全てがわかった
第五話の最後は、あじとサンマの位置を変えて読んでくださぃ。
作者のミスで小説が読みにくくなった事を心からお詫びします。
花子は幽霊なんだ。
俺は震えが止まらなかった。俺は幽霊と飯を喰って、幽霊とあんな事やこんな事もしていたなんて…。
震えが止まらなかった。
俺がコンビニに行こうとした時、空き地に2、3人の人が何かを埋めていた。その人たちを、俺は知っている。
俺んちの近所の人で、左隣の村上さんとその妻、向かいの阿左美さんだった。
「何してるんですか」
親がいない俺の事をこの人たちはほんとに何でもしてくれている。いつか恩返ししたいぐらいだ。
「ああ、剛くん」
3人が作っていたのは墓だった。砂の山に木の棒が刺さっている、無縁仏のような墓だ。
「誰かのペットが死んだんですか?」
「剛くん、あの子だよ」
「えっ?」
あの子だよって、誰だよ。
「マリンちゃん、だよ」
「えっ!?マリン…?」
マリンは右隣の家の新井さんの飼い猫で、家族の精神的ダメージな出来事があり、母親が狂乱してマリンをいつも殴っていた。新井さんの家に近寄ると、鈍い打撃音と、絶叫に近いマリンの叫び声を聞き胸がいつも痛くなっている。
「やっぱりあの母親が殺したんですか?」
「ああ、わしが散歩中に空き地にゴミのようにマリンの死体が置いてあった」
「マジですか…」
俺は、その場面を想像すると泣きそうになった。
よく家から抜け出してる所を俺が拾って世話してたっけな。ご飯を食べてる時、幸せそうな顔してたな。そんなマリンが…。
俺はこの場にいる事が辛くて、逃げるように去った。逃げ去ったっていうんだよな。
コンビニでいつものようにシーチキンおにぎり(今日は18個)を買い終えると、空き地を通り過ぎようとして足を止めた。マリンの墓が見える。
俺はコンビニで買っていた線香にライターで火を点け、墓の前に刺した。
線香独特の香りが漂う。
「迷わず成仏しろよな」
俺が手を合わせると、かすかに猫の鳴き声が聞こえた。
この鳴き声…。
ニャァ…。
マリンの鳴き声だ。マリンの鳴き声は徐々にトーンダウンしてるのが特徴だから分かった。
ニャ…ょし。
えっ?
「剛!」
「えっ?ぁっ。花子」
「もぅ遅いょ。心配したじゃん。」
マジで。やっぱり彼女だょな。
「シーチキンおにぎりが喰われるかと思って」
そっちかよ。
花子はコンビニの袋からシーチキンおにぎりを一個取り出して、封を切って食べ始めた。
「罰当たるぞ」
「当たんないもん」
「なんで」
「だってすぐ近くにいるもん」
「えっ?」
花子はしまったって感じの表情になった。
「あっ、ぃゃ、その、ボレンノ、なんでもないよ」
なんだよボレンノって。ボレンノが答えかと思ってヒヤヒヤしたよ。
てか絶対何か隠してるぞ。こいつ、もしやヘヴンで霊が見える能力ももらったのか?
「おや、剛くん」
そこに現れたのは村上さんだった。村上さんはよくこの付近を散歩してるもんな。
「やっぱり、線香あげてたか」
「えっ?」
「マリンが死んだのを一番悲しむのは、剛くんだなぁって思ったんだよ」
「そうなの?」
花子が嬉しそうに俺に聞く。
「マリンがもし人間だったら、剛くんとつきあってただろうな」
村上さんはそう言い残し、散歩の続きを始めた。
多分、そうだろうな…。マリンがもし、人間だったらこんな無残な死に方を…。無残?
無残な死に方をした霊が行く楽園。
急に俺の部屋に現れた花子。
マリンの死に方。
花子の態度。
俺は全てがわかった。
次回、最終回。