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レネスの過去②

「私って、もう英雄の力を持ってるの?」

ロイと手を合わせたままレネスは言った。


「はい、すでに讓渡は終えています。」

「なにも変わらないけど...。」

レネスは体のあちこちを見ている。

英雄になったらすぐに何かが変わると思っていたのだろう。


「力の使い方は後ほどお話します。それより、今からユニークスキルについて大事なことを話すのでしっかりと聞いてくださいね。」

「はいっ!」

背筋を伸ばし、姿勢を正すレネス。

英雄の力について知れることが嬉しいのか、キラキラと輝く瞳を大きく見開いていた。


ロイはコホンッと咳払いをし、話を始めた。

「ユニークスキル『怠惰』は英雄のスキルの中でも精神攻撃に大きく秀でた能力です。身体への直接的な攻撃はほとんどしません。」

血とかが嫌いな方でも大丈夫ですっ。とウインクをしながら話すロイ。

「詳しい能力は最後に話します。今話すべきは、このユニークスキルの弱点についてです。」


弱点と聞いて、少し驚いた表情になるレネス。

本や歴史書では、英雄は無敵の存在として書かれているのだ。

弱点があるなどとは誰も思わないのだろう。


「『怠惰』の弱点は、スキル所有者の睡眠時間が力の威力や持続時間に直結してくるところです。」

少し間を開け、ロイはそう言った。


つまり、「睡眠時間=力」という事なのだろう。


「なんだー。弱点って聞いたからちょっとドキドキしてたけど、寝ればいいなら大丈夫そうね。」

胸に手を添えながら、安堵の息をもらすレネス。

そんなレネスの様子を見て、ロイが口を挟む。


「弱点ってほどじゃないって思っているでしょうけど、これが結構大変なんですよ?」

そう言って、ロイは部屋の中を少し飛び回った。


「一番の問題は、長時間の戦闘に不向きという点ですね。敵がこの弱点を知り、籠城や時間稼ぎを始めればあっという間に力を使い切ってしまうでしょう。また、もう一度大きな力を使いたい場合はある程度の時間寝なければいけません。その間、体は無意識の状態となるので戦闘の継続は困難になります。」


これを聞いたレネスは弱点の危険性を理解したのか、さきほどまでの余裕そうな表情から一変、真面目な眼差しを向けて話を聞いていた。


「まあ、この弱点についてはある程度の解決方法がありますので、普通は大丈夫だと思うのですが...」

「解決方法?」

コテっと可愛らしく首を傾げるレネス。

「じゃあ、力の詳細と共に話しますね。」

そう言って、ロイの説明会が始まった。




「っとまあ、このぐらいでしょうか。」

「うう...。全部覚えられたかなぁ...。」

ロイの話で聞いたことを整理してみよう。




能力-精神攻撃系

技-怠惰(レジネス)・・・相手の精神や身体への攻撃魔法。かけた相手の精神や筋肉を堕落させることで、一定時間相手の自由を奪う。


-回復(レスト)・・・身体の自動回復。


-堕落剣(コノプシソード)・・・怠惰の英雄だけが使える剣。触れた武具の破壊・斬った相手の精神体に攻撃をし、意識を刈り取る。


-怠惰武装・・・怠惰の英雄の防具を身に纏う。装着中は魔力が回復する。


-催眠(ヒュプノス)・・・相手を眠らせる魔法。


-英雄覇気・・・自身に怯える者、戦意を喪失した者の心を操る。


弱点-睡眠時間が力の強さを決める

解決策-寝溜め




こんな所だろう。

睡眠時間の解決方法が、とても簡単なことだったことにレネスは大層驚いていた。

『怠惰』の攻撃自体は非常に強力なものだ。

自動回復をする上に、相手の攻撃を一撃でもくらえば戦闘が困難になってしまう。

敵からすれば、たまったものではないだろう。


この力を使えるという事に、レネスは歓喜の声を出していた。

これでこの国を、お父さんとお母さんを守れる。と呟くレネス。

「フフッ。」

そんなレネスの喜びようを見て、ロイは頬を緩めた。


大きな力を得ても、元の心を忘れず他人のことを考えられる心。

ロイは力を授けて正解だったと確信を持つことが出来た。


「最後に一つだけ。」

とロイ。

「この力についてはあまり話さないこと。特に弱点は話しちゃダメですよ。どんなに信用している人でも、ね。」

ここまで念を押すのだ。何か意図があってのことだろう。

「うん。わかった。」

レネスは頷き、了解の意を示す。


「それじゃあ、もういい時間だし私は行くわね。」

時計を見ながら話すロイ。

「どこに行くの?」

ロイの行先が気になるレネスは、どこへ行くのかたずねる。

「あなたの中ですよ。私はユニークスキルそのもの。これからはずっと一緒です。」

ニコッと柔らかい表情で笑うロイ。


ロイの笑顔によって、レネスの表情も自然と笑顔になる。

「これからよろしくお願いしますね。」

「うん、よろしくね。」


そして、レネスは眠りについた。




ジリリリリリリリリ!!!


