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百二十一話 アナザー・ホール


「今日もいい天気」


「そうねー」



青空の下、テティと一緒に街を歩いていた。今日は特に用もなくブラブラと歩いているという感じだ。道ゆく人を見ながらその横を歩く。向こうのほうでは楽しそうに話しているカップルの姿が見える。



「どこに行く?」



「どこ行こうか」



「やい!アリス発見!!勝負だ」



「またあんた達?」



目の前に立ちはだかるマックスヒーローズの3人にテティはそう言いながら嫌そうな顔をする。「勝負だ!!」と言いながらアリスの方を指差し自身ありげにお前を倒すと高らかに宣言した。



「あんたたちに構ってる暇はないのよ」



「そう言ってあげないの。それで?何がいいの?」



「そりゃあもちろん...直接対決だあああああ!!」



そう言いマブは飛びかかる。だがアリスは一瞬にしてマブを打ち倒すと一緒にいたアルとホーは「リィィィィダァァァァァァ!」と言いながら心配そうにリーダーのマブの元へと駆け寄る。



「さすがアリスね」



「まあこの3人には負けないよ」



「そうね」



「なんだと!!」



ムクっと起きてきてマブはそう言いながらまたアリスの方へと向かう。だがまた一撃でやられてしまった。そしてアルとホーの「リィィィィダァァァァァァ!」と言う声。



「クソ!覚えてろよ!!」



マブたちは去っていった。何だったのだろうか?と思いながらもアリスはまた歩き出す。




「ねえ、あれ何?」



「ん?」



テティがふと空を指差す。そこには何やら空にヒビのようなものが入っているのが見えた。そのヒビはピキッという音を立てて少しづつ広がっていく。そしてしばらくしてバリン!!と言うような我るような音がして空に黒い穴が空いた。その穴は黒ずんでいてその黒色以外は何も見えない。そしてブラックホールのようにあたりのものを勢いよく吸い込み始めた。



「なに!?」



「すごい勢い!吸い込まれる!!」



その吸い込みは凄まじく物や人をどんどんと吸い込んでいく。テティほどの小ささなら簡単にこの凄まじい吸引に持って行かれてしまう。アリスはなんとかテティを抱き抱え近くにあったポールを掴み吸い込まれないようにする。だがテティの手が離れテティはその穴に吸い込まれてしまった。「テティ」と叫んで手を伸ばすが吸い込まれていってしまった。



「待って!!」



「アリス!!!」



「待って!!!」



そんな言葉をかけてもテティは黒い穴の中に消えていった。伸ばした腕を下ろす。その穴はしばらく吸い込むと、閉じて全く見えなくなってしまった。アリスはただその何もなくなった青空を見ているだけの



「ああ...」



「アリス!!無事か!!」



駆け寄ってきたピロンはそう言うがアリスは途方に空を見ているだけ。テティが居ないのを見て全てを察したピロンはアリスを無理やり立ち上がらせる。



「ゲッゲッゲ、お前らしくないな。そんな立ち尽くしているなんて」



「だって...だって...」



「お前さんはいつも困難を打ち破ってきたじゃないか。違うか?」



「それは...」



「あれの行き先を知りたいか?知りたいだろう?」



「行き先...」



何を言っても上の空のアリスに「はあ...」と言うため息をついてピロンは胸ぐらを掴んで壁に少し強めにぶつける。



「しゃんとしろ!!馬鹿者!!お前がそれじゃテティを救えないぞ!!」



「っ...!救う方法があるの!?」



放心の状態から蘇ったアリスを見てピロンは嬉しそうな顔になる。



「あれは『アナザー・ホール』と言ってな。アナザーへと繋がってる」



「アナザーって!」



アナザーはここにないもう一つの未知なる世界だ。ユオの兄もそこに消えていったと言う話だ。そんなところにテティはいるのか...と思うアリスはピロンの両肩を持ちながら「どうやったらいけるの!?」とユサユサと揺さぶる。揺さぶられたピロンは落ち着けと言いながらその揺さぶりを止めさせようとする。



「そのアナザーの研究をしていると言う知り合いがいてな。それは魔物の国という場所にあるのだが...」



「魔物の国って!」



前にホワイの杖の争奪で行っているので知っていた。ピロンは「話が早く助かる」と言うとついてこいと言う。その魔物の世界に行くにはその扉を召喚する必要があり、バーリムなどがそれを使える。



「実はその扉を召喚する杖を持っていてな..たしかこの辺に...あった!!」



大きなゴミ箱の後ろをゴソゴソとして一つの杖を取り出す。誰もいない事を確認し。その杖を振ると大きな門が姿を現した。



「すごい...」



「さあ...行ってこい。知り合いのところにすぐ着くようにしたからな」



「ありがとう」



「お礼などいらん。救出したらまた来い。今度は安くいいもんを売ってやる」



「わかった!!」



アリスはそういう時扉に入った。








「アリスのやつ、なんか面白そうな事やってるな!



「入るんですか!?」



近くでその様子を見ていたアルがマブにそう尋ねると「当たり前だ」と帰ってくる。そしてこっそりと扉の近くまで行く。扉はアリスが入ったのを確認するとすぐに締まりそうになり、それを見たマブ達マックスヒーローズは急いで中に入った。









「ここは...?」




アリスが入った場所は小さな古屋だった。そこに見覚えのあるある顔が1人。



「おや、これはこれは珍しい客人だな」



「あなた...!だったのね!ピロンの知り合いって!!」


アリスはその魔物...ゲルムを見てそう言うのだった。








「報告します!人間がこの世界にどうやら入り込んだ模様です!」



その屋敷の主はそれを聞いて、「そうか...」というような声を出した。その人間という言葉で昔の懐かしい友の事を思い出してため息をついた。



「人間...か。あいつは元気にしてるのかなあ?」



「あいつ...ですか?」



「ああ、いや何でもない。もう一度会えないものか...アリス...」

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