打ち砕かれた最後の光
「ライナ!起きて!ライナってば!!」
「うーん...」
ライナはそのテティの声で目が覚める。木でできた天井が見える。起き上がると集会場にいた。ヌゥルテティが心配そうに見ている。アリスは先程までの事を思い出す。確か図書館に行って...それから...。アリスが考えているとテティがそこで起こった事を思い出させてくれた。
「脚立に乗って、アリス倒れたんだよ?」
「そうだ!!」
アリスは脚立から本を取ろうとして、それからバランスを崩したのだ。それに気づいたテティが助けを呼び現在に至る。受け付けのお姉さんにこっぴどく叱られたらしい。ルナは...姿が見えない。おそらくどこかにいたのだろう。
「あなた...えっと名前はアリスさんでしたっけ?も今度は気をつけてくださいね?あそこじゃ」
「ああ...はい」
受け付けのお姉さんに注意されながらもアリスは「うぅ...」という声を出しながら頭を押さえる。何だかかアリスは先程から頭がぼーっとしているような感じに襲われている。何というかこう、大事な事を忘れているような...。
「これからどうしますか???」
「うーん...とりあえず一旦ピロン達のいる所に戻ります」
「何か作戦を立てるアジトのようなものでもあるのですか?」
「ま、まあ...そういうものです」
「ついていっても?」
「そうですね。まあ、はい」
この人ならおそらく大丈夫だろうとアリスは同行を許可する。そして店まで行くとその入り口は開いている。階段を降りて扉を開ける。そこにはいつもの光景が広がっていた。
「おお、アリス...ってそいつは誰だ??」
「ああ、紹介するね。ヌゥルさんだよ!」
「よろしく」
「ヌゥルさんも私のこと覚えているの!」
「そうか...少し待っててくれ、やる事があったのを思い出したんだ。ちょっと待っててくれ」
「そういえば他の皆は?」
「ああ、ちょっと外に出ていてな」
そう言うと、ピロンは奥の方に言ってしまう。数分待っていると奥からピロンが戻ってきた。そしてカウンターの近くにあった椅子に座って「で、どうだった??」とだけ尋ねる。それに対してアリスは首を振った。
「ダメ、情報は得られなかったよ」
「君もアリスさんのことを知っているんですか?」
「え?ああ、まあな」
「そうなんですか...」
「ん?どうかしたか?」
「ああ?いえ」
「ま、もう少し頑張ってくるから」
「ああ」
そう言いアリスはヌゥルと一緒に外に出る。そして階段を登り離れた。そしてしばらく歩いて離れたその時だった。大きな爆発音が聞こえる。アリス達は急いでピロンのいる店にまで戻る。扉を開けるとピロンが倒れアイテムが散乱している。
「ピロンさん!!」
「ピロン!!」
「ううぐっ...」
ピロンは目を覚ますそしてアリスとヌゥルを見る。
「お前らは...誰だ??」
「っ!?」
先程の襲撃でピロンもやられてしまったのか。アリスはこれからどうするか...と拳を握りしめる。その姿をヌゥルは心配そうに見ていた。
「アリスさん...」
「もう...どうすればいいか...もう!」
「大丈夫よアリス!!まだここに2人、あなたを知っている人がいるんだから!!」
「後もう居ないですけどルナさんもですね」
「もう、あのケモノっ娘どこ行っちゃったのよ!!」
「どうしますか?もうこれ以上行く当てはあるんですか??」
「全然...」
暗い雰囲気が漂いだす。アリスはこのままなのか?ここからの打開策は、あるのだろうか???そんなことを考えていても仕方がないのはわかっているがアリスにはこれ以上の当てはない。これからどうすれば..アリスははあ、とため息をついて空を見上げた。
「はーい、野草集めですね。分かりました!!」
受け付けのお姉さんの笑顔にアリスはあまり乗り気じゃない声で「はい...」と答えた。あれから何の手がかりもなく、ただ時間だけが過ぎていくだけだった。もうアリスも途中から諦めたような感じになってあれから1週間ほどで今はもう普通に暮らすようにしている。
「おお、アリス!」
「マブ...」
「お前新人なのにやるなあ!結構な数のクエストをクリアしてるじゃねーか!」
「ま、リーダーほどじゃないけどな!」
「まーそうだろうそうだろう!!」
少しアリスはもしかしたら時間が経てば治るんじゃないかと期待していたのだが、その「新人」と言う言葉にその期待は一気に消えた。マブ達にとっては会って間もない事になっているのだ。あれだけ色々なことをやったと言うのに...。
「次どこいく?」
「ああ、そうだね」
そっけない反応にテティも心配になる。そこに後ろから声をかけてくるものがいた。
「おい、そこのお前」
「ああ、ルビスか」
「お前、何で俺の名前を知ってるんだ?」
「いいでしょ?あなたはもう覚えてないんだろうし」
「はあ?」
その後ろから話しかけてきたルビスは不思議そうな顔でアリスを見た。ルビスはアリスに用があったことを思い出して「そうだ!」と言うような声を出し始める。
「お前、新人のくせによくやってるなあ」
「放っておいてよ」
「何だよ冷たいなあ」
「ほっといてって!!!」
そんな大きめの声を出してアリスは出ていってしまった。テティはそれを追いかける。そして暗い路地のところで小さく体育座りしているアリスに近づいて心配そうに語りかけて見るがアリスはテティの言葉に反応すらしない。
「アリス...」
「もう皆の中には私はいない。もう私と言う存在自体無いんだもの」
「アリス...」
「色々ふざけたり協力したり...もうあんな日々が来ないんだと思うとぽっかりと穴が空いたような感じがするの」
「でもさ!打開策が...」
「何かあったの?」
その言葉にテティは黙る。1週間あがいても何もなかった。変化すらなかった。皆は結局同じで、何も変わらないアリスを忘れたままだった。
「私がいるから大丈夫よ!!」
「テティ...」
「さ!早く行こ!」
「うん...」
屋根の上からそれを見ていた2人がいた。その2人、ミミとネネはもうこれ以上の事が起きそうに無い事に少しつまらなそうな顔だった。
「ミミ、もう終わり見たいよ?つまらない」
「そ、そうなんだ」
「なんかもうちょっとあがいてくれると思ったのにねえ。残念」
「お姉ちゃん、これからどうするの?」
「余興は終わったし、もういいかな?そろそろ飽きてもきたし。最恐の姉妹の本当の恐ろしさを教えてあげるとしましょうか」
「...うん」
1人、とある店の奥に隠された研究所には怪しげな笑い声が聞こえていた。
「ピロロロロ、記憶を消して勝ったつもりか??甘いな。このピロン様を甘く見るんじゃない。さて、反撃と行こうじゃ無いか。散々アリスを使ってくだらない事をしてくれたからな。その分お礼をしないとな。ピロロロロ」