二十三話 不気味な魔道具屋
奥から出てきたその男は、かつてアリス達を苦しめたピロンだった。ピロンはアリス達を見つけるやいなや「おっ」という声を出す。たしかにあの時は闇魔だけを回収し、闇魔を持っていたピロンやガーディス達はその場に放置していた。だがまさかこんなところで再会を果たすとは両者夢にも思わなかったことだろう。
「改めて聞くけど、あんたらなんでここにいるのよ!!」
そう聞くとバニアがハーッとため息をついて口を開く。
「あなた達に負けた後、途方にくれていた私たちをここのオーナーが拾ってくれたのよ」
「へえー」
「何よその反応は」
聞いておいてあまり興味を示していないようなそのそっけない返事にバニアはしかめっ面でテティの方を見る。バニアはしばらくテティを見ていたが「まあ良いわ」と言ってテティから目を離したこう続けた。
「あれ?もう2人ぐらいいないけど」
「カルラは買い出しよ。それで、ガーディスは...強さを求めて何処かに行ってしまったわ」
「そうなんだ」
「で?お前らは何しにきたんだ?」
ピロンが話を本題に戻す。アリスは「そうだ」と手を叩いてここにきた目的を話始めた。ここでオノマトピアというやつらがゲームを始めたこと、ここで新しい武器を探しにきたということなどを話した。全てを話すと「ほーん」と頷いた。
「というわけで、ここ武器が手に入るんですってね。2回ぐらい引かせてよ!!おばさん!!」
「おばっ...誰がおばさんよ!!その呼び方をするのはこの口なの!?その口ね!!」
とうとうおばさんという呼び方に耐えきれなくなったのかテティの頰を手で掴んで伸ばしたり縮めたりし始める。アリスはそれを止めようとするという光景を見てピロンは黙ったまま棚に商品を置き始めた。
「おば..バニア様!落ぢ着いでぐだざい!!」
「あんたも今おばさんって言いかけたわよね??」
バニアの鋭い目がゴーンに向く。ゴーンは目を背けながらダンボールに入っていた丸い玉を棚に置いた。
その光景を見てたルビスはふっ、と笑った。
「なんか、この前まで敵だったのが嘘みたいだな」
「別にあんた達のことを仲間だとかも思ってないからな。さっきも言ったが今は客と店員。ちゃんとジェムを使うのなら引かせてやっても良いぞ。ピロロロロ」
「これ、闇魔みたいな変なもんじゃないわよね?また悪さしてるんじゃないでしょうね?」
「心配か?ならやらなくてもいいんだぞ?」
「やる」
アリスはそういうと石を渡す。奥の人の顔のような石を入れるとそれが回転し様々な色の球が出た。通常のものとは違い紫や白の玉がいくつも出てくる。その中にひときわ目立つ薄い透き通った紫の玉が一つだけ入っていた。
「ほう。これは良いものが当たったな。ほれ、これを持ってくといい」
ピロンがそう言い渡したのは紫と黄色が混じったような剣だった。先が槍のように3つに分かれている少し変わった剣だった。それをくるくる回したりしながら全体を見てその異様な姿剣jを上に掲げてみる。デザインは少し不気味だが、強そうな感じだ。
「それは魔刃の剣と言ってな、とても強いが使うと生気を吸い取るんだ」
「魔刃の剣...」
「闇魔みたいなことにならないの?」
「そこは大丈夫だ。生気を吸い取るだけで死にはしない。ただ、吸われすぎると立てなくなったりと弊害はあるから気をつけて使うんだな。ピロロロロ」
「あんたらは敵だったし信用ならないのよ」
「なんだと?この悪態妖精め」
「なによ?」
テティとピロンが睨み合う。アリスはまあまあ、とそれをなだめた。魔刃の剣...一体どのようなものなのだろうか...。とりあえず挨拶だけして外に出ようとする。
ちょうど出ようとしたときにカルラが入っていて最初のバニアのような同じリアクションをとる。だが二度目といこともあり無視して階段を上がった。それを見て不思議そうにカルラは
「なんなんスか?あいつら」
とだけ言った
「さて、早速誰かで試しちゃおうよ!」
「と、行ってもそんな都合よくオノマトピアが現れるなんて...」
「敵...発見」
そう言いながらこちらに来るのはザーザだった。なんという素晴らしいタイミングだ。まるで狙っていたかのようにザーザが現れた。ザーザの手には水を象ったような青い杖を持っている。これが武器を弱くしたザーザの武器...。
「お生憎様、今持ってるのは、あなたの力のかかった武器じゃないのよね」
「なんで...私の武器のこと...知ってる」
「あんたの仲間がペラペラと喋ってくれたわよ。全く、敵って自分や仲間の能力喋らないと死んじゃう病気にでもなってるのかしらね」
ザーザはそう...とだけ呟いて杖を向ける。するとたくさんの雨粒が杖の周りに現れる。それは凄い勢いでアリスの方に発射される。アリスは剣を抜いてそれを防ぐ。アリスは剣を持っているとなんだか体が少しずつ重くなっていくような感覚になる。
「これが、正気を吸う剣?」
「くらえ!」
今度は先ほどより大きめの水を出すとそこから小さく細い雨粒が四方八方に飛んで行く。アリスたちは物陰などに隠れるが、家の壁や噴水にその水が当たるとどんどん削れていく。
「ちょっと!なにあれ!危ないじゃない!!」
「お前ら注目〜〜〜〜〜」
突然の声。その声の主はマックスヒーローズのリーダー、マブだった。横にはお供のアルとホーもいる。
「今から俺のスーパーミラクルな作戦を実行にうつす!!!」
「また失敗するぞこれ」
「そーだねー」
「おい!お前ら後ろで聞こえるように言うな!!」
アルとホーのその会話にそうツッコにながらも「おほん」と咳をして改めてこう話し出す。
「オノマトピアに告ぐ!!今起伏しなければ『プロジェクト・M』を開始する!!!これによりお前らは終わりだ!!」
そう自身満々に言うアルとそれを聞きもう既にオチが見えてるじゃないかと心配し出す一同。
「まあ展開が若干見えてる気もするけど一応聞いてあげるわ。そんな作戦なの?それ」
「なんか余計な言葉が聞こえた気もするが、よくぞ聴いてくれた!!!」
「ならば心してみるがいい!!さあ!今こそ発動せよ!!『プロジェクト・M!!!』」




