百二十八話 ラブ・ファイト
「なに...ここ」
アリスは椅子に座りながら考えていた。連れていかれた男が放った言葉。「地下にとんでもないものがある」というもの。その言葉が引っかかりずっと考えていたのだ。
「テティもいないし...もしかしたらそこにいるのかなあ?」
そう思いながらも、どうやってそこに潜入すればいいのか...。まあ、もちろん先ほどの男のように自分から連れていかれるのが早いだろう。アリスもその辺りにいるやつを捕まえて同じような事を言おうとする。
「ねえ、ここの地下...」
だがアリスがそう言おうとした時、そいつに口を塞がれた。そして路地裏の方に連れて行かれた。そいつの手が口から離れるとぷはあ!と言いながらその男をみる。ダンディな男で坊主だ。
「何!?」
「お前何やってんだ?捕まりたいのか?」
「まあ、それが目的だったんだけど」
「そんな事して...何が目的なんだ?」
アリスは今まで起こった事とテティを探すことを伝える。するとその男は「ほー」と言いながら効いていた。
「ほう...そのテティという子を探しているのか」
「そう」
「そうだ、名乗ってなかったな。俺はライムだ」
「私はアリスよ」
お互いに自己紹介をすると、話を戻す。
「だったらラブ上位に入ればいいんじゃないか?」
「ラブ上位?」
「そう。ラブ上位に入れば特定の人を呼び出すことができるんだ」
「そうなの!?」
「ああ」
「それにはラブがたくさん必要だがな。そうだな...ざっと1000は要るな」
ラブは良いと思われたらもらえ、悪いと思われると減るのだ。そんなものを1000も集めてられないだろう。
「そんなの...」
「まあ安心しろ。簡単に稼ぐ方法がある。まあ、ここのリーダーには知られていない...というかこんなもの知られたら大変だけどな」
「それって」
「ラブ・ファイト」
「ラブ・ファイト?」
「自分のラブをかけて戦う場所だ」
「そこに連れてって!」
「ああ。わかった。ついてこい」
「うおおおおおおおおおおおお!!!」
連れてこられた場所は地下だった。階段を降りると扉があり、扉を開けると、そこでは四角形のバトルフィールドがあり、それを囲むようにたくさんの人や魔物がいる。フィールドには2人の人物が戦っていて、その激しいたたかいに歓声はさらに大きくなる。
「すごい...」
アリスがそう呟きながら見ていると、 フィールドに立っている2人のうち、片方がボロボロになって倒れた。そこらじゅう傷だらけだ。
「今からあそこで戦ってもらうが、覚悟はいいか?」
「...うん」
フィールドでは傷だらけの男が何度も立ち上がり立ち向かう。だが何度かやるうちに倒れてしまった。もうそこらじゅうが血だらけで戦えるという状況ではないほどだった。そいつは虫の息の状況で連れて行かれる。
「あそこまでやるの?」
「ああ、ここはイカれや奴らの戦場。あれぐらいは普通さ。どうした?びびったか?」
「いや」
ここにきた時点でアリスには覚悟を決めていた。テティを救うためだ。いくらでも立ち向かう気でいた。
「さあ、行け」
「うん」
アリスは観客席の間にある階段を降りていく。そしてフィールドまで行くと、少しある段差をよじのぼり剣を構える。勝利した大男は「なんだあ?」と言いながらにやついている。身長差もあり自分より小さいアリスに余裕綽々という感じだ。
「私も飛び入り参加でやらせてもらう」
「いい度胸じゃねえか女のくせに!!はあああああああああ!!!!」
迫り来る大男を一撃でアリスは倒す。その瞬間観客は大盛り上がりになった。
「うおおおおおお!!すげえ!」
「何だ??あいつ!!!」
突如現れた謎の少女に盛り上がりは最高潮にまで達する。そこからアリスは次々と現れる敵を倒してはもっているラブを1つ残して全て奪い去った。多いもので30個ももっているものもいる。これなら何回も戦えばすぐに溜まりそうだ。
「少し休んだらどうだ?」
ライムのその言葉で休むことにした。フィールドから降り。近くにあったパイプ椅子に腰をかける。
「全戦全勝じゃないか」
「まあね。このままいけば余裕かしらね」
「アリス!」
聞こえてきたその声との方を向くと、そこにはアンバーグがいた。
「何やってんだ?」
「そりゃあ、手っ取り早くテティを救う方法を試してるのよ」
「お前知ってるのか?これが違法だって!見つかったらやばいって!」
その言葉にアリスは冷静に「そうなんだ」とだけ言う。
「そうなんだってお前!!」
「初めて知った...けど止める気はないよ?私はテティを救うんだもん」
「お前...」
「それはじゃ、もう少し行くわよ」
「ああ」
そう言いながらフィールドに向かって行くアリスをただアンバーグは見ていた。