百九話 反撃の一撃!
「はー」
アリスとはため息をつきながら歩いていた。色々なクエストをこなしてはいるが、毎日が楽しくない。もうアリスを知っているものが誰もいないため1人だけ鳥取り残されたような感じで毎日を過ごしているのだ。もうあれから慣れようとはしているがやはり今まで関わってきた仲間に忘れられていると言うのはダメージが大きい。
「おい、そこの!そうお前だ!」
そう話しかけてくるにはピロン。もちろんピロンもアリスの事を忘れているのだろうなとアリスはまたため息をつく。
「何?」
「ピロロロ、うちの店に来ないか?」
「また?確認しておくけど、覚えてないわよね?私のこと」
「は?誰だ?全く知らないぞ」
「ならいいの。ていうかあんたの店壊れたでしょ?」
「そうなのか?」
「それすら忘れてる」
そう言って去ろうとするアリスに「ちょいちょいちょい!!」としつこく絡んでくる。それを不満そうに拒否するが、ピロンの方はグイグイとくる。「いいからいいから!」と引っ張りながらどこかに誘導させようとする。それに根負けしてそれについていくことにした。連れてこられた少し前に半壊したピロン達の店は相変わらず壊れたままだ。するとピロンは突然こんな事を言い始めた。
「壊れてるじゃないか!」
「だから言ったでしょ??」
「くそ!何で!!」
なんだかわざとらしい演技なんじゃないかとすら思えてくるピロンのそのセリフにアリスは「はあ」とため息をついた。ピロンはしばらく奥の方に行って何かをゴソゴソと調べ始める。そしてアリスの元に戻ってきた。
「ああ、見ての通りだ。申し訳ないんだが今のはナシでいいか?」
「はいはい」
アリスは帰ろうとしながら何気なくポケットに手を入れる。すると手に何かの感触がした。左には入っているには確かだが、右に何か入れたか?不思議そうに取り出してみると小さな本のようなもの。こんなの入れたのか??そう思いながらその本をめくってみる。本をめくったアリスはそのまま本を見つめている。その奇妙な光景にピロンは不思議そうに「おい、どうしたんだ?」と尋ねてみる。アリスは「なんでもない」と言い足早に立っていた。
「だから、お願いしますもう一度書庫に...」
「ダメですよ!!」
「そこを何とか!!」
受け付けのお姉さんに何とか懇願するが受け付けのお姉さんは首を横に振る。
「どうしました?」
「あ、ヌゥルさん。アリスさんが書庫に入りたいって...」
「なぜです?」
そう首を傾げるヌゥルにテティが教えてくれた。
「アリスが分かったっていうのよ!!この事件の全てが!!でもそれにはあの書庫にある、ある本が...」
その本はアリスが書庫で探していた虚なる記憶についての本だ。それを取ろうとしたアリスは落下して、そこからうやむやになってしまったのだ。
「ちょっといいですか?その話詳しく伺いたいのですが」
「はい」
集会場の裏に行くヌゥルとアリス。ヌゥルはその話を詳しく聞こうとすると、アリスは顔を近づけて「驚かないでくださいね??」とと前置きをする。するとアリスは突然剣をヌゥルに向けてくる。ヌゥルは何が何だかわからずにいるとアリスは話出した。
「もう茶番は終わり。でしょ?犯人さん」
「何を仰ってるのか分からないのですが?」
「全て思い出してるのよね。これのおかげで」
いつの間にかあった小さな本を取り出して横に振る。先程ピロンの所に行った時にいつの間にか入っていた奴だ。
「これ全ての記憶を刻んであるみたいでね??そういえば目が覚めたりぼーっとしていた時はあなたがいたのよ。まあこれを知れたのもあいつのおかげだけど。最初のガレージ、そして書庫。どちらも確信につきそうだった。だから消した違う??」
「何の事だか、第一、何の証拠があってそんな事をおっしゃっているのか」
「だって襲ったのもあなたの仲間でしょ??」
「そんな...!」
「あなたはあそこにいたけどどうせ遠距離かなんかでできたんでしょ?皆の記憶まで消して
「そんな、あのピロンさんでしたっけ?の不思議な店を襲うだなんてそんな事...」
「おかしいわね。私は襲われたのがピロンの店だとは先程から一回も言ってないけど」
「っ!!」
余計な事を言ったとヌゥルは口をつぐんだがもう遅かった。ヌゥルは負けを認めたのか突然笑い出した。アリスとテティはそんな突然笑い出した奇妙なヌゥルを見る。
「いやあ、お見事。まるで探偵だ」
「認めるの?」
「はい、でも無意味ですよ?あなたはまた記憶を消させるんですからね」
「どうやってたの?」
「名前ですよ。あなたの名前を込めれなどこからでも消せます」
「なるほど」
全てが繋がった。あのギルメラを倒したアリスの紹介をしていた時。ヌゥルは司会をしていた。しかもそこにはこの街の者全員がアリスの名前を言っていた。それならばほぼ全員のアリスの記憶を消せるというわけだ。それをしなかったマックスヒーローズなど一部が効果にかかっていなかったのはそのためだろう。
「もちろん直す方はあるのよね?」
「ええ。私がリセットと言えば消えますよ」
「あら、素直に教えてくれるのね」
「どうせ記憶を消せるので」
「でも名前を言わなければ意味がないわ。残念ね」
「そうでしょうか?」
そう言い杖を取り出すとそれを振る。その杖から出た波紋はアリスとテティに直撃すると倒れてしまった。ヌゥルは近づいてきて笑みを浮かべる。
「これには一度だけ強制的に無条件で忘れさせる力があるのですよ。奥の手を残しておいた私の勝ちです。ふふふ...」
ヌゥルがアリス達を起こすとアリスとテティは「アレ?ヌゥルさん?私たちどうしてここに?」と呟いた。何もすべて記憶をなくなた状態だ。それを見てにっこりとしながら本を取り上げてビリビリに破く。これがなければもう記憶を戻す事はないのだ。ヌゥルはアリス達に適当な事を言って帰らせた
「ねえテティ、これからどうするの?」
「もうこれ以上手はないんだからこのまま過ごすしか...」
それを聞いて完全勝利を確信した。あの力を無効化することはできない。なので確実に記憶が消えている。抗えないのだ。アリスはこのままあの状況で暮らすことになるだろう..。すこし歩いてヌゥルは街並みを見ていた。
「もうこの世界にアリスを知っているものはいない。なんだか呆気なかったな。もう少しゲームが楽しめると思ったのだが...。あの方々に手を貸したのはいいがこれじゃあもうおしまいじゃないか。面白くない」
その時、放送が入る。この放送は基本的に緊急クエストなどでないと入らないはずだ。ヌゥルはまた何か始まったのだろうと安心していた。その次のセリフを聞くまでは...。
『いやあ、お見事。まるで探偵だ』
『認めるの?』
『はい、でも無意味ですよ?あなたはまた記憶を消させるんですからね』
「はっ????」
それは確かに先程の会話だ。なぜそんなものが流れているんだ??ということは...まずい!!そんな事を考えながらヌゥルは走り出す。だがもう遅かった。
『ええ。私がリセットと言えば消えますよ...』