2- 4 一夢・新世 そして佐太郎
一夢はなぁー、馬鹿の上に更に三つくらい馬鹿をつけていいくらい、真っ直ぐで、新世ひとすじだったなぁ。
おれと一夢達が初めて会ったのは、ヤツが11才くらいだったかなぁ。
おれははじめ、老師に用事があってこの村に寄った。
するとそこで新世に会った。
おれは――怒るなよ、清流。 俺は新世を捕まえようとしたんだ。
ああ、だから昔の話だって。 頼むからつっかかるな。
それを止めに来た一夢にボッコボコにされてなぁ。 おかげで数日間は陽炎の館で看病された。 ははっ。
新世は翼族のハーフだったから、その頃はまだ迫害がひどくてな。 スイルビ村の中でも相手にしなかったり怯えたりするヤツの方が多かった。
おれも実際、何度も新世を捕まえようとし、そしてその度に一夢にボコボコにされてな。
一夢はいつだって新世のそばにいたし、いつだって新世がひどい目に遭わないように守っていた。
何度目かな。 またボッコボコにされて、おれは気を失った。
そしたら顔に何か触れたんだ。
目を開けると、新世が「ごめんなさい」っていいながらおれの頭を撫でていてなぁ。
その後ろじゃ一夢がバツが悪そうに老師の隣に立っているんだ。
なんでか突然、こっちが悪いことをしているような罪悪感に駆られてな。
それから、どういう訳か、おれは一夢と新世の友達になってしまったんだ。
一夢は老師の話じゃな、呆れるくらい生まれたときから新世ひとすじだったそうだ。
新世を守るためにぼくは強くなる
新世を泣かすヤツは許さない
そう言ってどんどんどんどん老師の剣術の技を習得していって、半端じゃなく強くなった。
一夢が強くなればなる程、新世は表面的な迫害は受けなくなった。
しかし、それは新世が受け入れられたのではなく、新世に何かしたら一夢の報復が怖いから迫害しなくなっただけの話だ。 もっともあの頃はそれで精一杯だったんだけどな。
そこで一夢は「北の森の番兵」としての職を選んだ。
自分が多くの人を助ければ、多くの人の役に立てば、きっと誰か、人を助けてくれる者が大事にする相手なんだ、悪い生き物じゃないんじゃないか、と新世を受け入れてくれることだけを夢見てな。
確かにそれは正しかった。 少しずつ、新世は地域に受け入れられるようになった。
そして新世はある働きが認められ――ああ、隕石落下の話はもう聞いたのか? そう。 それだ。
そして新世は一夢とめでたく夫婦としてこの村で式をあげた。
異生物が住むということで、受け入れきれない村人は出て行ったから、本当に少しの村人だったけどな、生まれてからの一夢と新世を見てきたみんなは、本当に祝福したんだ。
新世が白いドレスを着てな。 一夢も礼服を着てたっけ。 見ているこっちが恥ずかしくなるくらい一夢のヤツはカチコチでな。 本当に、いい、式だった。
それからしばらくしたら、どういう訳か、お前達が増えてた。 あっはっはっはっ。
お前達が来てからというもの、本当に二人は幸せそうだったぞ。 新世までお前達をお説教するんだからな。 あんな色々な表情を見せるなんて、まず、おれが最初会ったときの頃の環境からは考えられないことだった。
ああ、本当に幸せそうだった。 いや、幸せだったんだ。 あの二人は。 間違いない。
なんだ? おまえらも嬉しそうだな? 嬉しいだろうなぁ? はっはっはっ。
ふぅ。
そして――
おれはちょっと用事があったんで、この国を離れていた。
そして帰ってきたら、二人は亡くなっていた。
だから最後の言葉は何だったのかなぁ。
メシくわせてもらって、陽炎の館を後にする時の、「またな」だったかなぁ。
また、も何も無かったけどな。
勿論、おれは何がどうしたのかライ…ラムールに聞こうとしたさ。
だがなぁ、聞けなかった。
いやね、聞いたんだ。 聞いたけど
「二人は、死んだ。 訳は分からない」
としか言わなかったんだ。
それ以上、何もおれは聞けなくて、な。
墓は当然、老師の墓の場所と同じ、神の樹の所だと思っていたんだがなぁ。
違ったとはな。
おれも、知らなかった。
ところで。 来意。
おれが話せるのはこの位なんだけど、よければ聞かせてくれないか?
一夢と新世が死んだ時の事を




