百十四話 君を救えるならば
「あれ...ここ...」
「戻ってきたみたいね」
アリスとテティは元の街に戻ってきた。この場所はいつも人通りが多いのだが戦いの影響か閑散としている。とりあえず誰か探して倒さないと...そんな事を考えながら歩いていると前からマブがやってくる。何だか意気揚々とやってくるマブはアリスを見つけると「お!」という声を出して近づいてくる。
「アリス、そういえばお前とは一度も戦ってなかったな。勝負だ」
「えー?」
「アリスチャンスよ。ポイントほしいしちゃっちゃと倒しちゃって」
「いいのか!そんな事言って。俺は七天聖なを倒した男だぞ!?」
「まぐれだけどね」
「本当幸運ー」
そんな余計な事を言うアルとホーにマブはゲンコツをお見舞いする。2人は少し涙目で頭をさすっている。マブは自信満々という感じだ。「うおおおおお!!!」という掛け声と共にマブはアリスに向かって行く。だがアリスが剣を一振りするとマブは一瞬にして倒されてしまった。
「リーダーァァァ!!」
「まあ無理だよね」
「アリス!そのもらった剣、なんか少しってない?」
「ほんとだ」
その剣は赤く少しもんやりと光っている。前の闇魔の時のようだ。あの時も剣で戦っていたら光輝きだし剣が強くなったっけか。おそらく同じ類のものだろう。
「さて、あと2ポイントが目の前にいるしとっとと倒して挑んじゃいましょうよ」
「そうね」
そう言いながら目を光らせながら近づいてくるアリスはまるで猛獣のようだった。
「あ...あ...」
「「うぎゃあああああああ」」
悲鳴がその場に響いた。
「あーあ、なんか強いやつ居ないものかなあ」
そう言いながらヴェラードは暇そうに歩いていた。先ほどから何人も倒しているのだが手応えがなく面白くないのだ。強いやつを探しながら歩いているとふと目についたのは1人の少女。しかもそれはミミだった。軽く挨拶をするが無視され「あれれ...」という声を出す。手を差し伸べてみるがその手を払われてどこかに行こうとする。
「おい、俺と戦って倒さなくていいのか??」
「じゃあ倒します」
「じゃあって...」
何だか仕方なさそうに戦うミミにヴェラードは剣を抜く。駆け出して攻撃を仕掛けてみるが避ける素振りすらない。ヴェラードの大剣はミミの横を通り地面に激突する。何だかやる気なさそうなミミにヴェラードは頭をかいて少し困ったような表情になる。
「えーっと...戦う気はあるのか?それとも何か?何か不安でもあるのか??おじさんが聞くぞ」
「いやいい」
「そんな遠慮しないでも」
「あなたにこの苦痛は分からない」
「そうか...じゃあまあ聞かせてもらうまで待つとしようかなっ!!」
ヴェラードはそう言いながらミミに襲い掛かる。ミミはやはり攻撃を一切せずにただ避けるばかり。ヴェラードの方も明らかにネネが傷つかないようにわざと外したりネネの持つ杖に当てたりして少しずつ追い込んでいる。
「くっ!!」
「さあ、いう気になったか??」
「そんな事...ありませんっ!!!」
ヴェラードの大剣を杖で押し返す。それを見てヴェラードは少し嬉しそうな顔になる。
ネネはやっ杖を構えると上にかざしはじけた。すると大きなクマの魔物が数匹ほど出てきて、ヴェラードの方へと向かって行く。
「やっとやる気になってくれたか。あとは事情を聞くだけだなっ!!!」
そんな事を呟きながら襲いかかってくる茶色い怪我を毛のクマを簡単に倒してしまう。ヴェラードはフーと一息つきながらも全然余裕そうだ。
「なんて強さなの?」
「さ、教えてくれると嬉しいなあ」
「くっ!!」
ミミは今度は別の魔物を繰り出してくる。今度は悪魔のような感じで赤と青、黒い触覚みたいなのが生えた生物だ。ヴェラードは「ほう...」と言いながらも簡単にそれを一掃する。序列2位というだけあってその辺りの魔物では太刀打ちなんて全くと言っていいほど出来ない。
「何でそんなに悲しい目をしているんだい??」
「うるさい...」
「話するだけで少しは気分が晴れるんじゃないのかな」
「うるさいうるさい...!」
「だから優しいお兄さんに言ってごらん」
「うるさい!!」
何を言っても同じような言葉が返ってくる。ヴェラードは、、ため息をつきながら勢い良くミミの方へと向かって行く。ミミは迫り来る。ミミはまた何体かモンスターを出して向かわせるが全て一撃で倒されてしまう。何体も何体も出して近づくヴェラードを阻止しようとするがその勢いは止まらずついにミミの目の前にまでやってきた。そして何をするかと思えばミミのアゴを持ち「そう怒るなって」とだけ言う。ミミは杖でヴェラードの頭を叩いて離れさせる。
「もう、そんな怒らなくとも...」
「えっ?やば...」
そう呟いたのはその現場に行き着いたアリス。2人の周りには街を覆っている緑のバリアが貼られていてアリスは近づけないがその表情は見る事ができる。何だこいつと言うような軽蔑の目でヴェラードを見だ。
「いや違っ!!」
「本当にあり得ない。きもい。臭い」
「いや臭いは関係ないだろ!!」
「クッ...フフ」
その漫才のようなやりとりにミミはつい笑ってしまう。
「いい加減教えてくれないか?お前らが何をしたいのか、そして何がお前たちをそんなに駆り立てるのか」
「ええ。分かりました。教えてあげましょう」