第一章 二項 非日常のヒトコマ【テンプレ?】
「・・・うん? ・・・・俺、助かったのか?」
目を覚ますと知らない天井が目に入る、若干の混乱を感じながら、それでも置かれた状況を確認したい俺は、体をゆっくりと起こし周りを見渡す。
「・・ここ、・・・何処だ?」
本当に何も無い部屋、真ん中に今まで寝ていたベッド、四方を壁に囲まれ窓もドアも無い・・・・
「・・・・どうやって運ばれたんだ俺???」
壁に触ってみる、まるでコンクリートの感触でひんやりとしている、順に四方の壁も確かめてみるも同じ感触が伝わり、段々と焦りが込み上がってくる。
「嘘だろ! おい!!!誰か居るんだろ?ふざけんな!返事しろよ!!! ここから出せッ!!」
壁をドンドンと叩きながら、閉じ込められている実感と焦りから感情を抑えられず、叫びは段々大きくなって来る。しばらくの後、裕一はうなだれた状況でベッドに腰掛けていた。
「落ち着いたかね?」
いきなり背後から声を掛けられ、裕一は身体を震わせる、出入口が無いこの空間に、一人閉じ込められているという実感を嫌と言う程に感じていた裕一は、恐る恐る振り向いた。
其処には、何も無かったはずの空間なのに、豪奢な椅子に座って無表情に此方を見ている老人が居り裕一にもう一度声を掛ける。
「落ち着いたかねと聞いたのだが?」
「・・あぁ? お前誰だ、何処から入って来た?、俺を閉じ込めたのはお前か!!早く此所から出せッ!!!」
裕一は老人に詰め寄りながら怒鳴り出すが、老人は平然とした様子で裕一に語り掛ける。
「なるほど、此所から出たいと言うが何処に行く気かね?、 既に君は死んでいると言うのに」
「!!!・・な、な、何言ってんだ、俺生きてるだろ喋れてるし、動けてるし、爺さん頭大丈夫か?冗談はやめてくれ」
「冗談をやめるのは君の方だよ、覚えているだろう?君が最後に見た光景を、あの状況で普通の人間がどうやったら助かるのかね?、それは君も薄々気づいているのではないかね?」
「・・いや、・・・まさか、そんな・・・、まぁ、確かにあの状況じゃ・・・・本当なのか?、糞ッ!!あのブス!!!、俺を殺しやがったのか!!、あり得ねぇだろたったあれだけの事で!!、ふざけやがってぇ~ッ!!!、・・・・じゃあ何か、こんな何も無いとこが天国とか地獄とかでも言うのかよ、答えろよ爺!!!、薄汚れた爺ののお前が神とでも言うのか?、それとも死神かよ!?」
「どちらも違うのぉ、強いて言うなら魂の管理者と言うところかね」
「管理者?、じゃあ何か?、俺を天国やら地獄やらに今から送るのか?、ならさっさとやってくれ!、こんな何も無い所よりまだましだッ!!」
「急くで無い・・・、なるほど君は口も悪いし行動も悪い、じゃがそれでも殺される程の事でも無いと思っての?、ついては君にやり直しのチャンスをやろうかと思って此所に来てもらった。」
「やり直し?、生き返らせてくれるってのか?」
「生き返らせるのは無理じゃな、何せ君の器はバラバラなのでな、やり直したいと言うのであれば、違う世界でと言う事になるのぉ」
「・・・違う世界か、・・どんな世界・・、いや何でもいい、こんな所によく分からない爺と二人きりよりは絶対マシだろ・・、分かった爺!!頼む、やり直したいから早く送ってくれ」
「決断が早いのはいいが、送られる世界の事とか知りたくは無いのかの?」
「別にいい、どうせ選択は無いんだろ、ならさっさとこの空間から出してくれ、・・気が狂いそうだ」
「・・・分かった、なら旅立つがよい」
管理者がそう言うと同時に、俺の意識がその空間から消失した。
管理者は既に居なくなった裕一に語る。
「君のやり直しが上手く行く事を祈る事としようか、まぁ、君の悪い癖は矯正させるから、同じ様な事にはならんじゃろ」
そう言い残すと管理者は、空気に溶ける様に姿を消した。