百四十六話 美しき兄弟愛
「いくよ...兄さん」
そう言いながら剣を構える。どうにかして治す方法を試行錯誤するユオだったが、なかなかいい案が思い浮かばないでいた。
「ふっ!」
ユアが剣を振ると凄まじいしい衝撃が起こる。そんな衝撃にも負けずにユアの方へと向かっていった。
「はーっ!!」
「ふん!」
迫り来るユオにユアは剣で簡単にはじき返してしまう。お互いに剣が混じり合う姿をノアは楽しそうに「そこだ!いけ!」とヤジを飛ばしながら観戦している。
「兄さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
そう言いながら何度も剣を混じり合わせるユアは一瞬の隙ができたのを見て渾身の一撃を加えようとする。だが、その一撃を加えようとすると兄の姿が一瞬見え、寸前で止まってしまう。
変わってしまっていても兄の姿は兄の姿だ。大好きな兄を攻撃するなどできるはずがない。
「ふん!」
そんなユアに容赦なく剣を突き立てる。その剣は腹に刺さりそこから血が出てくる。
「っ...!」
「ふん..」と言いながら続けてユアの攻撃は続く。受けた傷を片手で抑えながらもう片方の剣を持った手でなんとか攻撃を躱す。
「タス....テ」
「え?」
「カイホ...して」
「兄さん!?」
ユアから少し何か声が聞こえるような気がする。それはまるで助けを求めているような...。
「タスケテ...カイホウして...」
そう言いながらユアは涙を流していた。完全に取り込まれたというわけではなく、どうやらほんの少しだけ意識があるようだ。
「兄さん...やっぱり...こうするしかないの?」
ユオはそう問いかけるがユアはもうすでに人と言えるような状態ではなかったため何も言わなかった。ユオは剣を強く握りしめる。
「はあああああああああああああああああああああああ!!!」
その勢いついた一撃はユアが剣で防いでもそれすら打ち砕き大きな竜の衝撃を纏いながらユアの体に大きな傷をつける。
「ウガアアアアアアアアアアア!!」
「兄さん!すぐに解放してあげるからね!」
そう言いながらユオは勢いよく飛び上がりさらに一撃を加えようとするがユアも負けじと剣で応戦する。
そんな光景をアリスは「すごい...」と言いながら見ていた。
「アリスもう大丈夫なの?」
「まあ、だいぶ動けるようになったし」
「じゃあ、早くユオに加勢を...」
そうテティが急かそうとするがそんなテティにアリスは首をゆっくりと横に振る。
「兄弟のあの戦いに入るのはやめておいた方がいいわ」
「アリス...」
2人はそんな会話をしながら兄弟の姿をみる。
「これはあまり使いたくなかったけど...!兄さんを救うためだ!」
そう言いながらユオは「はああああああああ!!」と言いながら剣を地面に突き刺す。すると地面が割れ、その割れ目が勢いよくユアの方へと向かっていく。
ユアの方の地面へとたどり着くと勢いよく地面から衝撃が放たれた。
「天現竜動ォ!!」
そのユオの言葉に衝撃が竜の形を成してその姿はまるで地から龍が現れたようだ。グググ...と言いながら弱っているユアに最後の一撃を加える。
その一撃には全ての想いがこもっていた。兄と過ごした日々、兄との思い出、そして兄との...。決別をするような思いでユアは勢いよく剣を振るった。
「グオオオオオオオオオ!!」
その一撃でユアは叫びながらその場に倒れる。それを見たユオは急いでユアの方へと向かった。
「兄さん!兄さん!!」
「ユ....オ...」
「兄...さん」
駆け寄ったユアは何度も何度も兄の名前を叫ぶ。
「兄...さん」
「あ...りが...と...う」
そうそのような言葉を残し、最期に笑顔をを見せて動かなくなってしまった。そんな兄に「っ....」と涙を流しながらもなんとも言えない声出す。そしてそのままユアは息絶えた。
「兄さぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
ユオの慟哭が聞こえる。そんな様子を見ながら、ノアは「いやーすごいね!やっぱ兄弟愛ってもんは美しい」
その感動的な場面に茶々を入れるようにノアが拍手をしながらやってくる。
酷い行いに「あんた!こんなことして心が痛まないの??」と激昂するテティにノアは、全く悪びれる様子は全くと言っていいほどなかった。
「面白かったからいいじゃない」
「あんた...」
「言ったかどうかは忘れたけど君らを連れてきたのはただの暇つぶしさ。ゲームの世界があってもキャラクターがいないとなんの意味もなさないからね。
「最っ底!」
「好きなように言ってくれていいさ」
「なら、ここであなたを倒す」
そう言って立ち上がったアリスはノアに向かって剣を向ける。
「おお、それも面白そうだね」
「手ェかすぜアリス」
そう言いながら隣にきたヴェラード。そしてヴェラードと共に業魔王と戦ってた全員が参戦する。
「この戦いを終わらせればゲームクリアってわけだ。あんなんじゃ肩慣らしにもならなかったしな」
「ふーん、じゃあみんなでおいで」
「いいのか?すごい自信だな。こっちは30人ほどいるんだぞ?」
「うん。その方が暇つぶしになるからね」
「あなたのような人の心を踏み躙る人は許さない」
そう言ってアリスは険しくノアを見た。
「うんうん、じゃあ来な!!」