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 2- 6 一夢と新世が死んだ時2

 新世も一夢も、夜になっても帰ってこない。

 こんなことは初めてだったけれど、うろたえる羽織達のために、アリドと巳白はここがお兄ちゃんとしての出番だとばかり、夕食を作り、食べさせ、風呂をわかし、みんなの面倒をみた。

 テーブルの上には、新世と一夢がいつ帰ってきても食事が出来るように料理がのっていた。

 アリドと、巳白。 二人の合作の料理。

 少し焦げたり、味が薄かったり、半煮えの所もあるかもしれないけれど、平気だった。

 きっと新世は帰ってきたら感動しながらこの料理を食べるだろう。

 一夢だって、「旨い」と言って食べてくれるに違いない。

 絶対、絶対、喜んでくれる。

 他のみんなを部屋で寝せて、アリドと巳白は一晩中、リビングで待っていた。

 しかし、朝がきた。


 

 あえて巳白とアリドは羽織達を起こしに行かなかった。

 みんな、ぐっすりと今は眠っているはずだから。

 だって明け方まで一睡もできずに布団の中で目を開けていたはずだから。

 

 

 昼になって、やっとみんな起きてきた。

 アリドと巳白は昨日の夕食は捨てて、新しく食事を作っていた。

 悲しいことに、少し上手に作れていた。

 みんな、何も言わず食べた。

 


 どうしたんだろう

 なにがあったんだろう

 


 みんな、考えていることは同じだった。

 ただ

 捨てられたとは、微塵(みじん)も思わなかった。

 

 

 夕方になり、天気が荒れてきた。

 いやな風が体を責め立てるように巻き付く。

 ざわざわと木の葉が揺れ、鳥のさえずりは欠片も聞こえず。

 暗雲垂れこめ、今にも雨が降ってきそうだった。

 


 そのとき。


 遠くから足並みの揃った地鳴りが聞こえてきた。

 ザッザッザッ

 ガシャ、カシャと鎧がこすれ合う音もする。

 

 なに?

 

 そう思った時、ものすごい勢いで玄関のドアが叩かれた

 まるで扉が破れるのではないかと思う程、激しく。

 そして誰かが玄関を開けるよりも先に、ドアがねじまがるのではないかという程の音を立てて開かれ、甲冑に身を包んだ軍団が館の中になだれ込んでくる。


「こちらは国連軍安全管理局である! 一夢と新世は何処にいる!」


 隊長らしき男が叫んだ。


「な、なんだ、お前ら!」


 アリドが殴りかかろうとするが逆に投げ飛ばされる。


「ええい、どけ! 隠すと為にならぬぞ! 構わぬ、探せ!!!!」


 号令の元、兵隊は一斉に館の隅々に入っていった。


「やめて! まって!」


 弓達が叫ぶが兵士達は遠慮無しに追いすがる羽織達を投げ飛ばし突き放す。

 アリドと巳白は慌てて羽織達の手を引いて隅に行き、兵士達から守る。

 兵士達が階段を上っていく。

 そっちは一夢と新世の部屋がある階段だった。


「だめぇっ! いくなぁ!」


 義軍が声を上げる。

 あばれて兵士達に飛びかかろうとする彼らを巳白とアリドは抱きしめて押さえつけた。

 どうしたってかなわない。

 窓の外では雷雲がゴロゴロと音を立てた。

 ギラリと一閃、空が光り、天が落ちてきたかと錯覚するような地響きとともに雷が落ちた。


「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 それと同時に、階段を上がっていった兵士達が階段を転がり落ちてくる。

 そして階段を下ってくる「それ」に気圧されてじりじりと後ずさりをする。

 ゆっくりと、「それ」の姿があらわれた。

 

 

 

 ラムールだった。

 

 

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