百三十七話 労働場のボス
「お前ら!働けえ!!」
その掛け声ととともに仕事が始まった。アリスたちは労働を始める。
「キビキビ働け!おい!」
「労働させやがって..」
アンバーグのそのセリフが聞こえた見張りは「何か言ったか?」と睨みを効かせる。
「い、いや!」
「で?どうするの?」
ヴェラードにそう言うとヴェラードは任せろと言いながらサムズアップをする。
「イタタタタタタタタタタタ!!!」
その時ヴェラードがそう言いながら体を丸くしだす。これはまさか...とアリスは嫌な予感をしていた。
「どうした?」
「腹が!腹がぁ!!!」
そう言うヴェラードに担架が運ばれてそのままヴェラードを連れて行った。
「あいつまさか、病人のフリとかじゃないよな?」
「多分そうだと思う」
こういう時によく使われる病気のフリをする奴だ。まあ結果はそのまま連れて行かれて終わった。
「何がしたかったんだ?あいつ」
「さあ?」
「お、ボスが帰ってきた!」
「ボス!!」
誰もが向こうから向かってくるその大男にそう言う。坊主で頭や体にたくさんの傷がついている。
「なんだ?あいつ」
「お前ら言葉に気をつけた方がいいぜ?あの方はここのボスだ。しばらく病気で療養していたが、帰ってきたんだ」
「おい」
「はい!」
アリス達を奴隷のように使っていた見張りがその大男に向かっていきまるで犬が尻尾を振るかのように何かをねだっている。
「ボスはは看守すら手懐けてるんだ」
「へえ」
そのボスと呼ばれている大男が「お?」と言いながらアリス達の方を向く。
「なんだあ?新入りか?」
「ええ」
「ちんちくりんだなあ!はっはっは!!」
「なんだと!?」
大男が睨みをきかせると喧嘩絵を売ろうとしていたアンバーグ「ひっ!」と縮こまる。
「なかなか威勢のいいガキじゃあねえか」
「あなたがボス?」
「ああ。ギランだよろしくな新人」
「私はアリス、こっちはアンバーグ」
「こいつにはこの場所のルールってもんを教えてやらねえとな!!」
そう言ってアンバーグを思い切りぶん殴る。アンバーグは大きく吹き飛ばされた。
「アンバーグ!!」
「いてて...手厚い歓迎じゃねえか」
「オラお前ら!自己紹介タイムは終わりだ!!とっとと仕事に行け!!」
そのギランという男はてしたが用意したピカピカの椅子に座ると足を組んで偉そうに見る。
「アンバーグ大丈夫??」
「ああ、なんか偉そうなのが出てきたな」
「ええ、とりあえず脱走は少し先送りね」
「おい、お前!アリスだっけか?」
そう言いながらギランがアリスに近づいてくる。そしてアリスの顎を指で掴むとクイっと自分の方へと顔を向ける。
「いい女じゃねえか」
「そりゃどうも」
「俺の女になりゃ楽な生活させてやるぜ?」
それを聞いたアリスは即答で結構です!と言い作業に戻る。それを聞いて「はあ...そうか」とギアスが少し残年そうにため息をついた。
「さあ昼だお前ら!!」
その合図とともに働いていた者たちはゾロゾロと移動する。移動した場所は作業所に隣接した鉄でできた大きめの施設。その施設では大きな鉄の鍋が置いてありそこからいい匂いが漂ってくる。
1人ずつ銀色のトレーと皿を2つ取るとその大きな鍋に並んだ。しばらくして自分の番になるとさらに赤いスープとパンが2つ置かれる。そしてそのまま席に行こうとすると...。
「おい」
「え?」
突然ギランに呼ばれたアリスはそのままギランの方へと向かう。するとギランはアリスのスープを半分ほど自分のところに入れ。パンを一つ取り上げた。
「あっ!何を!」
「これがここのルールだ。ボスに食事の半分を渡す事になっている」
「そんな!」
「何か文句あるのか?」
「いや...」
「ならとっとと消えろ」
こいつを相手に回すとここにいる奴ら全員を敵にするということはアリスもわかっているのでここは渋々退散することした。
「あいつ、あんな見張りを手懐けられるならとっとと出ていきゃあいいのになんでここにいるんだ?」
アンバーグそう呟くと近くにた仲間がその質問に答えてくれる。
「ユオ様が許さないからな。あの人はかなり厳しい人で、賄賂なんて貰ってるの知ってたらこっちに移されるのがわかっているから敢えてこの場所に引き留めてるんだ」
「なるほど...」
「まずはあいつをどうにかしないとな」
「そうね...」
「なあおい、アリスだっけか?」
遠くからまた声がかかる。その声の主はもちろんギランだ。
「俺と戦ってみないか?お前はなんだか見込みがある。いいだろ?」
「お、おう」
見張りの許可も得てアリスはギランと戦うことにした。2人はは外に出るギランが隅の方に隠してあった武器をジャラジャラと床に放る。そのばら撒かれた武器はどれも木刀ばかりだ。
「これを使え。これはまあ練習用の木刀だがな」
「わかった」
アリスは自分の剣を見つけるとそれを手に取る。剣を握りしめながら。アリスはやはりこの剣がしっくりくると改めて思う。
「さて、俺はこれだ」
それは大きな棍棒だった。その棍棒をブンブンと回し地面を突くとガンと大きな音が聞こえてくる。
「さあ、始めようか」