百三話 四獣を討ち取った英雄
「ギルメラを倒したという英雄はこちらの方々です!!」
その声で街に入場したアリス達は、道の真ん中を歩いていた。左右には街のたくさんの人々が声援を送っている。その中には受付のお姉さんやピロン達の姿もある。左右からの声に少し恥ずかしくなりながらギルメラを倒し英雄となった一行は道の真ん中を進んでいった。なぜまるでパレードのような状況になっているかと言うと、それはアリス達が街に着いた時...。
「おかえりなさい!!」
「ああ、どうも」
受け付けのお姉さんがニコニコしながら入り口に立っていた。一行が何だろうと思っているとお姉さんに「入ってください」と言う誘導される。するとそこに待ち構えていたのがこのパレードのようなもので、現在に至る。
道の先にはいつもクエストを受けている集会所があり、外にも何やらテーブルがたくさん置いてある。遠くからでも何やら美味しそうな料理が並んでいるのが分かる。
「さあ!英雄を含めて、宴会といきましょう!!!」
「うおおおおおお!!」
「え?そんな英雄だなんて...」
「いえいえ、四獣の一角を倒した、しかもアリスさんは前にも倒してるんでしたよね?」
「ええ」
ハルガンデスが攻めてきた時に何とか倒す事ができた。今回ほどじゃなかったが、何だかギリギリの戦いばかりの気がする。
アリス達集会場の中にも美味しそうな料理が並んでいた。ステーキスパゲッティ焼き肉...おそらくこの世界の材料で本来のものとは違うだろうが、そこにはここにいる転生者達のかつての料理が並んでいた。
「あの、あなた方がいた世界の料理っていうのを再現したんですけど、どうですか?」
「すごい!本当に元の世界に戻ったみたいです!!」
「結構難しかったですがなんとかなりました!あとはお味ですが...」
アリスたちは一口食べてみる。うん、美味しい!と言うのが満場一致だった。だがあの味を再現できているかと聞かれると微妙だが、美味しいことに変わりがないのでそんな事はどうでも良かった。
「さて、始めましょうか!!」
宴会が始まった。みんなで食べて飲んで大騒ぎをしていた。
「でな!俺が一撃を与えたってわけよ!!!」
「マックスヒーローズすげー!」
「そりゃあそうだ!マブは最強!!」
マブがそう他の者たちに自分の武勇伝を高らかに言っている。まあ間違っては無いし正直マブが武器に選ばれたのはたまたまだろうが実際マブがいなければ勝てなかっただろう。そういう意味ではマブの功績は大きいとも言える。
「負けねえぞ!!」
「こっちだって!!」
さらに奥にはヴェラードが飲み比べをしている。その2人のテーブルにはヴェラードとその対戦相手が飲み干したであろう木でできたジョッキが所狭しと並んでいる。
騒がしい集会所に強く扉を開けて入ってくるものがいた。
「俺とたたぁかあアリス!!お前ぇとぇ勝負ざがぁするんのぁあっ!!」
外で騒いでいたバニア突然入ってきたは酔っているようで所々何を言っているか分からないが判明しているところでおそらくアリスと勝負をしたがっているのはわかった。なんだか別のキャラのように顔を赤くして、ろれつが全く回ってないバニアをアリスは見ていた。
「そんなんで戦っても勝てるの?」
「いやこんどろこそぁ勝つ!アンタにぁ仮があるぃがからねぁあえあはえあえらは!」
「いや後半何言ってるのか全くわからないよ」
「ねーねーいいでしょ?ねー?」
その向こうではヴェラードはまた女の子をナンパしている。そんなヴェラードをメイキスがやってきてチョップで撃退する。ヴェラードはチョップでできたタンコブをこしらえて
渋々その席から離れる。そして別のところに行くとまたナンパ、その度にメイキスに睨まれている。
「夜になったら花火をあげる予定だか楽しみにしててくれよ」
「本当??」
「ああ」
ヴェラードのその言葉にアリスは心を躍らせる。まさかこの世界に来て花火を見れるなんてアリスは思わなかった。どんなものになるのか、今から楽しみだ。
目の前のどんちゃん騒ぎを見てアリスもテティもこの楽しい時間がずっと続くといいなと思っていた。
「楽しいねアリス」
「うん!」
「なんか色々あったけど...なんだかんだでみんなこの世界に馴染んでるのかもね」
「ねえ...アリスは帰りたいと思う?」
その唐突な質問にアリスは動揺する。帰りたい...それは元の世界に戻りたいか。アリスやここの人たちと会えなくなる。だが元の世界にも家族や友人といった心配している人はいる。どちらにせよ別れはつくのだ。
「まあ、帰らないと行けないかな。ここは私が本来いる場所じゃ無いから」
「そっか」
テティはそれ以上は何も言わなかった。アリスも黙ったままテティを見る。その時アリスの後頭部に何かがぶつかった。それは木でdできたジョッキだった。怪我をするほどでは無いがヒリヒリと当たったところが痛む。
ジョッキが飛んできた方を見ると何故かものの投げ合いをしている。
「アンタたち危ないでしょ!!何やってんの??こっちにまできたよ!」
「おーうるさいのがきたぞ!」
「どういう意味よそれ!」
少し怒ったようにアリスがその投げ合いの渦中に乱入する。テティはそれを見ながらただ微笑んでいた。
「ねえ聞いた??」
「うん、聞いたよ」
その黄色い髪の少女2人はモニターでパレードの様子を眺めていた。パレードのところに顔のところにレンズを搭載したコウモリを飛び回らせていたのだ。このコウモリから直接モニターでその様子を監視できるのだ。どちらもこの少女達は同じような服や髪型だが片方が長髪なのに対してもう片方は短髪だ。
「あの子がギルメラを倒したって言う子。中心人物らしいよ」
「そうなんだ...」
長髪の方の少女はテーブルに置いてあった棒にくっついた赤い飴を手に取ると袋を取る口の中に放り込む。そして口の中でしばらく転がして棒を持って口から出す。そして奇妙に笑い出した。
「ちょっと何かしたくならない??」
「お姉ちゃん、また何かするの?」
単発の方の少女は長髪の方の少女にそう尋ねると、その少女は笑みを浮かべる。
「ちょっとしたサプライズよ
「サプライズ...って?」
「すぐに分かるよミミ。そういえばあのへんな恐竜は?」
「はいはいはい、お呼びでしょうか?」
その言葉にへんな恐竜、ヘントールが姿を表す。こいつはかつて闇魔を配り、人間を面白い生物だと監視する不気味なスーツ姿の恐竜だ。ただ闇魔以外はアリス達に干渉せずにただ見物していたり武器を運んでいただけだが。
「準備はできたの?」
「ええ」
「本当にやるの?お姉ちゃん」
「やるよ。あんたはそうやって昔からオドオドしてて...アンタは私の言う事だけ聞いてればいいの。妹なんだから」
ミミという少女は「ふん」と言いながらヘントールとの話を再開する。どうやら誰かを連れてきたようで「で、その連れてきたのは?」とミミが尋ねる。
「あちらで待機させております」
「そ。で、なんか花火が上がるらしいわね」
「その花火...と言うのがどんなものか存じ上げませんがそのようですね」
「私たちがいた世界で空に咲く花...まあ見てもらえば分かるわ。それと同時にやるって事よね?」
「ええ。でも、その花火...とやらが上がったら作戦を実行でいいのですか?」
「いいのよ、こう言うのは雰囲気が大事だから」
「左様ですか」
アリスとかいったっけ??今から最強で最恐であり最凶の姉妹、ミミとネネが面白い事をしてあげるから、覚悟なさい...」