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 2- 2 地雷だったか?

「母さん……とは新世のことか?」

「はい」


 巳白がそう答えるとラムールの瞳が暗く沈んだ。


「親なら子供が拘束具を付けられるのを見て喜びはしないだろうけどね」


 ラムールはぶっきらぼうにそう言うと、再び歩き出した。

 巳白も黙って、後に続いた。

 少しして、巳白は口を開いた。


「父も母さんも喜びはしないけど、もう会うことが出来ない人が乗り越えたって事を体験できるのは、父さんや母さんに近づけるような気がして……俺は絶対嫌だとは思えないんで……」

「新世が拘束具を身につけたのは後にも先にも一度きりだ」


 すかさずラムールが言った。 驚いて巳白が尋ねる。


「そうなんですか? 俺の父はいつも着けていました」

「いつも?」

「はい。 俺たちは付けられたことは無かったですけどね。 母親はいっつも外せ外せと言っていたみたいですけど」

「お母様が?」

「はい。 父は翼を使えなくても人間として生きていくのに不便はないから、周りの人のためにも付けているほうがいいんだよ、って言ってましたけど」

「珍しいな。 お母様の方が外せ外せとおっしゃっていたのか」


 ラムールの表情がほんの少し明るくなる。 そして巳白の方を向いて尋ねた。


「どうしてお母様は拘束具を外せ外せとおっしゃっていたと思う?」


 巳白は苦笑いをしながら答えた。


「悪戯して空に逃げた俺たちを追いかけて捕まえてこいと言ってました」


 予想外の返事にラムールはプッと吹き出す。


「アハハ。 お母様ならではだ」


 笑顔になったラムールを見て、巳白は嬉しそうに微笑んだ。

 



 

「来意の入れてくれるコーヒーは旨いなぁ〜」


 そう言って佐太郎は空になったティーカップをぐいと差し出した。

 佐太郎。 ラムールの友人であり、錬金術師の「おじさん」である。

 来意が追加のコーヒーを注ぐ。 佐太郎はコーヒーを見つめる。


「おれが飲みたい〜と思う濃さで作ってくれるんだからなぁ」

「まぁ、勘で」


 来意は佐太郎のカップに入りきれなかった分を自分のカップに注ぐ。


「……で、おれに何を聞きたい?」


 佐太郎はコーヒーの滴が一滴、来意のカップの中で弾けるのを見届けてから言った。


「来意がおれにコーヒーを入れてくれた後は必ずおねだりがあったからなあ」

「そうでしたっけ?」


 来意は少し図星だったようで目をそらす。


「ああ。 だけど旨すぎるから許す。 と、その前に巳白はどこだ? 昨日、翼族捕獲緊急連絡弾が上がったから心配していたんだが」


 佐太郎のその一言で、一瞬にしてみなの動きが止まる。


「……地雷だったか?」


 何かを察して、佐太郎はバツが悪そうにコーヒーを飲んでごまかした。


「佐太郎さん。 どうしてラムールさんはああも自分勝手なんですか?」


 立ち上がって清流が言った。 佐太郎の返事も聞かず、空になったスープ皿を持って厨房へと消える。


「自分勝手……か。 まぁー、そうだなぁ。 あいつは自分勝手というか不器用というか……」


 佐太郎は言いにくそうにブツブツと答える。


「あいつなりに頑張っているんだけどなぁ」

「でも、ひどすぎます!」


 声を荒げたのはリトだった。


「巳白さんが捕まったっていうのに、すぐ迎えにも来ないで……。 拘束具も付けたままだし、あげくのはてには身勝手な行動をするなとまで言う事はないんじゃないですか?」


 声を聞いてか、清流も厨房から出てくる。

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