「んー...、」


ひたすら鐘を叩き続ける目覚まし時計の音に、無理やり意識を覚醒させられる。


実は、レネスは朝にとてつもなく弱いタイプなのだ。鐘の音など気にせず、いつもは母が起こしに来るまでベッドから出ることは無い。


しかし、今日の朝は全く違った。


「なんか、体が軽い?」


目覚めの良さに、体の軽さ。これまでになかった感覚がレネスの体に行き渡っていた。

恐らく、『怠惰』のおかげだろう。

睡眠時間=力ということは、寝れば力が上がるという事だ。

朝のこの状態に関係していことは明白であった。


ドンドンと扉を叩く音が部屋に響く。

レネスはベッドからでて、鳴りっぱなしの目覚まし時計を止め扉を開けた。

「お母さん!おはよ!!」

「レネス!起きなさ...ってあれ?おはよう...。」

いつもと違う様子のレネスに戸惑うセフィア。

「どうしたの?」

急な変化にたずねずにはいられなかったのだろう。

「なんかね、調子いいの!」

とだけレネスは答え、部屋を出ていくのだった。




正午、子供騎士団の訓練が始まる時間になった。

当然、レネスは集合時間の10分前に集合場所に到着している。

続々と集まってくる騎士団のメンバー達。

その中には、キールの姿もあった。


全員の集合を確認したキールが皆の先頭に立ち、話し始める。

「みんな!明日でレネスも15歳になる!これはつまり、俺たち子供騎士団が騎士になるための準備が出来たということだ!」


「俺たちは騎士になる!そしてこの国を守る!俺たちの夢の実現のために、残りの時間を目一杯使って試験の準備をしようぜ!!」

『おおっ!!』

キールの言葉に興奮を抑えられない子供たちは、それぞれ反応を見せる。

木刀を掲げる者もいれば、拳を突き上げる者もいる。

騎士になる。という目標の実現に胸を大きく膨らませているのだ。


「よし!素振りをはじめろー!」

子供たちはお互いに距離をとってから素振りを始める。

レネスはいつも通り、一人隅で木刀を振っていた。

しかし、「いつも通り」ではなかった。


レネスの振る木刀は風を切る大きな音とともに、辺りに風を巻き起こしていた。

レネスが起こす風によって、草木が揺れる。


「これが...英雄の力。」


突然変わった自分の剣の威力に、驚きを隠せないレネス。

しかし、驚いていたのはレネスだけではない。

レネスの変化にきずいた子供たちは、一斉にレネスの元へ集まる。


「なんだよレネス!」「すっげー風だったぞ!」「なにがあった!?」「どーやったの!?」

など、口々に話す子供たち。

「えっと、その...。」

「お前達、なにしてんだ!素振りに戻れ!!」

質問攻めを受け、困り果てるレネスにキールが助け舟を出す。

キールの一言で、グチグチ言いながらもみんなは素振りに戻っていった。


「ありがと。キール。」

「おっ、おう。」

可愛らしく笑いながらお礼を言うレネスに、少し頬を染ながら素っ気ない態度で返答をするキール。

「じゃあ、俺も素振りに戻るから。」

そう言い、キールも戻っていった。

レネスの様子を見て、あまり喋りたくないことだと分かったのか、彼だけはあまり聞いてくることはなかった。

キールの気遣いに感謝しつつ、レネスは木刀を握る手に力を込めるのだった。



「よーし!今日は終わりなー!明日は最後の訓練日だから各自、自分の足りないとこを練習するように自主練しろー!」

キールの掛け声と共に、本日の訓練も幕を下ろした。



家に帰り、夕飯・風呂を済ませたレネスは、自室へと戻りベッドに腰を下ろす。

「ロイ、でてきて。」

そう言うと、レネスの目の前に怠惰の精霊、ロイが現れる。

ユニークスキルを手にしたレネスは、自由にロイを呼び出すことが可能になったのだ。

「どうしましたか?」

ロイは呼び出した用件をたずねる。

「明日の訓練は各自していいことになったから、明日『怠惰』の力を使ってみたいんだけど...、使い方を教えてくれないかな?」

「そんなことなら喜んで教えますよ!」

パンッ。と両手を合わせてロイは喜ぶ。


「ありがとう。」

快く引き受けてくれたロイに感謝をし、レネスは眠りについた。

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あと少し過去回想続きます!

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