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一話 異世界の始まり



「テティ...なんでなの?....テティ!!」



少女はその妖精の名を呼ぶー。




「テティ!!答えてよ!!テティ!!」



だがその妖精は黒い渦の前で立ち止まったままで何も言わない。



「テティ!!」



また少女は妖精の名前を叫ぶ。何度も、何度も叫ぶー。



「テティ!!テティ!!!」



「ごめん....」



その声に応えるかのように少女の方を向く。だがその悲しそうな目をこちらに向けながらそう言い、言い渦の中に入ってしまった。「テティ...」と小さく呟き伸ばしたその少女の手は手は届かず、ただ空虚を握りしめるだけだった。



✴︎





「あーもう!また星1の弱小装備か!!どうなってるんだ!もう一回だもう一回!」



その口調の悪いモヒカンの男は、そう呟きながらキラキラしたひし形の虹色の石をこのソーシャルゲームのガチャが引ける店店主の男に渡した。その店主の男は大きな目と口のついた丸い岩に先ほど受け取った虹色の石を放り込む。

すると、その岩はくるくると回り始め、しばらくすると口から10個ほどビー玉程度の大きさの小さな玉を出した。それらはカランカランと音を立ててテーブルの上に乗っかる。テーブルの上に乗っている玉は白ばかりで、それにより男の不満はさらに募るばかりだった。

足でリズムを刻むように床を叩き怪訝そうな顔でその不満を店主にぶつける。




「おい!白ばっかじゃねーか!!!これ本当に当たり入ってんのか!?!?星4や星5の金や虹色の玉が全然でねーじゃねーか!!」



さらに口調が荒くなりドン!と机を叩きそのモヒカン男は店主に詰め寄る。店主は困ったような顔でそのモヒカン男をなだめるがその怒りは収まらないようだ。



「落ちついてください!今度はいいのが出ると思いますよ!」



「くっ..もう一回だ!」



モヒカン男はまた虹色の石をと机の上に出す。店主はそれを手に取ると、また石の中に入れる。モヒカン男は手を合わせて祈るようになにかをブツブツと言っていた。回石が転してまた玉が出てくる。だが出てきたのは青や白ばかりで、モヒカン男は落胆していたが、「もう一回だ!!」とまた懐の袋から虹色の石を取り出した。



「いいなあ、いっぱいあって。私あんまジェムないからなあ...」



その光景を見ていた栗色の髪に少し黄色がかった服を着た少女、アリスは、そのモヒカン男と店主のやりとりを見ていた。

このアリス達がが迷い込んでしまったソシャゲのような世界では、ジェムという虹色の石を店に置いてある目と口のある大きな石に入れると、ガチャというのを引ける。そのガチャで手に入るのは、武器は斧や剣、弓など様々で、さらにレア度というのもあり、星1から星5まである。

「アリス達」と言ったのはこの世界に飛ばされたのはアリスだけではなくたくさんの人が迷い込んでいた。テティはいわばゲーム内のNPCのような者で、もともとの世界にいる。他にも、いまさっき出てきた店のオッチャンなど、もともとこの世界の住人も、たくさんいる。


「あら、アリスもいっぱいあるじゃない。引かないの?ガチャ」



緑の服に黄色の髪で羽が生えた妖精が横から口を出してきた。大きさはアリスの1/4程度で羽をパタパタとさせながらアリスの周りを飛び回る。

この妖精はテティといって、とある事情で一緒についていくことになった。

少し口は悪いが、サポートしてくれるとても有り難い存在だ。

テティはアリスの周りを飛び回りながら考えているアリスを見る。引くか...引かないか....しばらくアリスはうーんという唸り声を出しながら顎のところに手を当て考えていた。



「クエストでせっかく集めたし...でも引いてみようかな」




そう言うとモヒカン男の後ろに並ぶ。モヒカン男は後ろに人がいるのを見て横に移動してくれた。机の上に虹色の石をバラバラと置くと、店主はそれを目と口のある大きな石に入れるとその石は大きく回転しながら白や青の玉を10個ほど吐き出した。

