な相手になるって事でしょ!?まるで『なろう』の無双系主人公ね」
「なろう?無双?よくわからんが、アリスを助けないと!!」
ルビスがそんなことを言ってる間にも武器喰らいはアリスに近づいて行く。アリスは何度も攻撃したりを繰り返すがなかなか外れない。すると氷の矢が飛んできてそれはたちまち鎖を凍らせる。遠くを見るとアンバーグが武器喰らいに矢を構えている。この氷の矢はアンバーグのものだったのか。
「俺が引きつける!!お前はその女を倒してしまえ!」
「アンバーグじゃ勝てないと思うけど、任せた!!」
「一言余計だ!!!」
そう言うとアンバーグは武器喰らいの方に向かいスーッと息を吸った。
「おいデカブツ!!お前なんて怖くねーんだよこのバーーーーーーーカ!!!」
そんな煽りに反応したのかアンバー具の方を向く。アンバーグを視界に捉えると大きな叫び声を出してドスドスと大きな足音を立てて襲ってくる。
「なんかすげー効いてないか?」
「ピロロロ当たり前だろ。そいつは言葉を理解するように作ってある。もし悪口でも言われれば地の果てまで追いかけてそいつを無残な姿にするまで追いかけるだろう」
「それ早く言えよォォォ!!」
顔を真っ青にして泣きながら走り出す。それについていくようにどんどん武器喰らいはアリスから離れて行く。それを見届けてからアリスはザーザーと改めて対峙する。
「あなた...勝てない。だから...降参」
「分からないでしょ?そんなの」
「アリス!俺も加勢するぞ!」
近くにいたルビスのその声に「いや、いい」とだけ言った。ルビスはそうかと呟きアリス達を見ていた。
「戦いたくはない...から」
「え?それってどう言う...」
アリスが言い切る前にザーザは雨粒を飛ばし攻撃をしかける。それを避けながらザーザに近づいていき攻撃をしかけようとするが目の前に大きな水の壁を貼られる。アリスの剣は弾力のある水の壁により弾かれすこしバランスを崩す。水の壁は細長くなりアリスの方に向かう。アリスはそれを防ぎながら左に受け流す。
「やる...!」
「あなたもね!」
アリスの剣とザーザーの杖が交じり合おうとした...その時だった。ザーザーは大きな音を立てて爆発した。突然のことに何が起こったのかもわからぬまま至近距離にいたアリスも爆発に巻き込まれてしまった。茶色い煙が辺りを見えなくする。煙が晴れるとザーザとアリスがその場に横たわっていた。いきなりの爆発にテティもルビスも訳もわからずただ呆然とする。
「最初からこうすべきだったのになぁ」
その声とともに現れたのはドカンだった。その言葉からこいつの仕業だと言うことがすぐにわかった。ドカンはふっと笑みを浮かべて持っている槍を肩に当てる。
「こいつが戦っている最中に爆発させりゃ確実に一人葬れる。すごくいい案じゃないか」
「お前...仲間だぞ!」
「仲間?んなもんただの道具だろう」
仲間を爆発させると言う非道な行いにルビスは拳を握りしめる。
「俺のこの槍は触れたところを爆発させることができるんだ。もちろん人間だってそう。これで人間をタッチすれば簡単に動く爆弾の出来上がり。あとは好きなタイミングで爆発させるだけ。どうだ?面白いだろ!!」
「クソ野郎が...!」
「これも理想郷のためなんだ」
「理想郷...?」
ドカンは空を見上げ「理想郷」ってのはな...と続けた。