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十七話 五つの擬音




「私たち、危険人物だって」



自分の顔が描かれた紙を見ながら。ザーザはそうぼやいた。、その似顔絵の上にはWARNING!という赤い文字が書かれている。

ドカンが広場で行ったゲームの開始のあと、すぐにオノマトピアのメンバーの似顔絵が張り出され、「オノマトピアの討伐」という緊急クエストとして町中に知れ渡った。誰が書いたのかとかは気になるところだが今はそんなことを考えている暇はない。いち早くオノマトピアを全員倒さないと大変なことになるのだ。


「ねえねえ、似てるー?」



グーグは自分の似顔絵を剥がすと自分の顔の横に置き「似てる?」と自分と写真の似顔絵を交互に指差す。ザーザは小さくどうでもいい...とだけ言ったが、モグモンはそれに何も言わずに紙を捨て、一切れのケーキを取り出し口に入れモグモグと口を動かす。そして嬉しそうな顔になり、またケーキを一切れ取り出すと口の中に頬張った。捨てられた紙はひらひらと宙に舞い地面におちた。



「さて、ここの奴らは楽しませてくれるのかな?」



「....キンキいない」



「この街のやつ全員を相手にすると張り切って何処かに行ったよ」



「ほんと...騒がしいヤツ」



静かにそう呟くザーザの横ではグーグがいびきをかいて眠っている。そこに4人ほどの男女がザーザたちを指差し「いた!」と叫んだ。そのうちの一人の女は救援を呼びに走っていき、残りの3人は斧や槍を構える。それを見たモグモンはグーグを揺さぶって起こそうとする。



「グーグ起きて〜仕事だよ」



「えあ?」



「いくよ...。仕事」








人々が右往左往してるのを、オノマトピアの襲来を知らないアンバーグは不思議そうに歩きながら見ていた。そのアンバーグを見つけたアリスはアンバーグの方に向かって行く。



「あ、ハンバ...アンバーグ!」



「今間違えそうになっただろ」



「そんなことより!オノマトピアが襲来してきて!」



「オノマトピアって!」



「何よハンバーグ、いきなり大声出して」



「ああ、少し前に街1つが壊滅する事件が起きたんだ。その時に街に現れたのが...」


「オノマトピア」とその名前を呼んだ。名前のところはもうツッコむのを諦めたのか無視し、アンバーグはオノマトピアという集団についてを語り始めた。


「ああ..5人で結成されていてそれぞれ厄介な武器を持っている」



「グーグ...全てを眠らせる『睡魔』と呼ばれる男。暴食モグモン...全てを食らう大食らい。雨水ザーザ、水を操り全てを雨によって制圧する。剣技 キンキ、ナルシストだが剣の腕は最高クラスと謳われる男。そして爆魔ドカン。こいつが一番厄介で、全て無にする爆裂の力を持つ」



全ての名を言い終わるとテティは何かがわかったように「その人たちって...」と話を続ける。



「全員擬音なんだね。睡魔だから眠る時のぐーぐー、暴食だから食べる時のモグモグモグ、雨だから雨が降る時のザーザー」



「ああ、だから剣の音のキンキンと爆発の音のドッカーン!」



「で、オノマトピアって『オノマトペ』から取ってるんだろうね。まったく、作者もそんな安直な名前で良いと思ったのかしらね」



「今はそこ重要じゃないだろ...」



アンバーグが呆れるように呟くが2人には聞こえてなかった。



「この街が吹っ飛ぶのも困るし早く5人倒しちゃわないとね」




「なんか敵を全滅させる技とかないの?」



「んなもんねえよ」



「だよねーとりあえず真面目に探してちゃっちゃと倒しちゃおうよ」



「その心配はない。この僕にやられるんだからね」



そこにいたその声の主は金髪の男。金髪でナルシスト...それは、オノマトピアのキンキだった。紙を手であげながらそのしたり顔でこちらを見てくる。



「この僕と戦える事を光栄に思うんだね!オノマトピアの魔剣技と言われたキンキ様にね!!」



「何こいつ、うっざ」



それが率直な感想だった。直面して改めて苦手なタイプだと実感する。めんどくさい感じだがこいつも倒さなければいけない。アリスはあまり戦いたくない気持ちを抑えて剣を抜いた。



「わかる、わかるよ!僕の美しさに嫉妬しているんだね!」



「うわあ...まじでないわー」



一同誰もがこのナルシストっぷりを見てドン引くレベルだった。ポジティブというかなんというか...こじらせてめんどくさいタイプという感じか。本当に相手するだけでも嫌になってくる。



「アリス、こいつはお前に任せて俺は他のやつを探す!」



「『多分誰にも勝てないと思うけど』頑張ってね」



「おい」



テティの心無い一言にアンバーグは睨みを効かせる。おそらくめんどくさいと判断してアリスにまかせたのだろう。こんな奴を押し付けられた見にもなってほしいものだ。



「『多分誰にも勝てないと思うけど』気をつけて。『多分誰にも勝てないと思うけど』」



「2回いうな2回」



押し付けられたことの仕返しなのか、テティはすこし皮肉めいたようにそう2回繰り返す。アンバーグは走り側に何か言ったようだが、何を言ったかは聞き取ることはできなかった。走っていくアンバーグを見てキンキという男はふふっと笑みを浮かべた。



「君たちはハズレだ。僕という素晴らしい人間と戦うことになったのだから。後悔しながら負けると良いさ」



「本当にこのナルシスト野郎と戦うの?」



「僕の美しき剣技...!とくと味わうがいい!!」



キンキの剣をアリスが防ぐ。そして2、3回ほど攻撃すると、キンキの剣にうなっている赤い玉が攻撃した回数だけ赤く光った。その玉は横並びに10個ほど剣の先の方にまでびっしりと並んでいている。


「ふふふ、どうしたんだい?それじゃあこの、美しき僕には勝てないよ!!



「アリス!早くこんな勘違いナルシスト倒しちゃてよ!」



「この僕の華麗なる剣の前では意味のないことだ」



その時だった。ドン!という大きな音が向こうの方で鳴る。突然のことにアリスもキンキもそっちの方を向く。向こうの方で煙が立っていてどうやら何かが爆発したようだった。



「あの爆発...ドカンか。もう少し僕みたいに清楚で美しくできないものかねえ」



「いたぞ!あいつだ!誰か戦ってる!加勢するぞ!



人がキンキを見て集まってくる。そして7、8人が一斉に飛びかかってくるが、見事とも言える剣さばきで全て倒してしまった。周りには先程まで元気だった7、8人のモブが気絶している。



「さて、僕の美しい剣技を見せてあげよう」










「次なる場所はあそこにしますか。楽しみですねえ。私の武器であの街が闇に染まるのは...」



スーツで恐竜のような見た目のそいつは何かがいっぱい入った紫の風呂敷を背負いながらアリスたちのいる街を見た。

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