この石に投げ込むと先ほどのように石が回転し玉を出してくれる。その玉は白、青、銀、金、虹の5色あり左のそれぞれ白が星1、青が星2、銀が星3...というようになっている。



先ほどのモヒカン男が当てていた白や青は星1や星2でハズレ...というわけではないが難しいクエストをするには力不足感が否めない。

しばらく回転した石は口から玉を吐き出す。その玉を確認すると、机の上には白と青が9つと銀色が1つだけで最高が星3というあまりいい結果ではなかった。

星3のクレイソード....攻撃力は高いだけで効果は特になし...」



「ま、まあ次があるわよきっと!」



テティに励まされながらアリスは横の飾られた紫に黄色の線が入った剣を見る。横には「今回の目玉!!星5グレードソード!!」と仰々しく書かれた紙が貼ってある。

こういう武器は期間限定のものもあり、そういうのは大抵強いものが多い。この剣もその類のものでそこそこの性能を誇るものだった。もちろん星5なので簡単に当たるものではないが。

アリスの星3の短剣もクレイソードと同じで何も効果はない。基本的に星3の武器はスキルなどは何もないしょぼい武器ばかりなのだ。


「欲しかったなあ。アレ」



ショウウィンドウを眺める子供のようにその剣をみる。剣を見ているだけでは虚しくなり、はあ、とため息をついて歩き出す。寒い風がアリス達に吹き付けてくる。



「クエストに行ってジェム稼ぎましょ」



「そうだね」



アリスとテティは店から離れ歩き出した。向こうでは先程の声のモヒカン男が、トボトボと歩いていた。結局、いいものは当たらなかったのだろうか。

アリス達はクエストが受けられる集会場を目指した。




他にも現実世界のお金を使うことでジェムがその使った分手に入る課金システムというものもある。アリスのようなそういシステムを使わないのを「無課金プレイヤー」と呼ぶ。

そのクエストを受けられるのがこの、集会場なのだ。

基本的にジェムはここでモンスターの討伐や荷物運びなどのクエストの報酬で手に入れることになっている。難しいものを選べば選ぶほどジェムは多く手に入る。



「ここね」



それは少し道を歩くところを右に曲がるとあり、大きな建物が姿をb見る。肌色の壁に、幾つもの窓がついている。扉を開けると中は清楚な雰囲気が漂っていた。人々が忙しそうに右往左往している人、ボードをじっくり見ているもの、机で何かを話している人々など様々な人で賑わっている。






受け付けのところに人が居るのを見て、休憩スペースのピンク色のソファに腰をかける。水色のソファはアリスをふんわりと弾とむように受け止めた。

受け付けにいた人が去るのを見て、立ち上がり、受け付けに向かう。美人なお姉さんがそこでは待ち受けていた。

受付のお姉さんは、ニッコリとした笑顔でこちらを見た。



「ご要望はなんでしょう?」お



「えーっと、すごく報酬のジェムが貰えるクエストってありませんか?」




「うーん、サンドゴーレムの討伐...デビルドッグの討伐...」



こういうクエストは、大体は討伐クエストとなっており、例外はあるが特定のモンスターを一定数倒すと達成される。ペラペラと受け付けにある紙をめくりながら受け付けのお姉さんは「うーん?」と首を傾げた。

サンドゴーレムも、デビルドッグも討伐できればそこそこの報酬は見込めるが、アリスの行った「すごく」というのには少し足りないぐらいだ。



突然ブーっというサイレンが聞こえ急いで外に出る。

すると外に出ると大きなワームのような生物が暴れていた。肌色に鋭牙と複数の緑の目、何メートルかある胴体。とても気持ちの悪いとしか言いようがない風貌のそのワームの魔物は街で大暴れしている。




「緊急クエスト!緊急クエスト!イビルワームを討伐せよ!」



「おおー!」



そのアナウンスが流れるとその大きなワームのような生物に向かって一斉に飛びかかった。このように突然現れたモンスターを倒す『緊急クエスト』なるものがしばしば起こる。こういうものは石がいつも以上に手に入るということもあって人々が我先にと対象のモンスターを倒すのだ。



