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百十五話 捨てられた姉妹


「このバカ者があ!!」



そう言いながら男はネネの頬を平手打ちする。その男を見ながらネネもミミも恐ろしげな顔をしている。ネネは「ごめんなさい...ごめんなさい...」と言いながら頬をさすっている。叩かれたことでジンジンと痛みが伝わってくる。2人はまだ10代という幼さもあって恐ろしい存在だ。



「やめて...お父さん!」



「あ?お前も痛い目に会いたいのか??」



制止を呼びかけるミミにギロっと恐ろしい眼差しが向けられる。その威圧感に耳は肩をすぼめてしまう。どうやらこの2人の父親は酔っているようで近くのテーブルには茶色い瓶が4つほど転がっている。母親を早くに無くした2人にはこの父親しか頼れる者がいない。だがこの父親、絵に描いたようなダメ親でこのように酒や暴力ばかりだ。ネネもミミも嫌になるが頼れるものはこの父親以外居ないので毎日耐えている。



「このバカ娘たちがぁ!!誰のおかげで生活できてると思ってんだぁ!?あぁ!?」




部屋に怒号が響く2人は怯えたようにその怒鳴り散らす父親を見ていた。







「そんな酷い...」



その話を聞いていたアリスはつい、そうこぼしてしまう。

話を聞いているだけでも胸糞が悪くなるような酷い父親だ。誰もが黙ったままで何も言わない空気にミミはそれからこう話を続ける。


「そして私たちは捨てられました。アイツは帰って来ませんでした」


「捨てられたって...!」



「隠れて女性と会っていたには知っていたけどおそらくその人と...」



「なんてクソな親なの?」



テティの言う通りひどい親だ。こんな親の元に生まれてとても苦しい思いをしたのだろう。そのエピソードは聞いているだけで心が締め付けられるようだ。まだこの話には続きがあるようで、「そして、捨てられた私たちは...」と言う切り返しからまた回想に入る。







「オラァ!!」



男の1人そう言いながらネネとミミを蹴り飛ばした。2人は近くにあったゴミ箱に当たりそのゴミ箱は倒れて中のゴミが散乱している。2人はあの捨てられた後、お金もなく盗みと言う策に出てしまった。その結果この店主の男達に追われて追い込まれてしまった。



「盗みとはいい度胸じゃねえかクソガキ共」



「やめて...ごめんなさい...許して」



「許すかよぉ!お前みたいな悪い子には教えてやらねえとなあ」



そう乞うネネなど無視して男3人ほどで、近くにあったゴミを投げられ殴る蹴るの暴力を与えた。



「ちっ、何もねえのか。底辺のカスはよぉ」



「へへへ...」







「なんて酷い...」



その話は聞くに堪えないような話だ。もうその時点でネネの精神は壊れていたのだろう。ミミはその境遇を共有しながらもネネから母なれなかった。ただ1人の姉を...。




「お姉ちゃんの中にある何かが壊れたのは、おそらくその時だと思います」



「でもそれとアリスと何の関係があるんだ?」



「関係なんてないですよ。幸せそうだったから選ばれただけだけなので」



幸せそうだから選ばれた。ただそれだけのために全員からアリスの記憶を消してそれを眺めていたのか。そこまで歪んでしまったのもその父親が悪いのはアリスもわかっているがそれにしても他人の幸せを壊してまで得られるものなどあるのだろうか?



「君はどうなんだ?」



「私ですか?」



「ええ」



「私はただの駒。お姉ちゃんの指示に従うだけです」



「そんなので楽しいのか?」



「うるさい!!!」



あまり感情が表に出るような子ではなかったがそのヴェラードのセリフで感情がむき出しになっている。それを見て少しふざけたように「怖い怖いなあ!」と言う。



「私は他人がどうなったっていい。ただ1人のお姉ちゃんを手放したくないから」



「そうか...」


「なら私達がやるべき事は一つしかない」



「そうね。ネネを救う事よ!!」



「そんな上っ面だけで何ができるんです...?」



「少なくとも過去ばかり見て悲観してるよりかはマシだろうよ」



「そんな事!!おしゃべりは終わりです。あなた達は終わるのです」



そういうと杖を出して掲げる。するとミミの近くに巨人が姿を現した。近くにある家より何倍も大きな巨人で体はレンガので構成されている。胸のところには大きな赤いコアが嵌まっている。その巨人はミミの命令でドシンドシンとヴェラードに近づいて行く。アリスは手を貸そうとヴェラードの方に向かっていくがヴェラードに「来るな!」と言われ立ち止まる。



「ヴェラード!何を?私も戦う権利があるから一緒に!」



「まー見てろって」



「行超魔神レーゴット!お姉ちゃんの野望を阻止するものを蹴散らしてください!!」



そう言うと拳をふり上げて勢いよくヴェラードに向ける。だがヴェラードは一切手出ししようとせずただ棒立ちしているだけだ。その拳はヴェラードに命中すると大きな音と共にヴェラードを押しつぶす。



「ヴェラード!何をやってるの?」



「へへ、こんな小さい子を痛ぶる趣味はないんでな。あ!お姉さんなら痛ぶられてもいいかも..グヘエ!」



そんな余裕そうなことを言っているヴェラードにもう一度拳をかます。ヴェラードは倒されてしまった。



「さあ!次はあなた達!排除してください!」



だが超魔神はその命令に従おうとはしなかった。突然ミミの方を向いて体を動かす。ミミの近くにまで行くと拳を振り上げミミを押し潰そうとする。

「グググゴゴゴゴゴゴ!!」と唸るように振り上げた拳をミミに向けて発射する。



「危ない!!」



「そんな...お姉ちゃん...ごめん」



そう呟いてミミは目を閉じた。

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