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少年よ大志を抱け

 深夜のコンビニの自動ドアが開いた。

「いらっしゃいませ」

 店員の心のこもってない挨拶。俺はその挨拶を聞き流し買い物をする。すると、ひそひそ話が聞こえるんだ。

「また来たわよ」

「えっ、あの子がなんなの?」

「ああ、まだ新しく入ったから知らないか…。あの子、シーチキンおにぎり少年なの」

「なにそれ?」

「必ずシーチキンおにぎりを買うの、しかも安いの」

「うわぁ…ひく」

「店長が言うには、この世にあるシーチキンを食い尽くすためにあの世から来たんだって」

 丸聞こえですからぁ。丸聞こえですからぁ。なんだよ、シーチキンおにぎり少年って。てか俺は死んでねえ。立派に今日を生きているんだよ。

 そう思って俺はシーチキンおにぎりをカゴに入れる。

「ほらまた入れたぁ」

 店員のはしゃぐ声が聞こえる。っておい!写メ撮るなよ!パシャパシャうるせえよ。勤務中だろ。

「みんなに見せよぉ」

 見せんなよ!

 俺はこのコンビニで都市伝説化している。しかも、俺を見ると幸せになるという噂も聞く。俺にはそんな素晴らしい能力はねえ。普通の高校生だよ。

 なんで俺がシーチキンおにぎりばっか買うかと言うと…。


「わぁーい、シーチキンおにぎりぃ」

 今後コンビニに行く時はこいつを連れていこう。俺はそう決意し、鮭おにぎりを噛みつく。

 嬉しそうにシーチキンおにぎりを喰っている女子高生こそ、俺の彼女となった花子。顔と名前が全然似合わないほど可愛い。

「ふにゃぁ、幸せ」

 満足げな顔でペットボトルのお茶を飲み干した。すごい食欲だな。

「今度1000個買ってこい。1000個」

 ハハハハ、死ね。

「てかてかぁ、剛んち来てから両親みなぃんだけどどこいるの?」

 まだ来て5時間だろ。てかなんで俺のイスでグルグル回ってるの。俺ずっと地べたかよ。

 

 俺の父親は、今刑務所にいる。

なぜかと言うと、不良高校生がタバコを吸っていたのを注意したら、高校生が親父に殴りかかってから喧嘩が始まり、親父は激しくなったのか不良高校生の内蔵を破裂させ、殺してしまったのだ。いくら、相手が先に手を出したとしても殺してしまったのは確かだからと殺人罪よりは刑は軽く、懲役二年三ヶ月。あと一年四ヶ月で釈放となる。

 俺の母親は、親父が刑務所に入っている間、ずっとデザイナーの会社に単身赴任している。月に十万送られてくる。けっこう稼いでるんだな…。

 親父…お袋…。

「ねぇえ、剛の両親はぁ?」

 しみじみとした雰囲気をぶち壊した挙げ句、花子はしつこく聞いてきた。

「俺の両親は…二人とも死んだ」

 親父、お袋、許せ。もし帰ってきたとしたら奇跡だって言うから。

「えっ、なんで」

「事故で…」

「じゃあここで一人暮らし?」

「うん、まあそうなるかな」

「ねっ」

「んっ」

「私に部屋ちょうだい」

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