百六十三話 魔霧の王(ミスト・キング)
「いくよ!」
その魔霧の王は口から何かを吐き出す。吐き出されたのは緑の液体で、その液体が床に張り付くとシューという音を立てて煙を上げて床が溶けていく。
「何!?」
「この!」
ミミが矢を放つが、霧ということもあって体をそのまま通り抜けてしまう。
「効かない!?」
「そういえば...この炎の剣なら倒せてた...!」
アリスは自分の剣ならばと勢いよく走り出し。炎を纏って勢いよく斬りつけようとする。そのアリスの予想通り、どうやら効いているようで炎の剣が命中したところが消えていく。魔霧の王は口からまた毒の液体を数発吐いてくるのを3人で避ける。
「フミュオオオオオオ」
魔霧の王は霧を吹き出し。自分と同じような造形の霧の生物を数匹生み出す。
「ネネ、ミミ、撹乱をお願い!」
「りょーかい!」
「はい!」
ミミが矢を放ち、ネネが攻撃する。2人の攻撃は小さな魔霧の王には全く効いていない。
「やっぱり効かないわよね..!」
「はーっ!」
ミニ魔霧の王が元の姿に戻る前に炎を使ってミニ魔霧の王を消した。魔霧の王は叫びを上げながら口からもあの溶ける液体を大量に吹き出してくる
その液体はシューと音を立てて床を溶かしながら侵食していく。このままではこの辺りは何もかもを溶かす液体に侵食されてしまう。
「これはとっとと拾って行くのが良さそううね!とりあえずはあの液体をとめないと!」
そう言って勢いよく飛び上がると頭に目掛けて剣を振り下ろした。その衝撃で頭は霧となって散らばり液体は止まった。液体のないところに着地したアリスは勢いよくキンギョクの方へと走り、キンギョクを手に取る。それに釣られてネネとミミも勢いよく走りキンギョクを手に取った。
「こうなったら隙を作って行くよ!」
「うん!」
「はい!」
「ですね!」
「行くよ!3人とも!」
「シュフウウウウウ」
そう言いながら魔霧の王はまた勢いよく全てを溶かす液体を噴出しながら迫り来る。それを避けてミミは矢で頭を射抜く。
その隙にアリスは再び炎の剣を使って一撃を加えて怯ませた。
「2人も早く!」
「うん!」
ネネとミミも急いで部屋からてて霧の中を進んでいく。後ろを向くと凄まじい勢いで迫ってくる。その追う途中であのネバついた液体を進行方向に罠を張る方に吐き出し動きを止めようとする。
「うそ!めっちゃきてるじゃん!」
そこに剣の一撃が入る。それはメルロだった。
「あなた!!」
「私は先に行こうととしましたが、なんだか手が滑ったみたいですね。まあ、手が滑るのはこれまででしょうがね」
手が滑ったなどと言っているが明らかに手助けをした。あれだけ敵だと言っていたアリスを助けたメルロは、「では、次のステージで待ってますよ」とだけ言って先に出口に向かった。
「なら!もう一度アレを!」
そう言って魔霧の王の方を向くそして剣を上に振り上げて勢いよく炎を纏わせる。そしてスキルの名前を上げながら剣を振り下ろす。
「スキル!!!獄炎葬!!!」
その炎は凄まじい勢いで魔霧の王を包み込む。どうやら聞いているようで、霧として散らばって消えてしまった。
「すごい!」
「よし!これなら!!!」
だがその散らばった霧はすぐに集まってで魔霧の王を生成する。
「うそ!?」
「もう元に戻ったの!?他のやつは戻るまでに時間かかってたのに!!」
「フォォォォォォォォォォォ!!」
そう言ってまた液体を吐き出す。今度は周りに一気に吐き出して周りのそこらじゅうの床を溶かして行く。
「もうこいつの相手してるわけにはいかなそうね」
「このまま逃げ切るわよ!」
「うん!
「はい!」
「時々後ろを向いて剣から炎を飛ばして来ないようにしながらなんとか入り口へと辿り着いた。入り口のある少し広めの部屋は霧がないのでどうやらあの魔霧の王は入ってこれないようでこちらまで追ってくる事はなかった。
「よお、戻ってきたか」
そう言いながら暇そうに入り口の近くで座っていたレミーが近づいてくる。レミーはどうやら霧の中に入らずにずっとここで待っているようだった。
なぜそんな事をしているのかはさっぱりわからないが、とにかく受かる気はないようだった。
「なに?何か用?ずっとそんなところでやる気なさそうにして何がしたいのか」
「用...まあそうだな?ちょっとしたゲームを仕掛けてやろうかと思ってな」
「ゲーム?」
そう言って腕を上げると、突然ミミがネネに向かっ矢を向けた。そして矢を放ち、ネネがそれを弾く。
「ちょ!何!?」
「ミミ!?」
「...まさか!」
「ああ、そのまさかだ。前に戦ったことがあっただろ?その時ちょっと弄らせてもらった。これでお前らで戦わせて負けた方のキンギョクを奪うって算段だ」
「そんなのアリなの!?」
「特にルールで禁止されてないからな」
「そんな...!なら私がこいつを..!」
そう言ってアリスが剣を抜こうとすると、「アリス。行って」と言いながらネネがミミに前に立つ。
「え?」
「これは私たちの問題。アリスは先に行って」
「でも!」
アリスはそう言うが、ミミは少し怒ったような顔でレミーを見ているので、アリスは何も言わずに「わかった」と言った。
「こんなところであなたに迷惑をかけたくないの」
「...わかった」
その言葉にアリスは出口へと向かった。それを見てレミーはニヤリと笑う。
「お話は終わったか?」
「ええ」
「妹を助けたいか?ならキンギョクをかけて来い!」