「行かないの?アリス」



その光景を見ているだけのアリスにテティが不思議そうに聞いた。それにアリスはうーんと考えてすぐに「まーいいや」と言った。



「あの人たちに任せれば大丈夫じゃない??それよりなんか報酬がいっぱい出るやつとかありません?」



その言葉に受付の人は走り出し、奥で何かを探し始めた。数分してそして数分で何かを探し出しこちらに戻ってきた。少し古びた感じの紙を持っている。

ところどころ破れていて年代物という感じを醸し出している。


「あっ、これとかどうでしょう??」



「違法武器『闇魔』??」



一枚の紙にはそう書かれていた。おぞましそうな武器のイラストまでついている。報酬のジェムはそこそこ多めだ。



「闇魔という違法武器の回収に行って欲しいのです。とても危険ですが、その分ジェム1000個となっているのでちょうどいいと思いますよ」



1000というのはよほど難しいものでないと得られない数字だ。それなりの難易度を覚悟した方が良さそうだ。アリスは「よし!」と言いながら拳を握りしめて、「それにしてください!といった。

アリスの即決にテティは心配そうな顔でアリスを見る。



「いいの?こんなよくわからないので」



「まあたくさんもらえるしいいんじゃない??」



そこそこの付き合いで、アリスのこの先を見ないというか、 向こう見ずな性格のより度々大変なことに巻き込まれたりもする。テティは毎回説得をしようとするが頑固というか何も考えてないというか、結局それに決めてしまうことが多いのだ。


「でもこれ、とっても危険で...」



「危険?」




危険という言葉に受付のお姉さんの方を見る。やはり報酬が多いということだけあって、そういうものはつきものだろう。



「その闇魔と呼ばれる武器は体を蝕んで行きます。体を支配されると、その武器に精神を乗っ取られるんだとか...」



精神を乗っ取られる。そんな恐ろしい剣があるのか...。ゴクリと唾を飲み込むテティに対し、アリスは何も変わってないいつも通りの顔だった。

もうこの顔はこのクエストでもいいというような感じの顔だ。テティはそこそこ長い付き合いなだけそういうのはすぐにわかる。



「大丈夫です!!



「ちょっとアリス!!!」



「そうですか...」



どこから湧いてくるのかわからないそアリスの自身を見て、受付の人はスタンプを押す。これで受注完了だ。そんな自身がどこから出てくるのかテティは不安だったがスタンプを押した以上受注してしまったクエストをやるしかない。テティは「はあ」とため息をついた。向こう見ずというかなんというか、これはいつまでたっても変わらずということか。



「で、場所は」



「ここから数分行くと使われなくなった街があるんですが...そこにそれを持っている奴らが潜伏しているんだとか」



地図を広げ現在いる街から指でなぞりながら砂のように白っぽいエリアを指で軽くトントン、と叩く。ここから東に行ったところにある場所で。前は街があったが廃れて今は使われなくなったんだという。


「そこですね。分かりました。いくよテティ」



「...うん」



「どうかお気をつけて」



そう言いアリスは扉の方に向かった。この武器は星3の武器でそこまでは強くはない。これで行けるのかと少し不安もあったが、そんな危険なもの放っては置けない。アリスが扉を出るのを、受け付けのお姉さんは少し心配そうに見ていた。


武器紹介的なの



クレイソード


レア度☆☆☆


ガチャで手に入る星3の武器。いわゆるハズレといいやつ。初心者にもあんま使われないぐらい普通に弱い。まあ星3だし。



短剣


レア度☆☆☆



アリスが持っている星3の武器。クレイソード同様普通にハズレなので語ることはさほどない。



グレードソード


レア度☆☆☆☆☆


星5でピックアップされていた剣。攻撃力を下げるの威力があるが、正直でやすくてもそんな強くないのでレアだけどハズレ...いわゆるハズレアというやつ。

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