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牢屋内生活2

 ◆四十四日目


 今日はいつも通り筋トレして、旗上げゲームして遊んでたら変な奴が来た。赤い外套を着たくすんだ金髪のクールビューティーだ。勿論、角と翼の生えた悪魔さん。

 自身をオリアンティ・パナガリスと名乗ったその女は俺を見ると「その姿では……」とか意味深な言葉を残した後、何故か俺に仏像みたいなのをくれた。見た目外人なのに仏像? とか思って疑問を解消しようと思ったのだが、そもそも言葉が喋れないことを思い出して絶句。いや…絶句も何も、言葉を喋れないのだからこの言葉自体が――というのは置いといて、うーうー唸っている俺を尻目にオリアンティはコソコソと帰っていった。

 最近は変な奴が多いな…とか思ってたらいきなり廊下に笛的なものが鳴り響いた。そして、廊下の奥から何人もの人たちのの「侵入者だ!」とかいう声が響き渡る。

 もしかしておりアンティーは侵入者だったのかもしれん。何しにきたんだろう? まさか俺にこれ渡しに来たわけじゃないだろうし……うーむ、と唸っていると不意に扉の施錠が外れた。そして、魔法か何かだと思うけれど、頭の中に「侵入者を倒せ」とか言う言葉が響き渡った。すると他のアンデッドたちにも命令が下されたのか、一斉に牢内からアンデッドたちがうじゃうじゃと…。うわ、めんどくせー事になったべさって心のなかで愚痴ってみたのだが、その感情は良い意味で裏切られた。どうやらこの命令、俺には聞かないらしい、ラッキー。

 それは俺が確固たる意思を持っているからなのか、それともオリアンティのくれた像のおかげなのかは不明だが、行かなきゃなーって思う程度だった。

 久しぶりに幸運な出来事だったので気分が良くなりました、ヤッホゥ。

 因みにワイトっ子がどこか行こうとしたので強制権を使ってみたのだが効果無し。しょうがないので、「侵入者を倒す前に、味方のアンデッドを背後から攻撃して倒せ」と命令しときました。

 なんか、もう今日は夜が遅いので寝ることにする。

 おやすー。


 ◆四十五日目


 残念、ワイトっ子は帰ってきたものの進化していなかった。そもそも、俺の命令を実行したのかな? とか思ってたら不意に思いついた…よくよく考えたら、もしワイトっ子が進化して俺より上位種族になったら俺の命令は聞くのだろうか? むしろ俺が命令されてしまうかもしれん。

 それだけは嫌なので、取り敢えず俺が先に進化しないとな。


 ◆四十七日目


 今日はコロッセオ。前回と同じくスケルトン二体が出てきた。相変わらず単調に切り下ろすだけなので、先読みして足払い、踏み潰すのコンボで倒した。でも、二体同時は非常に相手にするのが難しい。その代わりレベルも結構上がるので、うまうま。


 ◆四十八日目


 なんと今日もコロッセオだった。二日連続とはさすがに予想してなかったので、ビビりました。

 いつも通り操られながら薄暗い廊下を歩いてコロッセオに行くと、とんでもないことになっていた。なんとスケルトンが計十一体もいたのである、オゥマイゴッド!

 俺のゾンビ人生(?)終わった…と黄昏ていると、どうやらそのスケルトン全てが俺の敵って言うわけじゃないらしい。なんと六対六のパーティー戦なのだという。その中で俺はリーダーということにされていた。所詮ゾンビで脳みそ空っぽだから、観客向けの形だけのリーダーだろうけれど、意味もなく頬がゆるむ。まぁ、頬は相変わらず腐っているけれど。

 と…そんなこんなでバトル開始。戦闘は他のスケルトンに任せて俺は傍観、時々援護。

 しばらくすると観客の悪魔さんたちが積極的に戦おうとしない俺に苛立ったのかギャーギャー言い出したので、動くことに。ちょうどタイミングよくスケルトンの数が味方四、敵二にまで減っていたので、敵の背後に回ってサクっとブッ殺。味方のスケルトンに気を取られていたので余裕でした。

 で、まぁ、うざったらしい実況の声と共に戦闘は終了したわけなのだが――フフッ…俺にはまだやることが残っているのである。無防備なスケルトンさんたちへの裏切り、卑怯な不意打ちである。スケルトンさんたちは魔法か何かで、俺を味方だと認識させられているので、何の抵抗もしない。勿論俺にもあんま攻撃したくないなーぐらいの感情が身を包んでいる。腐った脳みそのゾンビさんみたいな、意思を持たない奴らなら唯々諾々と命令に従うのだろうけれど、俺には聞かないのであーる。いつものとおり、呻き声の「ヨッシャー」を言いつつ突貫。途中、コロッセオの観客席から迫り出すように設置された、監査席っぽい所にいた魔術師的なのが、困惑しながら変な呪文を唱えていたけれど効果は特に無し。結果、何の苦もなくスケルトン五体を討伐、ヤッホゥ。

 コロッセオへ帰る間際、魔術師が誰かに怒られていた、メシウマメシウマ。

 今日は計六体倒して、レベルが八十レベルになったぜー!

