百四十五話 創られた物語(ストーリー)
「何!?」
その光はしばらくユアを包み込み、しばらくして消えた。そして光が消えると共に、ユアはおかしな姿に変わっていた。そのユアはまるで化け物のような姿になっていて周りに光を纏っている。
「兄...さん?」
その姿は全身真っ白い姿でもうそこにはユアの面影すらない。
「これは一体...」
「もう、こいつは光の戦士となったよ」
「誰!?」
その奇妙な声と共に現れたのは1人の女。それはアリス達をこの世界にゲームと称して呼び、事あるごとにちょっかいを出したりしていた世界創設士ノアだった。
「あなた!!!」
「やあ、久しぶり」
「前はもっとこう...そんな喋りかたじゃなかったような」
「ああ、あれはただのそれっぽくやってただけさ」
「ところでユアはどうなったの?」
「ちょっと彼にはこの物語面白くするちょっとした役を担ってもらうよ」
「はあ?何を言ってるの?とっとと元の姿に..!」
そういうとノアは「もう無理だよ」とだけ言った。
「無理ってどういう!?」
「彼を助けるにはもう彼を葬るしかないって事さ」
「はあ?なんで...!」
「だって君らの物語をずーっと見てたけど結局最後が同じでつまらないじゃないか!」
「はあ?」
「闇魔の時だってオノマトピアの時だって魔物世界の時だってあの最凶の双子だっけ?の時だって...あとはーまあいいや。全部結末が同じじゃないか。ラスボス倒してはい終わり。ラスボスと仲直りしました!ラスボスはどこかに連れて行かれました!」
最初はそうコミカルに言っていたのだが、ノアの顔はつまらなそうになり、「退屈だ」とだけ言った。
「最後に死に別れてああ!悲しい!これが少ない!この物語には全然ない!あったとしても数回程度だ。私はそっちの方が感動できて楽しいんだけどね」
「そんな理由で!!!」
「いけないかい?だってこれは私の創り上げた物語。少しぐらい手を加えたってバチは当たらないじゃないか」
「あなた...!」
そう言ってノアの方にアリスは向かおうとするが、先ほどのダメージでフラフラな状態だ。
「...ガ...ア...」
姿が変わったユアはもう喋ることすらままならなくなり、ユアに襲いかかってくる。
「ちなみにパワーもかなり上がってるから、気をつけてねー」
「兄さん!どうにか元に戻して...」
「あー無駄ってさっき言ったじゃないか。だからもっと素晴らしい兄弟愛ってやつを見せておくれよ!!」
「っ!この!」
「ウガアアアアアア」
そう言いながらユアは襲いかかってくる。先ほどとは比べ物にならないほどのパワーに圧倒されてユアは押されていく。
「兄さん!」
「ウグ...グ...」
剣と剣がぶつかり合い激しい衝撃が巻き起こる。
「龍破魔光!!!」
竜となった衝撃がユアを襲うユアは再びユオのスキルの中に消えていったが、ノアの強化の力なのかあまり効いている感じがしない。
「ジュグウウウウウウ!!」
ユアは奇妙な叫び声をあげて自分が身に纏っている光を増幅させる。
「兄さん!!」
「おいおいなんかあっちすごいことになってるぞ!」
業魔王と対峙する1人がユアの方を見てそう言う。だがこちらもこちらで業魔王との戦いの集中しなければならないのですよそ見をしている暇はない。
「くるぞ!」
その声ともの豪魔王の攻撃がくる。腕を振り下ろした攻撃はその衝撃で数人ほどが吹き飛んだ。
「わーすごい!」
「感心してる場合じゃねー!」
アンバーグはそう言いながらダジャレで氷引ついた矢を放つ。だがあまりダメージはないようだ。
「くそ!どうすれば!」
「おいお前達!」
その時後ろからそんな声が聞こえてくる。そこに居たのはヴェラードだった。
「置いてけぼりにしやがって!!!許さねえからなああ!!!!」
置いてかれたのをかなり怒っているようだ。
「あん?何だ?あのでけえの」
「グオオオオオオオオオ!!」
「なんかわかんねえけどとっととぶった斬ってかわい子の所でも行くか!」
そう言ってヴェラードは走り出して大きな剣を振り上げる。そして高くジャンプをしてその剣を振り下ろした。
「ギュクァアアアアアア!!」
業魔王はヴェラードの一撃がかなり効いたからかかなり大きな叫びを上げる。
「さあもう1発!」
業魔王は口からまたあの光線を空中にいるヴェラードに向かって吐く。空中では避けることはできず、その光線に向かってまた再び剣を振り下ろす。するとヴェラードは光線を押して言って完全に無効化してしまった。
「すごい...!」
「俺たちも畳み掛けるぞ!」
そう言いながら業魔王の方に向かう。そしてヴェラードに続いて業魔王に向かっていく。
「おーらよ!」
そのヴェラードの重い一撃は今までの攻撃とは違い業魔王にかなりもダメージを与えている。
「やっぱすげえなあ...」
「この程度か?図体でかいだけじゃねーか!」
「そう言ってさらに一撃を加える。よろめいたところに一斉にスキルを使い一点を狙う。
「んじゃ、最後に一撃!うおおおおおおおおおおおおお!!天・波・動・冥!!!」
飛び上がったヴェラードはそう言って業魔王に勢いよくスキルを叩き込んだ。
「ウグワアアアアアア!!!」
そう叫んで業魔王は倒れた。
「倒した!!」
「うおおおおおおお!!」
その喜びの声が響いた。
「おいお前ら!見捨てやがって!」
「それはその...」
そんなやりとりを少し遠くで見ていたアリスは立ち上がりおかしくなったユアを見る。だが体はフラフラで戦える状況ではない。だがフラフラと千鳥足でユアの方に行こうとしたアリスに「お前は来るな!」とユオの声が聞こえる。
「俺が決着をつける。手を出さないでくれ」
「おおー兄弟愛っていいねえ」
ノアはそう言いながら楽しそうに戦いを見ている。
「兄さん...本当に治らないのかい?」
「無駄無駄。無理だって言ったでしょ?一緒に息の根を止めないと」
「...いや、絶対に助け出して見せる!」
そう言ってユオは剣を握りしめた。