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黄昏のアルテシア  作者: 山崎とと
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プロローグ

みなさん初めまして、山崎ととです。

今回初の投稿になります。

はっきり言って素人ですが、皆さんに楽しいと思って貰えるモノを作って行けれたらと思います。

カシャカシャと金属の擦れる音が石造りの地下通路に響き渡っている。


「交代だ。」

「お、ようやくか。この番だけは嫌なんだよなー。暗いし臭ぇし、気が滅入るわ。」

「お前なぁ、これからその気が滅入る仕事をするヤツに言うなよな……。」

「ははっ、そんじゃ後は任せた‼」


同僚の肩をポンッと叩くと仕事から解放された兵士は地上への出口へ繋がる奥の階段へ向かう。

その後ろ姿を見送りながらやれやれと肩をすくめると交代をした兵士はさっそく職務に取り掛かる事にした。

これから数日間はこの陰鬱な砦地下の牢獄で職務を行わなければならない。

とはいえ職務と行っても特にする事は無く、只椅子に腰掛けながら見張りをするだけだ。

しかもだ……。

見張りといってもここから脱走する様な気力のある者は皆無であり、皆牢の中で死人の様に沈黙を保っているだけだ。

そういった意味ではこの番は1番楽な仕事だろう、それは認める。

しかし、と兵士は考える。

暗く湿った空気が充満し、何かの腐った臭いが鼻につく、居るだけで心も体も汚れてしまいそうな、そんなこの世の終わりのような場所。

幾ら楽とは云えこんな場所には1分足りとも長居はしたいとは思わない。

どんなに快活な者でもこんな場所にいれば次第に気が滅入る……。

早く最終日を迎え、浴びるようにエールを飲みたいものだ。

恐らく、いや……絶対先程の同僚はそれをするに違いない。

まだ数分と経たぬと云うのに兵士の心は既に見張り番から開放された自分の姿を思い浮かべる事に必死になっていた。


そんな兵士の様子を他所に、この地下の1番奥の鉄格子の中で俺はただただ、生きているという事実だけをひたすら繰り返す毎日を送っていた。

何をするでもなくただ呼吸をし、日に一度だけの食事。

それも生命活動に支障が出ない程度の量だ。

ジャリっと、体を動かせば擦れた音を立て現実を容赦なく突き付けてくるこの金属にももう慣れた。

人は慣れる生き物だと昔どこかで聞いた事があるが、なるほどこういう事か。

こんな状況でさえそれが続けば慣れてしまう……それはつまり心が死んでいくのと同義だ。

しかし、俺は完全にはなれなかった……。

いや、なる訳にはいかなかった。

何故か?

それは、今もすぐそこで弱さを見せまいと気丈に振舞い、しかし心では悲痛な叫びをあげているであろう彼女を助けると誓ったからだ。

人の尊厳も何も無いこんな場所で死んでいいはずがない。

それに状況を打破する為の機会は確実に近付いてきており、その為に準備もした。

だが、気になる事がまだある。

俺を助けたせいで酷い目にあってしまった人達の事だ。

無事なのか?ここからでは何も分からず只々祈るしかない……。


…………。


「ピピピッ、ピピピッ♪」六時を知らせるアラームが部屋に鳴り響く……。

休日の心地よい眠りを妨げるそれに、苛立ちを感じながら(そもそも休日なのにアラーム設定をしたままなのは自分なので怒るのは筋が通らないのだが……)その元凶であるスマホの音量ボタンを押してアラームを止める俺、(あかつき) 海瑠(かいる)は再びまどろみの中に沈みつつあった。

