十話 マックスヒーローズ再び!?
「あんた達は!!いつぞやの!!...えーっと名前なんだっけ?」
「さっき名乗っただろうが!!」
「なんだ?」
「ここは俺らのテリトリーだ。早く消えろ。さもないと...」
ゼロの方を指差してリーダーのマブはそう高らかに宣言する。隣のアルとホーは相変わらずマブを囃し立てている。どこから湧いてくるのか、すごく自信げな顔をしているのがなんだかムカついてくるぐらいだ。ザッと砂の敷き詰められた大地を踏みしめる。もう勝てないことは十二分にわかるので戦う必要なないと思いながらも止めるのがめんどくさい。アリスはそれをただ見ていることにした。
「謝るなら今のうちだぞ!!」
「リーダーはめっちゃ強いんだぞ!ちょっと抜けてるけど」
「バッカ!余計なことを言わなくていいんだよ!!」
ゴツンとグーでそう言ったアルの頭を小突いてゴホン、と咳をした。アルは頭から煙を出して相当痛かったのか、叩かれた頭をさすっている。マブはかかってこいと言わんばかりに挑発をするがゼロは真顔で突っ立っているばかりだ。呆れているのか、怒っているのか、その表情からは読み取ることができない。
「やって待ってくだせえ!リーダー!!」
「僕らの頼れるリーダー!」
「ははは、みなまで言うな!そこまで言われたら照れ...グフッ!」
一瞬で炎をマブの方に伸ばす。マブは炎に包まれてどうなっているかは外からは見えない。「リーダー!!」と2人の心配する声が聞こえる。しばらくしてギャグ漫画のように丸焦げとなったマブが姿をあらわす。
「リーダー!」
「大丈...夫だ」
そう言い横たわりながらサムズアップをする。あれを食らってサムズアップをするなんてまるでギャグの世界にでもきたのか。マブは立ち上がると剣を構える。勝てないとわかっていながらまだやるのか。正直展開的にも読者的にもこんなどうでもいい戦いに尺を使うのは無駄だと感じるだろう。
「フッ...その近くに戦闘中にこっそりと俺が仕掛けた爆弾がある!それを踏めば流石のお前も!」
「なーにブツブツいってんの?」
声が小さかったようでどうやらアリスにも聞こえていなかったようだ。ひとりでぶつぶつ呟くマブに少し哀れみのこもった目で見る。マブはそんなアリスにも反応せずククク...と笑いを見せた。何かをぶつぶつ呟いた後に笑いだしたマブはアリスから見ると完全に変な人でしか無い。まあ、登場時からアリスはそう思っていたが。
「しょうがねえ、奥の手を出すしかねえみたいだな!!!」
「まさか、リーダーあれを!?!?」
そう言いながら一歩前に出る。一体何をするというのか。あまり期待はしていないがきっとすごいものが出てくるのだろう。マブが剣を上に突き上げる。一体何が始まるというのか。マブはひさをついて手を地面に置いた。まさか...この構えは...。
「さーせんしたーーー!!!」
そう叫びながらマブは頭を下げた。それは美しいとも言えるほどの土下座だった。深々と頭を下げ、洗礼されたかのようなその見てくれはそう言うにふさわしかった。だがそれを見ていたアリスは期待してなかったとはいえ、土下座という誰も予期しなかった展開にその光景を見ていた呆れるような目を向けていた。
「リーダーかっこ悪い...」
「消えろ!」
「まあダメだよねー」
ゼロがマブうぃ炎で生成した槍で突き刺そうとした時、攻撃をアリスが横から攻撃をしかける。なんとか白い炎の間を縫って剣を突き立てるがやはり炎に阻まれる。ゼロはグッ!という声を漏らし胸の手を当てる。その隙をついて攻撃をしようとしたがやはり白い炎が行く手を遮ってしまう。
その次の瞬間、ゼロは消えていた。それは唐突に、そこにいたゼロの姿が消えていたのだ。まるで戦っていたワンシーンが切り取られているかのように、忽然と姿を消してしまうゼロにアリスは困惑する。遠くから白髪の白いローブを着た青い目の少女が見ていたことはアリスには知る由もなかった。
「なんだったの...?」
キョトンとするアリスの横で、マックスヒーローズの3人はまた、コソコソと何かを話している。マックスヒーローズは話し終えたのかアリスの方に詰め寄る。
「よーし!お前を下っ端として仲間に入れてやろう!!」
「いやいいです」
凄まじいぐらいの速さで即答する。マブが次のセリフを言おうとするも、アリスは「いやいいです」と同じ言葉を繰り返す。そのやりとりを数回繰り返した後、マブはつまらなそうに「じゃーいいよ!」と呟く。
「お前は利用価値がありそうだから残しておいてやる!感謝しろよ!!」
「勝てないからでしょ...」
「聞こえてるぞー」
同じようなやりとりをしてマックスヒーローズの3人は歩き出そうとした....のだが、突然足元が光り始めたのだ。そしてすぐに大きな爆発音とともにマックスヒーローズの3人ははるか彼方に吹っ飛ばされてしまった。
「さっき仕掛けた爆弾がぁー!」
もちろん、踏むと作動する爆弾を仕掛けていたなどアリスに走り由も無いので突然爆発を起こし吹っ飛んだマックスヒーローズの3人を不思議そうにただ見ていた。マックスヒーローズが見えなくなると「まあいいや」とだけいって歩き出す。空はもう日が沈み暗闇が訪れたいた。どこかで休める場所を探さないと...見回すとふとピンク色をしたもの見えた。ここからだとほとんど見えないが、何かピンク色の大きなものがほんの一部だけ見えているのだ。
「あれ...」
アリスはそれにまるで何かに取り憑かれたかのようにつられるようにそちらの方向に歩き出す。先ほど見えたピンクのものの方向へひたすら歩いていく。どれぐらい歩いたか。遠くから見えたこともあり、その相当な大きさのアリスを導いたピンクの何かが姿を現した。
それはピンク色の花を咲かせた大樹だった。花びらがひらひらと舞い落ちるその木はアリスのあの時の記憶を思い出させる。テティと出会ったあの時の記憶を。
「アリス...」
同じくこの木につられたのかテティはこちらの方を見ている。お互いに何も言わずにその大樹の方を見た。その、2人の出会った大樹に...。