百五十七話 血塗られた闇の迷宮
「さあこれから2回戦目!参加者の皆さんには迷宮に挑んでもらいます!」
フィールドに集められた1回戦を勝ち抜いた猛者たちに、その進行役はそう言った。
「さて、あなた方にはこちらの扉に潜っていただきます!」
アリスが昨日のレミーのことを考えていると、司会者はそう言って目の前に鉄の少し大きめの扉を出現させる。その扉がギギギ...と言う音を立てて開く。
「ルールは簡単、制限時間内にこの迷宮から脱出するだけです」
「簡単そうだな」
「ですが!この迷宮には恐ろしい牛とヤギの番人が2体おりますのでお気をつけください。制限時間が過ぎると全員強制的に追い出されて失格になってしまうので注意です」
「へえ、なんか面白そうね」
「それでは...レディー...GO!!」
その言葉とともに中に入る。すると今までいたフィールドとは打って変わって赤い不気味な空の周りに壁に阻まれた場所に辿り着いた。
「おそらく迷路になってて脱出っていうのはそういうことね」
アリスはそんなことを呟きながら不気味な迷路を進んで行く。試しに迷路の壁を攻撃してみるが、やはりというべきかびくともしない。
「やっぱそうよね...」
少しずつ迷路を進む。だが出口と言えるようなものはもちろん簡単に見つからないし、同じような入り組んだ道が続くので今どこを歩いているのか全くと言っていいほどわからない。
「こんなのどうすればいいってのよ!」
そう叫びアリスは「はあ」とため息をつく。そんなアリスを影から狙っているものがいる。
「はあー!」
後ろからアリスに襲いかかって来る者を予知して咄嗟に後ろを振り抜いて剣で防ぐ。アリスはその人物の少しおかしな様子を見てレミーに操られている手先だと即座にわかった。
「1人だけなら!!」
そう言ってアリスは簡単にレミーの手先を倒し、先に進んだ。迷宮というだけあってかなり入り組んでいてかなり難解だ。
「こんなのどうやってゴールを目指せって言うのよ」
その次の瞬間、何やら大きな音が響いた。それは振り下ろされた大きな斧だった。
その斧の持ち主はアリス達の1.5倍ほどの大きさの顔が牛で体が筋肉むきむきの魔物のような生物だった。
「まさか、これが...番人ってやつ?」
「ムォォォォォォォォ!!」
牛のような鳴き声を上げながら斧を今度は横に振る。それをアリスは自分の剣で防ぐが、その牛の力に負けて壁に吹き飛ばされ口から血を吐いた。
「ぐっ!」
「ムォォォォォォォォ」
牛の魔物は今度はドシドシと大きな音を立てながらアリス方へと向かう。牛が斧を振り下ろした隙を見て斧の上を勢いよく駆け上がり大きく飛び上がった。そして一撃を加える。
「効いてない!」
「ムォォォォォォォォ」
その攻撃は全くと言っていいほど効いておらず、牛の魔物はそう呻きながら手に持っている巨大な斧を振り下ろす。それでもなんとかダメージを与えようとする。
「くっ!体が硬くて全然入らない!」
「この魔物は1回戦で手に入れた武器では物理的に倒せないようにできている。だから早く逃げた方が...」
「ムォォォォォォォォ」
そう叫びながら斧を振り回す牛の魔物。アリスが逃げようとするが、その進行方向を塞ぐように牛の魔物が迎え撃っている。
「くっ!」
その時、牛の番人の後ろから誰かが攻撃をする。その攻撃に牛の魔物は呻くことなくその攻撃してきた人物の方にギロリと赤い目を向けた
「メルロ!助けに!?」
「勘違いしないでください。こいつが邪魔なのでどけようとしただけです」
「ああそう」
少し不満そうにそう言ったアリスは、何やら提案をする。
「ねえ、提案なんだけど、こいつがいると脱出に邪魔になると思わない?」
「ええ、それが?」
「だったら、協力してこいつをぶっ倒した方がいいと思うんだけど」
「それも悪くないですね」
その光景を見ていた観客席からは大歓声が湧いた。もちろん今までこの牛の魔物を含めた2体の番人を倒したものなどいない。
「さ、行くわよ!」
「ええ。足を引っ張らないでくださいね」
「わかってる!
そう言って2人は剣を構えた。その光景に観客は大喜びだ。複数のモニターからその様子を見ることができる。
「おおおおおおお!!!この番人は今まで倒した者のいない!!まさかそんな番人を倒してしまうのかぁぁぁぁぁ!?!?」