それもそのはず、明け方までオンラインゲームをやっており、眠りについたのは先程だった。

学生なので平日は当然学校があるしゆっくりゲームをするとなるとやっぱり週末だろう。

特に代わり映えもしない退屈な毎日の唯一の癒しだ。

正直学校も行きたくて行っている訳ではなく、話し相手もいるにはいるが、友人と呼べるかと言われれば微妙だし、家で延々とゲームをやっていた方が精神的に楽だった。

そんな訳で寝始めて少ししか経っていないので眠くて仕方ない。

梅雨入りしたので最近は寝苦しい日々に悩まされつつあるが、不思議と今日はあのジメジメ感がないので今から寝ても快適に寝れそうだ。

それにしても今日のベッドはひんやりしていて、いつもより硬い感触がする。不思議に思い手で触って確かめてみたのだが……。


「はっ?」


あまりの違和感に思わず声が出た。

顔を上げ自分の寝ていた場所を確かめてみると、それは馴染んだベッドなどではなく、石畳だった。

困惑を隠しきれぬままその場で辺りを見回してみる。

辺りには青白い炎を灯した燭台が取り付けられた柱が自分を囲むように立っており、その更に奥は薄暗く、ここからでは何も見えなかった。


「え?ちょっ、ここ何処?夢?いやでも夢にしてはおかしくね?」


普通に考えれば夢と思うのが妥当だ。しかし、感覚として現実なのではないかと思わせる何かがあった。

訳の分からない現状にすっかり目が覚めてしまった俺は、とりあえず手元にあったスマホのライトを点灯させると立ち上がって奥へ注意深く進んでみる。

すると数メートル歩いただけで直ぐに行き止まりになった。

しかし只の行き止まりではなく目の前にはスマホの明かりに照らされた扉が姿を表していた。


「このまま此処に居ても仕方がない……よな?」


誰に言うでもなく独り言を呟くと、一先ずその扉のノブに手を掛けた。

キィィィ……。

開ける際の軋む音を静寂な空間に響かせながら扉を開く……。

開いた扉の先は先程の部屋とは違い燭台の炎も何もなく漆黒の闇が無限に広がっていた。


「はぁ……」


俺は思わず溜息をつく。

訳の分からない所で目覚めたと思ったら何も無い暗闇だけの場所。

せめてちゃんとした明かりがあればここが何処なのか少しは把握も出来るのに……。

とはいえ戻っても仕方がないと足を踏み入れるのだが、その直後……。

突如、眼前にボッと青い炎が灯った。

よく見ればそれは先程の部屋と同じように柱に付いている燭台だった。

それも1つではない……。

次々に炎が点灯していき、部屋の造りが姿を現す。

柱は左右に立ち並び、その間の床には紅い絨毯が柱に沿うように奥へと敷かれている。

点灯した炎は手前の柱から奥の柱へと一斉に灯り、部屋の奥まで到達した後、次はそれぞれ左右に広がり、かつ上に上昇しながら最終的には左右の天井付近にあった大きなシャンデリアを灯した。

こうして全ての燭台が灯る頃には大きな祭壇が姿を現していた。

その姿はまるで欧州の有名な大聖堂のようだった。

違うのは中央に安置されている像が十字架に張り付けられた神の子ではなく、ローブで全身を覆った姿の人物の像が安置されている所か。


「すげぇ……。」


祭壇のスケールに圧倒されながら、恐る恐る祭壇の前へと足を進めるとまじまじとその像を見上げ溜息を漏らす。

しばし放心状態で上を見上げていたのだが何か違和感を覚え視線を前方に戻すと……。


「うぎゃぁぁぁぁああああ‼」


俺は思わず大声をあげてしまった。

先程まで誰もいなかった筈なのに目の前に何者かが立っていたのだ。


「だ、誰だ‼」


あまりに驚いて思わず声を荒らげる。

しかし、その者は微動だにせず黙ってこちらを見ている。

よく見るとその姿は後ろに立っている像と全く同じ格好をしており、その顔は伺えない。


「え?ちょっと待てよ……もしかしてご本人さん⁉って事は神様とか⁉」


そこである事を思い出した。

何故、今まで気付かなかったのだろう。


「これってもしかしたら異世界転生ならぬ異世界転移ってやつなんじゃ……て事は、お約束の何でも好きな願いごとを一つ叶えて貰えたりとか⁉」


その考えに至った俺は思わずはしゃぎだすと、神様?がようやく沈黙を破り言葉を発した。


「申し訳ないが人の子よ、私には君が何を言っているのかが理解出来ないのだが?」

「おお!!喋った!!って、え?いやいや、これ異世界転移でしょ?だったら神様に会って好きな願いとか好きなモノ持っていけるのがテンプレだろ?」

「……。」

「……。」

「え⁉違うの⁉アンタ神様じゃないのか?俺を呼んだんだよね⁉」

「ふむ、どうやら認識に違いがあるようだな、人の子よ。私は君を呼んではいない、寧ろ君が私の元に来たのだ。この忘却の神殿に……。それに、今の私には何者かを呼ぶ力などありはしない。」

「俺がここに来た?ちょ、ちょっと待ってくれ!俺は家で寝てただけで、こんな所に来た覚えはない。てか、今の私には、って……昔は力があったって事だよな?何かあったのか?」

「そうだな、おそらくそうなのだろう。だがそれさえも私には分からぬ。ただ言えるのは忘却の神殿が夢と現実の狭間そして世界と世界の狭間にあり、君が迷い込んだと云う事だけだ。そして、もうさほど時間も残されていない。」

「どうゆう事だ?つまり寝ている間に俺の夢とここが繋がったって事?ならこれはやはり夢で、体は家にあるって事なのか?それに時間がないって?」

「夢であり現実でもあるのだよ。今は意識が先に来ている状態だが、()の世界に向かう頃には体も追いついて来るはずだ。そして此処に留まれるのは私だけだ。来訪者は皆元の場所に戻るか、彼の地に導かれるかだ……。」

「彼の世界……、やっぱり異世界転移なのか。なあ、その世界は安全なのか?俺は何も持ってないんだ。せめて何かないのか?」

「安全か……、それを保証する言葉を私は言えぬが……そうだな、私にはもうほとんど何も残っていないが、せめてこれを渡しておこう。」


そう言うと彼は自らの指にはめていた銀の指輪を渡してきた。


「これは……?」

「それは私の一部であり、少しだけ残っていた最後の力だ。それを君に託そう。」

「力……これを渡して大丈夫なのか?あんたの一部なんだろう?っておい!その体‼それに周りが消えかかってるぞ‼」


見れば祭壇と目の前の男は砂が風に吹かれるかのように消え始めていた。


「それこそ見解の相違だ。私が消え始めているのではなく君がこの世界から消え始めているのだ。」


その言葉を聴いている途中にもかかわらず、だんだんと視界が揺らぎ、意識が遠のく。

何か言い掛けようとしても言葉に出来ず、遂には完全に意識を手放し、俺はこの世界から消失した……。

来訪者が先程まで居た場所を見つめながら祭壇の主は呟く。


「人の子よ、彼の世界を任せたぞ……これでここでの私の役目も終わりを迎えた。では、私も行くとしよう。」


自らを覆うフードを取り去り、初めて見せたその表情は何かを決意したように瞳の奥に光を宿らせていた。


………………。

読んで下さった方ありがとうございます!

感想等受け付けておりますのでよろしくお願いします!


PS 日本語は難しい...

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