イタル924
前回の続き
「私に部屋ちょうだい」
何ほざいてるんだ?こいつ…。
花子は上目遣いでこっちを見ている。
「なんでだ?」
「だってぇ、ここ広いし、なんかこの部屋だけで生活してると恋人みたいでやだ」
恋人じゃん?てかぉ前が付き合うって言ってたじゃん。
「なんだここに来たんだ」
「剛の彼女になるため」
「矛盾してないかい。はっきりと」
うん。こいつバカだ。
「お願いだから部屋ちょうだい」
「花子、いい場所があるぞ」
「どこ、どこ?」
「おしゃれな小窓があって、ほのかにラベンダーの香りがあり、綺麗な椅子がある場所」
「いきたーい」
「よし行こう」
俺の家は不思議な造りだ。何故なら、トイレは外側からしか鍵が掛けられないのだ。暇だからちょっといじってたが、こんな時な役立つなんてな。
今、花子はトイレで泣いている。
「剛様、すみませんでした。なんかします、なんかしますから…。なんか、ちょっとすいません。」
何をするんだよ。しかも日本語おかしいぞ。
「なんか…げふふ、ついに我々の力が集う時訪れたり。力はこの世界を壊滅へと導き出し、恐怖という奈落の底へ人々を落とし入れるであろう」
なんか変になったぞ。げふふって何だよ?しかも我々ってこいつ一人だけだろ。
「誘え、集いなる恐怖の力よ」
なんか恐ろしい気迫を感じた。これは、あいつは何をするんだ。
「ダベンポート・グリチェイナル・ナガラッテバ・ルパンハアナタノハートヲヌスミマシタ。スペシャル!!!!!!!!!」
ドルル、ドルルル、ドドドド。
不気味な音がドア越しから聞こえる。ってなんかこの音、どこかで聞いた事があるぞ。
ドドドド、ギュイーン。
ドアの中から銀色の塊…ってただのチェーンソーじゃねえか。
チェーンソーはドアを切断していき、ついに大きな長方形の穴を開けた。
「やっと出られた…」
大きな覗き穴、完成。
どこから出したんだよ、チェーンソー。
花子曰わく、このチェーンソーは“イタル924”という。
花子は俺の前で正座をした。俺の椅子の上で。何故かコーヒー牛乳をずっと飲んでいる。
「トイレに閉じ込めた俺も悪いが、あんな穴開けるなんてな」
「剛、イタル924は悪くないの。悪いのは私だよ」
「ははは、チェーンソー歩けないもんな」
「動けないとは失礼な」
腹が立つような声が聞こえる。なんだこいつ。
「動けないとは失礼な」
ああ、腹が立つ。
「ボロボロなステファニー」
単語も腹が立つ。これは花子の声じゃねーし。誰だ。
「ここだ」
んっ?
俺は足元を見ると、チェーンソーに弱そうな手足が生えていて、ギャグマンガのような目をして怒ってるのか蒸気が上がっている。
歩けたよ。イタル924。