 新しい技は、胃液と臭い息! ……なんか強くなって嬉しいはずなのに苦しいのは何で何だろう……心でさめざめと泣く事にしました。

 さて、と……切り替えて明日からもこの調子で頑張りましょっと。


 ◆四十九日目


 今日も筋トレ。

 またネズミがいたのでモグモグっと。


 ◆五十日目


 今日はワイトっ子がコロッセオ。特に怪我もなく戻って来ました。

 そんなことよりも聞いてくれ。大変なことを聞いてしまった。

 例の悪魔さん二人組が世間話をしていたのだが、その片割れからとんでもない爆弾発言が。

 なんと俺はお偉いさんに目を付けられているらしい。もしかしてインテリだろうか? と思ってたら違うらしい。他のお偉いさんだそうだ。目を付けるというのがいい意味だと良いんだけど、そうじゃないっぽいニュアンスだった。面倒な事になったなーと内心で叫ぶ。



 ◆五十一日目


 今日はインテリが来た。今日は一人出来たらしく、あの仲良し二人組の姿は見えなかった。インテリはどうやら俺のレベルをある程度把握しているらしく、もうすぐでレベル100だということで、どんな様子か見に来たらしい。そして、俺を助けるためだとか何とかで助言をくれるらしい。ってことで期待してたのだが、なんか「その目だよその目…」とか「君は素晴らしい」とか、ただの感想的なことをほざいただけだった、ガッデム。

 てか何の助言なんだよ、クソ野郎。

 何か明日あんのだろうか……。

 

 ◆五十二日目


 案の定ありましたよ、ガッデム。

 インテリの野郎……こういう事なら言えってんだよ。

 今日はコロッセオだったのだが、なんと敵が人間だった。しかも三人もいる。といっても一人は子供だから、実質二人だろうけれど。

 二人の大人はろくに飯を食ってないのだろう、共にヒョロヒョロでフラフラのどっちがゾンビか分からないような有様の奴だった。そして子供を含め三人とも金髪のコーカソイドだった。瞳の色は大人が青、子供が緑だった。

 これが噂の奴隷というやつだろうか?

 まぁ、そんな事よりも大切な事がある。そして、ヤバいことだ。それは相手はゾンビではない人間だということ。

 別に人間だから殺し辛いとかではない。とっくに俺の神経や感性はアンデッドのものになっているのだから。普段から濃密な死――つまり自身や周りのアンデッドに触れているものだから『殺す』ということに関しては人間的な感情は非常に希薄なのである。だからそれは問題ではない。

 問題なのはそう――敵が〝腐った脳みそ〟のゾンビではなく〝健常な脳みそ〟を持った人間であるということ。つまり知能を持った敵であるということだ。

 俺は格段能力が高いゾンビではない。回避率だって他のゾンビと同じだし膂力も脚力も変わらない。今まで格上のゾンビなどに勝ててきたのは偏に俺が知能を持っていたからだ。知能の優位さを有効利用し、相手の攻撃パターンを理解し、読む事によって勝ってきたのだ。

 つまり今回の相手にはその圧倒的なアドバンテージを全く得られないということである。しかも相手――つまり人間のほうが圧倒的に敏捷性が高い。だというのにその上敵は三人もいるのである。

 まぁ、唯一俺に有利なのは武器が棍棒だということ。これなら剣と違って一発でやられることはないだろう。

 だが、俺とてゾンビ、頭が弱点である。潰されたら終わりなのだ。武器が棍棒というのは気休め程度でしか無いに違いない。

 ああ、無常……今日こそ俺の人生は終わったぜ。

 そう…思ったのだが……まぁ、俺が日記を書けていることからも分かる通り、勝ってしまいましたよ!

 バトルが開始して、オレはせめて悪足掻きぐらいは…と気合を入れたのだが、そうしたらなんか勝手に相手がビビって逃げ出した。俺は基本鈍いから追いつけないし、試合は膠着状態に。で、結局はドローになりました。因みに子供はその場で失禁した後、気絶した。

 何故にこんなことに? と、疑問に思ってふと観客席の方に目を向けたらインテリと目があった。インテリは満足そうに小さく頷いている。

 で、ふと思い出したんだ。スキル『鋭い眼光』を! どうやらこれは人間には効果絶大だったようだ。もしかしたら敵が屈強な戦士とかだったら効かなかったのかもしれんが、所詮敵はもやし。レジストしきれなかったようだ。

 ふぅ、今日も何とか生き残ったぞ……。

 明日からも、がんばろっと。

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