百七十一話 受け継いだバトン
「さあもっと来い!」
「行くわよ!!」
そう言ってネネは剣を構えるそして凄まじい気と共に「はーっ!!」と言う声を上げながらレミーの方へ向かって剣を振るう。
「うぐおおおおおおおおおお!!」
その一撃は凄じく、そう言ってレミーは吹っ飛んでいった。ネネは、はあ...はあ...と息を切らしながら膝をつく。
「やった!ネネ!!!」
「すごいじゃない!!ネネ!」
観客席でアリスもテティも立ち上がって声援を送る。だが、レミーは意外と平気そうに立ち上がり、「はーすごいすごい」と言いながらパンパンと体についた汚れをはたいてフィールドに立っていた。なんだかまだ全然余裕があるという感じだ。
「そこまでって感じだな」
「まあ、そうだろうと思ってた」
「ああ?」
「アリス、ごめん、これが限界みたい」
それを聞いてレミーは「ほう...そういう事だったのか」という声を出す。
「お前は最初から勝つことなんて考えちゃいない。アリスにこちらの手のうちをできるだけ見せるために戦っていたんだな」
「ええ」
「だが残念だな。こちらの手の内を全然知れなくてな。アリスとの戦いに向けてまだ温存している手は何個もあるぞ」
「十分よ。これでアリスがあなたを倒してくれるからね」
「ほう...?なら、その戦いがもっと面白くなるようにしないとなあ?」
そう言うとネネを蹴り上げて少し遠くへと吹っ飛ばす。そし倒れているところを髪の毛を掴んで起き上がらせるともう一度蹴りを入れた。
「ぐっ!」
「ほらもっと楽しもうぜ!」
そう言うと剣に炎を纏わせて何度も斬りつけた。ネネはその攻撃でぐったりとして動かなくなった。レミーは「おいおい...もう終わりかあ?」と言いながら攻撃の手を休めない。抵抗すらできないネネはぐったりとして動かなくなってしまった。
「おい、もう相手は力尽きてるじゃないか」
「まだやるのか?」
観客席からはそんなザワザワとした声が聞こえてくる。一方的に痛ぶられているネネはもうすでに戦える状況ではなくレミーの蹂躙をただひたすら受けているだけだ。
「ほらほらアリスの助けを呼んでみろよ」
「ア...リ...」
蚊の鳴くような掠れた声でアリスを呼ぼうとするがレミーは言い終わる前にネネを地面に叩きつける。そしてもう一度腹の辺りに蹴りを入れる。流石に行き過ぎた行為に司会行役が止めに入る
「ちょっとちょっと!もう勝負はついてるでしょうよ!!」
「ああ?うるせえ!!」
そう言って司会進行役を突き飛ばし殴る蹴る剣で痛ぶると言った行為をずっとやっていた。
「ははははははははははは!!!雑魚を痛ぶる瞬間が楽しいよなあ!アリス見てんだろ??なあ??」
そう言ってレミーは炎を纏った剣を心臓のところに突き刺そうとするネネは掠れた声で」アリ...ス...ごめん」と謝まって涙を流す。
「何で鳴いてるんだあ?どうせこれから串刺しになってそんなもの必要なくなるのによぉ!」
「ちょっとあなたもう試合は!!やめ!!」
司会進行役の言葉すら聞かずに勢いよく剣をネネの心臓部のあるところに突き立てようとした。だがそれはガキン!という鈍い音を立てて防がれた。
「おお、来てくれたかアリス」
それを防いだのはアリスで、それをみてレミーは嬉しそうな顔をする。アリスは激昂したような顔でレミーをずっと睨み続けている。
「あなたは本当に許さない」
「いいねえ、面白くなった。こいつをいじめた甲斐があるってもんだ」
「今からでもあなたを潰せる」
「おーいいじゃないか。雑魚との遊びも飽きたところだ。来いよ!」
「ちょー待ってください!試合は明日ですから!!」
司会進行役が止めるとレミーはチッと舌打ちをして剣をしまう。アリスも黙ったまま剣をしまいその間もレミーをずっと怖い顔で見ていた。
「まあこっちも色々と準備があるからな。明日を楽しみにしておくことだな」
「ええ」
「何なのあいつ!ネネをあんな目に!!」
試合が終わり店で食事をしながらテティはそう言った。あの後ネネは医療所に送られ、安静にしている。
「今すぐに叩き斬ってやりたいけど明日に持ち越しならしょうがないわね」
「アリスボコボコにしてやりなさい!!」
「言われなくとも」
「アリスさん」
そこにアリスの名前を呼ぶものが居た。その姿にアリスもテティも少し驚く。
「メルロ」
「...ええと」
目の前でメルロは少し間を置いてこう喋り始めた。
「あの姉妹もそれを擁護するあなたも認めたわけではありません。ですが、あなたと戦って色々とわかりました。
「そうなんだ」
「...あとは任せます。それだけです」
そう言ってメルロは去って行く。それにテティは「なに?」と不思議そうな顔をしていた。
「きっと彼女なりの対応なんだよ。イズさんをやられて役目を任されたんだ」
「なら頑張んないとね!」
「あとは一人だけ...あいつを倒せば...ネネもミミもイズさんも...みんなの仇を打って絶対倒す!!」
「その息よ!!」
「さ、いきましょ」
アリスは立ち上がりお金をおいて店を出る。そしてテティに「ちょっと先戻ってて」といい走ってどこかに行こうとした。
「ネネ達の様子を見に行かないと!!」
そう言って小走りするアリスに、「ちょっと」と声をかけるものがいた。その声はしわがれていてお婆さんの声だった。
「そこのあなた、占い師していきませんか?」
そこにはしわしわのいかにもおばあさんと言った感じの人物がいた。そのお婆さんの前には小さなテーブルと占うための水晶が置いてある。
「えっと...」
「ああすみません。ちょっとよからぬものが見えてしまったもので」
「よからぬ...もの?」
「あなたは近いうちに大事なものを失うでしょう。そしてそれによって道を間違える」
「はあ?言ってる意味がよく...その大事な人というのは...?」
「それは分かりませんが」
「急いでるんで」
アリスはよくわからない占いを無視して先に進んだ。そしてすこしいー行って後ろを見るとあのお婆さんはいなかった。アリスは不思議そうな顔をするが走ってネネ達の元へと向かった。