百十六話 暴走する超魔神
「はっ!!!」
ミミが召喚し暴走した超魔神ゴーレットの拳でミミが押しつぶされそうなところを間一髪でアリスが入り剣で防ぐ。なかなかの力で押し返すのも一苦労だ。なんとか力を振り絞って弾き返すと超魔神ゴーレットはバランスを崩して転びそうになる。
アリスは「今っ!!」と叫び攻撃をしかけるが頑丈な体にびくともしない。
「何ぼさっとしてんの早く逃げて!!」
「あ、はい!」
突然の事に理解が追いつかず呆然としていたミミは、ハッと我に帰るとその言う事を聞きアリスの近くから離れる。そしてついその勢いに乗せられて敵であるアリスの言う事を聞いてしまったと少し後悔した。ミミはネネの目的のためなら死ぬ覚悟だってできている。そのつもりなのだ。なのになぜ?的的である自分を助けるアリスが不思議だった。
「どうするのよアリス!全然聞いてないじゃない!あのデカブツ!!」
「とりあえずスキルでもねじ込んで....!!」
雷電鬼で攻撃を仕掛けてみるが聞いていない。かなり頑丈な体のようだ。ゴーレットは雄叫びを上げながらアリスの方へと向かってくる。拳の攻撃を避けるとその拳は地面を砕き大きな衝撃が来る。
それを避けながらなんとか一撃を加えようと奮闘するアリス。アリスはもう何度か攻撃をしてみるがやはり攻撃が通らない。無闇矢鱈に攻撃をしてみるがなかなか通らない。
「アンタ!どうにかできないの?」
「できない...できたとしても私はお姉ちゃんの道具でしかないから、そんなことはしない」
「まだそんな事言ってるの?あなたは人間でしょ?道具じゃない」
「ただ私は...お姉ちゃんの目的を果たせたならそれで幸せだから」
「なら無理矢理でも目を覚まさせるまで!」
「その前にあのデカブツを何とかしないと...」
「そうね...」
そう言うがあの硬いボディに傷ひとつつけられないしどうすれば...少し考えながら戦闘するがなかなかいい案が思い浮かばない。相変わらずゴーレットの方も激しく攻撃を仕掛けてきて少しでも油断するとやられてしまう。
「無駄よ。こいつはもう止まらないのよ!!もう終わりなのよ!」
「そんな事...やってみないとわからないでしょっ!!!」
「わかったような事を...!」
「あなた達は過去ばかり見て未来を見ないの?もう過ぎた事より今を見なさいよ」
そのテティの言葉に何も言えずにミミはっ...!と歯を噛み締める。そして小さく「うるさい...」とだけ呟く。
「さて、本当にどうしようかアレ」
「何も攻撃が効かないけど何か弱点があるはずよ」
「だね」
「ウゴオオオオオオオオオオオ」
オーレットは唸り声を上げてドシンドシンと足音を立てアリスの方へと向かっていく。アリスはもう一度スキルをねじ込んでみるがやはりビクともしない。オーレットの地響きは近くの地面を割り衝撃が走る。アリスはその衝撃に巻き込まれダメージを負ってしまうがそれでも負けじと食らいつこうとする。その姿にミミは声を振るわせる。
「どうして...ですか?どうして無理だとわかっててたるんですか!?」
「アリスは行けると思ってるの!それ以上に何かある!?」
「そんな事...」
ミミは諦め続けてきた。好きな事も、楽しい生活も、何もかも...。それらを犠牲にして苦しい生活をして来たミミにとってはおかしな事だった。どうしてそんなに頑張るのか...全てを諦めたミミにはもうそんな気力もない。
「私はもう何もない。空っぽのまま。もう何もないの」
「アンタバカなの?無いなら何かを注げるじゃ無いの」
「...!」
「私達だって色々と苦労はあった。特にあのギルメラね。ほんとあの時は後先考えずおかしくなってた。1人だったらもうダメだったと思う。でもアリスがいた。だからこうやって今を生きてられるの」
「今...」
「ほんとアリスには助けられたわ。あのまま突っ走ってたらダメだっただろうし」
「ふふ...」
「何笑ってるのよ」
初めてミミが笑った。よほどテティの語りがおかしかったのだろう。
「あなた達はいいですね。信頼できる人がいて」
「アンタもこれから私たちとそうなればいいじゃ無いの。何言ってるの?」
「え?」
「一緒に今を見ましょう」
その言葉に少しうるうるした目で「はい!」と元気よく答える。そしてミミは杖を出すと何かを唱え始めた。その呪文はアリスに向けたもので、アリスの周りに赤いオーラが漂い始める。するとアリスはとても力が湧いて来るようだった。
「何これ...すごい!」
「これであいつをぶち抜けるはずです!!」
「わかった!!はぁー!!!」
その勢いと共に雷を纏わせオーレットに向かう。そして剣を振るうとグオオオオというあ悲鳴が聞こえ明らかに聞いている。
「効いてるっ!!」
「いっけえ!!」
「はあー!!」
その勢いのまま大きく飛び上がり、アリスはオーレットを見事真っ二つにしてみせた。オーレットはその場に大きな砂煙を巻き起こして倒れる。
「やった!」
「すごい...」
「ありがとう」
アリスにお礼を言われ手を出されて少し恥ずかしそうにその手を握る。これで2人は友達になり一旦はめでたしめでたし....となるはずだった。突然何かが飛んできてミミの胸に命中する。胸からは血が噴き出てアリスもテティも何が起こったのかは分からなかった。そこもいたのはネネだった。
「あーあ、せっかく私の道具として使えると思ったのに、ガッカリだわ!」
「あんた...!妹でしょ!?」
「使えないものを妹とは言わないわ。余興が台無しよ」
「お姉...ちゃん...」
姉を呼びミミに「すぐに楽にしてあげるから」ともう一度攻撃をしようとした時、アリスが立ち塞がった。ミミはそれに何やら不満そうな声を出す。
「何?邪魔しないでほしいんだけど」
「あなた...妹を何だと思って!!」
「はっ、何でもいいでしょ?」
そのそっけない対応にアリスは怒りながらも剣を握りしめる。だがそんなアリスの前にミミがヨロヨロと姉の方へと向かっていく。先ほどの攻撃で弱っている。
「大丈夫なの?動いちゃダメよ!」
「いえ、お姉ちゃんは私が止めます」
「へえ、逆らうの?妹のくせに!傑作!」
「お姉ちゃんもうやめよう」
「やめよう...お姉ちゃんにそんな口聞いていいと思ってるの!?」
激昂するネネに負けじと「やめよう!!」ととても大きな声を出す。だが大きな子声を出すと傷口が開いて血が少し飛び出してくる。そんなミミに、ネネはしょうがなさそうに槍を向けた。戦う気満々だ。
「いいよ、来なよ。教えてあげるから。ふふっ」