百三十八話 地下労働施設から脱出せよ！
「いくよ！はあーっ！」
そう言ってアリスはギランに攻撃を仕掛ける。ギランはアリスの攻撃をひょいと避けてカウンターを仕掛ける。
「っ！」
そのカウンターを受けたアリスはそんな呻き声を小さく出したがすぐに木刀をギランへと振り上げる。
「そんなものか！？」
「はあーっ！」
その攻撃はギランには届かずギランの木刀はアリスに少し大きめのダメージを与えた。
ギランは腕が長くリーチが長いためアリスにとっては不利な相手だった。
「あのアリスが圧倒されてる...」
「当然だ。ボスの実力はかなりのものだからな」
「アリスだって色々な死闘を繰り広げたんだ！負けるなー！！」
アンバーグのその声援でアリスは少し勇気をもらったのか連続でギランに攻撃をしかけていく。
ギランも「ほおやるなあ...」と言いながら木刀を振り下ろしその衝撃でアリスを遠くに吹き飛ばす。
「ホラホラ！どうした！」
「っ...！」
また防戦一方になるアリスに容赦なくギランは攻撃をしかけていく。
「っ...！？」
「何！？わからないけどチャンス！」
本調子だったギランが突然苦しみ出す。そこにチャンスと言わんばかりにクロエが一撃を加える。
「ぐぬぬ...」
「そこだアリス！やっちまえー！！」
アンバーグはそう叫ぶがアリスはあまり攻撃をしなかった。
「あなた病気がどうって言われてるらしいけど」
「グググ...そんなもの気にするな！これは勝負だ！」
「勝負でも気にしないなんてことはできないよ」
「っ...う゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
そのギランの苦しみは急に強くなる。それを見た手下達が心配そうな顔でギランの方へと駆け寄る。アリスも「だ、大丈夫？」と声をかける。
「病気って言ってたけどやばいんじゃないの」
「まあな...」
「戦いはどうなるんだよ！」
「お前の勝ちでいいさ...ぐっ！」
そう言ってギランは苦しそうな顔になる。
「今すぐ薬を...」
「無駄だ！」
「無駄って！でも療養してたんでしょ？」
「療養といっても完全に治してくれるわけじゃない」
「じゃあ...！」
「無駄だ。ここはあのユオとか言う奴が仕切っている。あいつの説得がいるだろうがまず無理だろう」
「やっぱりここから出てあいつを倒さないとね」
そう言うと拳を握り初めて上を見る。上の方はかなり天井が見えないほど高い。
「余計なことはするな！俺の死の場所はここって決まってるんだ！」
「いえ、そんなことない。絶対あいつを倒して見せるわ」
「よっしゃアリスその息だ！」
「それで、どこかに出口はないの？」
そう言うが誰もが顔を見合わせて何も言わない。少しして1人が口を開く。
「鍵が必要だがその鍵は厳重に関心されていて取れないんだ」
「あなたここの看守を従えてるんでしょ！それぐらい...」
「無理だ。いくら従えてるとはいえ看守もユオの命令には逆らえない。逆らったらどうなるかわからないから、基本は自由にさせてるがそう言う命令には従ってはくれない」
「そう...」
「そうだなあ...なにか看守達を惹きつけるすごい事でも起これば...」
「注目ーーーーーー！！」
その時その声がその場所に響く。それによって誰もがそっちの方に顔を向けた。そこにはルナ、それにそのお供のレフ、ライの姿。
「ここに仰られるルナ様はお前達と遊びたいようだ！」
「わー何これすごーい！」
ルナは無邪気に獣の耳を動かしながらそこらじゅうにあるものにとても興味を示している。
「なんだお前！どっから入ってきた！！」
「なんだこのケモノ娘は！」
「とりあえずあいつを止めろ！！」
「ボクと遊んでくれるの！？やったー！！」
そう言いながら看守達のところに突っ込んでいく。そして自分の杖で回復しながらレフとライが看守を倒していく。
「この騒ぎを好奇としたアリスはアンバーグとそこそこと別の部屋へと向かっていく」
この騒ぎを好奇としたアリスはアンバーグとそこそこと別の部屋へと向かっていく。ルナが大暴れしてくれているおかげで全員がそっちの方向に向いるため難なく行けた。
「なあその鍵の場所ってのはわかってるのか？」
「うん、一応場所は聞いた。そこに私たちの武器もあるらしいから取りに行こう」
「ああ」
その行く途中におそらく医療施設が見える。そこにはユアが寝ていて、それを見たアリスは小声で「絶対助けるからね」と呟いた。
「あそこか」
そこには1人だけ看守だけがいて突破するのは簡単そうだ。
「2人がかりなら1人程度なら大丈夫のはず」
「よし、行くぞ」
後ろから襲いかかり、うまく倒して出口の鍵と武器を奪い取る。順調に進んでいき出口まで進む。
「あそこだ！」
「あれ..？あれって」
「クク...見つけた！」
そこにいたのは、凶器とも言えるほどアリスに執着し、何度も何度も邪魔をしたリグだった。
「お前っ！まだ生きてたのか！」
「アンバーグが変なフラグ立てるから」
「もう...今は相手してる場合じゃないのに」
「へへへアリスゥ！」
「しゃあない！」
そう言いながらアンバーグが先行して「先に行け！！」と声を張り上げる。だがアリスの体は動かなかった。ここで先に行くと、またあの事になりそうだからだ。あの光景が今でも脳裏に残っている。魔物世界で死んだアンバーグのあの姿を。
今こうやって生きているから良いのだが、またああなったら再び同じように生き返ると言う保証がどこにあるのか。もしかしたらまた...そうぐるぐるとアリスの頭から離れないでいた。
「何やってんだ！お前は救うモンがたくさんあるだろ」
「...！」
そのアンバーグの言葉ではっとしたアリスは拳を握り締め「わかった！」と言い走り出す。今は考えている場合ではない！そう自分の思考に決着をつけてアリスは走り出した。
