2- 9 僕たちは知りたい
「……という感じです」
来意が話し終えると、誰もがふぅっ、と息を吐いた。
みんな、その時の事を思い出していたのだろう。
みんな瞳は寂しげだったが、涙は出ていなかった。
「しかし、変じゃないか? 墓参りできないって、最初に言っていたな、おまえら。 だけど今聞いた話では墓を作ったんだろう? ならどうして墓参りに行かないんだ?」
佐太郎が尋ねた。 もっともな意見である。
「ラムールさんが魔法陣かけて、場所を分からなくしてるんですよ」
清流が答えた。
「そうなのか?」
再度、佐太郎が尋ねる。
するとみんな、頷いた。 そしてアリドが付け加えた。
「オレ達だって、当ー然その場所を探したっすよ。 来意の勘も使って。 しらみつぶしに。 だけど森の中のどこをどー探しても見つからなかった。 巳白に空から探してもらったこともあるし。 でも無いんすよ」
「じゃぁ、来意がおれに聞きたいことのメインはそのあたりか?」
佐太郎が空になったカップをはじいて尋ねる。
「そうです。 僕たちに墓の場所も教えない、新世さん達の部屋も鍵をかけっぱなし、二人の命日にも寄らない、どうしてラムールさんがそんなことをするのか。 占っても何も出てこないし。 勘でも分からない。 あと2月もしたら二人の命日がやってきます。 だから僕――たち、は知りたいんです」
来意は一呼吸おいて、つけくわえた。
「一夢さんと、新世さんと、ラムールさんの間に何があったのか。 ラムールさんは何をしたいのか」
佐太郎は黙り込んだ。
それは長い沈黙だった。
そしてゆっくり口を開いた。
「――そうか、そうだよな。 お前達がこの陽炎の館に来たときは、あいつはもう王子付教育係の職についていてこの館にいなかったな。 お前達にとっては時々遊びに来る人、位にしか思ってなかっただろうな。 遊びに来ると言ってもお前達と遊ぶことも少なかっただろうし……」
「たいてい新世母さん達の部屋にとじこもってましたからね」
清流が言った。
佐太郎は頷く。 そして尋ねた。
「お前達は、ラムールを信頼しているか?」
予想外の質問だったのだろう。 清流達は顔を見あわせた。
「リトは?」
いきなり佐太郎はリトに矛先を向けた。
「え……っと、私は。 ラムール様はすごい人だとは思いますけど……」
素直なリトの答えが、他のみんなにとってもすべてだった。
「訳がわからない人です」
リトの返事を聞いて佐太郎は思った。
――こいつらは、ライマがどうして王子付教育係になったかすら知らないんだ。 ラムールという名に変え、髪の色を染め、声色を使い、人工皮膚で体を男になりすまして、すべてを犠牲にして教育係の道を歩んでいることを知らないんだ。
佐太郎はみんなの顔を見た。
――そしておれは、それをこいつらに話す訳にはいかない。 話したところで何の解決にもならない。 今、一番の問題は……
「分かった!」
元気よく佐太郎は言った。
「あいつは不器用なヤツだからな、別に悪意があってそういう事をするはずがない。 でもお前達も墓参りはしたいだろうし、おれだってしたい。 だから」
一呼吸おく間、羽織達が息をのんで次の言葉を待っていた。
「おれが墓の場所を聞いてきてやる」
良かった、やった、と羽織達は喜んだ。
喜ぶ羽織達の姿を見て逆に佐太郎は――不安になった。
ラムールの行動に悪意が無くても、理由はあるはずだから。
果たして素直に教えてくれれば良いが……
その後リトは白の館の自分の部屋に帰った。
陽炎の館の弓の部屋から科学魔法でドアを繋げてもらっているので楽なものである。
とは言っても専ら利用するのはリトの方で、弓のほうといえば毎日律儀に普通の道を通って通ってきているのだが。
リトは部屋に入ると電気をつける。
外は大分暗くなっている。
くぅ、とお腹が鳴った。
その時、リトの部屋の扉が廊下側からノックされた。
「リトー、いる?」
監督係、ルティの声だ。
「あ、うん。 今帰ってきたトコ」
そう言ってリトはドアを開ける。
少女なのに、どこか少年のような感じのするルティは気の置けない友達だ。
「ラムール様がお呼びだよ」




