百五十話 新たなる戦いへ
「う...う...」
「本当に何なの?こいつら」
そのうめき声だけを出す男達を見てテティはそう呟く。その姿はまるでゾンビかのように呻くだけで自我というものは存在していないようだった。
「アリス!」とりあえずちゃっちゃとやっつけちゃって!」
「そうだね」
そう言ってアリスは走り出すと、剣を使ってその怪しげな男達を倒していく。もちろん剣自体は峰打ちのため、死にはしない。すると男の一人がアリスに抱きつくように体を密着させて襲いかかってきた。アリスはそれを振り解こうにもなかなか離れない。
「アリスさん!」
そう言いミミは自分の杖を使ってゴーレムを呼び出しアリスに張り付いている男を引き剥がし向こう側に投げ飛ばした。
「大丈夫ですか!?」
「うん!はーっ!」
峰打ちで残りの人間を全て気絶させた。アリスは「ふう」と一息ついて剣をしまう。
「何なの?この人たち」
「さあね?アンタの事だからまた変な事に巻き込まれてるんじゃないの?」
「巻き込んだアンタに言われたくないわよ!」
テティのそんな言葉にアリスが「はは...」と半笑いしていると、襲いかかってきた人間達が立ち上がり、再び襲いかかってきた。
「ウググ...」と言うような何だか苦しそうな声を出して勢いよく襲いかかってくる。
「はあ!?またくるの!?」
「アリスあれ!なに?」
その様子のおかしい男達は何だか体から薄らだが白い炎が湯気のように出ているのが見えた。
「あの白い炎どっかで...」
「またきます!」
「う...うう...!!!」
「この!」
ネネが槍でおかしな男を突き刺そうとすると、アリスが咄嗟に「ダメ!」と叫ぶ。その声にネネは攻撃から防御に転じ、攻撃を防いだ。
「おそらく何かに操られてるだけ...だと思うからここは逃げた方がいい!」
「お姉ちゃんアリスさんの言う通りにしよう!」
「...ったくわかったわよ!相変わらずお人好しね!あんたは!!」
そう言ってなんとか男達を掻い潜り、抜け出す事に成功したアリス達はそそくさと走っていった。おそらく主も近くにいるはずなので、そいつを倒して早く解放させてあげようとアリスは考え、「解放できるまで我慢しててね...」と呟き走って行った。
しばらく離れて後ろにあの怪しげな男達が追ってないことを確認して一同は安堵の息をついた。
「何だったの?あいつら」
「わからない。でもあの白い炎は憶えがあるの」
その白い炎はゼロという男が使ってたものと同じだ。ゼロと言う男は元は竜で、人間を滅ぼし魔物だけの場所を作ろうとする危険思想の人物だ。そして事あるたびにアリスの前に現れて対立していた。
「でもまあ、アリスの前にまた立ちはだかるなら何度でもぶっ飛ばしてやればいいのよね!!」
「そうねテティ」
「さ、目的地へはもう少しよ。行きましょ」
「うん」
「ここが、目的の場所よ」
その街は真ん中にデカデカと闘技場を携えた大きな街だった。外壁に沿って色々な店が円を描くように設置してある。アリス達が出る予定の大会が始まるからか、半年に一度限りの大会というだけあって街のあちこちで施設の他に屋台などの準備も始まっている。
「わあー!すごい!!」
「そんじゃ、わたしたちはエントリーしてくるから」
そう言ってネネとミミは手を振って真ん中にある大きな闘技場への入り口を探しに行った。
「さて、私たちは少し時間あるし、観光でもしてきましょうよ」
「そうね」
そう言って店の並ぶ内周をぐるりとまわっていくことにした。屋台自体もさまざまな種類のものが準備されていて、これからこれらが立ち並ぶのは楽しみだ。
「ねえアリスお腹すいたー」
「じゃあどこかで食事にでもしましょうか」
そう言ってアリスとテティが歩き出そうとした時、「おい」と声をかけられた。
「えっと...」
「久しぶりだなアリス。確か...あの魔物の国だったかであった依頼か?」
そいつは魔物で、怪しげなツノと鋭い牙を持っていた。アリスは「あ...あなた...!」と言ってその魔物の姿を見る。そして緊張感の走る中少しの静寂の後にアリスが口を開いた。
「誰だっけ?」
そのまさかの言葉にその魔物は「はっ?」という声を出した。