第36話 激怒のLINE
梓の突然の告白よりも、“俺ばかりが花凛を追いかけてる”ってそう言われて…
それが図星だからか、めちゃくちゃ腹が立った。
部屋に戻ると、俺は梓との間のドアをロックし怒り狂って歯磨きをして、そのままベッドに潜り込む。
頭からシーツを被ると、一日中気が張っていたせいか一瞬で眠りに堕ちていた。
朝モーニングコールが鳴って、俺は目を閉じたまま寝ぼけた頭でスマホを探す。
そのために、掌をシーツの上で何度か軽く滑らせた。
――え…もしかしてない??
頭を起こして、ベッドの下やベッドテーブルを見てもどこにもない…
――あれ?オレスマホどこやった??
テーブルの上にも、ソファーの上にも、窓際にもどこにもない。
本気で焦って来て、昨日の記憶をたどってみる…
俺、いつまで手に持ってた??
梓の部屋にいた時は、持ってたよな。
それから部屋に戻ってきて…歯を磨いた!
それを思い出し、慌てて洗面所に行ってみたが、そこにもスマホはどこにもない…
…いや!俺スマホ、マジでどこやった??
大慌てで隣の梓の部屋をノックして、彼女をたたき起こす。
すると寝起きの梓がドアを開け、すかさず俺はスマホがないか尋ねた。
「スマホ?」
「あぁ、俺こっちに忘れてない??起きて気がついたんだ!」
「ちょっとまってて…」
部屋に入って行く梓が、俺のスマホがテーブルの上にあったと言って持ってくる。
「良かった!俺どこかに落としたのかと思った!!あってよかったよ…」
この時俺は、スマホが見つかった事に安心して
まさか花凛の電話に梓が出てるなんて、夢にも思っていなかった。
それから俺たちは淡々と仕事をこなし、俺は最終日、花凛に「エルメス」でブレスレットをお土産に買う。
俺と色違いで、前に花凛が俺のを見て気に入ってたからだ。
そして花凛にちゃんと聞こう。
俺達の間で今何が起きてるのか…あいつの気持ちちゃんと確かめて、俺の気持ちをもう一度ちゃんと伝えなきゃ…
「凱斗、時間よ」
そう言えば、梓の事もはっきりさせとかないと。
俺の事、そんな風に思ってるなんて考えてもみなかった。
そう言えば…年末に俺達5人で飲んだ時、「一年くらい前に男と別れた」って言ってたな…
その時、“本当に他に好きな人ができたから”って言ってたけど…
―――――厄介な事になった。
このままだと仕事もやりにくい。もう一度はっきり言って線を引こう。
こうして俺は、サンフランシスコから羽田へ向かう機内に乗り込んだ――――
ビジネスを終えた安堵感と数日間の疲れが混じり合う中、シートに深く身を沈める。
昼に出発して、東京に着くのは午後3時ごろ…
やがて機体が安定したことを告げるアナウンスが流れ、俺は静かにパソコンを開き、メールのチェックを始めた。
すると、その横に置いてあるスマホにLINE通知が入る。
見てみれば、それは神崎璃子からだ。
神崎は花凛の親友で、俺の高校大学の同級生だった。
「なんだろ…珍しいな、あいつ。あっちまだ朝の5時だろ?」
開いてみれば、長文のメッセージがびっしりと書き込まれている。
パッと見るだけで、読むのが嫌になりそうなほどだ…
―――久しぶり。どうしても言いたいことあって、我慢できないからこれ送ってる。
花凛はやめてくれって言ってたから、絶対に言わないでよ。言ったら殺す。
言ったら殺すって…相変わらず恐ろしい女だな…
―――凱斗、あの女一体何なのよ!!
あの女?
―――もう花凛に会ってほしくない。そっちから距離置いてくれない?
はぁ??
―――大体花凛いるのにどういうつもりなの?あのSNSに、ブーイングの絵文字山ほど送ってやったわ!
SNS?
俺は、咄嗟に自分のSNSを開いてみる…
別にここ最近、変わったものは載せてない。
梓にも頼んだからか、それ以来どっちかって言うとビジネス系ばっかだ。
コメント欄を見てみると、投資家と握手してる写真に、神崎の絵文字が連打されてるやつを見つけたけど…
スライドさせてみても、他の写真も特に何にもない…
その時ふと、彼女以外のコメントでいくつもおかしなのを見つける。
≪カイティの彼女だ!≫
≪本命??≫
≪顔見えない!誰!≫
≪こっち向いて~!めっちゃ綺麗そう。さすがカイティ!≫
≪離れろ!ブスー!≫
「……」
なんだこれ??何度もスライドしても、それに該当するような写真はない…
でもこれって…俺の彼女??後ろ向きの花凛の写真とか…
そんなの載せるはずないよな??
「神崎のやつ、俺の出張への当てつけだろ!」
そう言ってまた、あいつのLINEメッセージに画面を戻す。
―――あんた、何人の女と遊んでるわけ??花凛が忙しいからって、舐めてんじゃないわよ!
ってか…何言ってんだこいつ??
俺が何したんだよ!
なんかムカつくな…こいつ高校の時からずっとこんなだよ!
―――海外出張ってなんで女連れなの?!おまけにその女と同じ部屋なんでしょ?!
花凛が許しても、私があんたを許さない!!
同じ部屋なわけないだろ!ったく…こんな女、俺絶対無理だ…
花凛、あいつに何言ったんだよ??
朝っぱらからこんなLINEしてきて…
―――あんた、花凛が悩んでるの全然気づいてないの?彼氏失格だよ!
花凛、女の声聞いてめっちゃショック受けてたんだから!!
「女の声聞いた?」
俺はその一文を見て、一気に最後まで読み切る。
花凛が、俺がサンフランシスコに行った次の日に神崎と飲んでて、酔って電話をかけてきたこと。
その電話に、寝起きの女が出た事…
それから相楽が、花凛に告った事…
自分はそっちを応援するから、黙って見てろって…
その下にウサギがクマに殴られるスタンプ連打―――
俺はファーストクラスの席から、隣の梓がいるであろう席の方に視線をやった。
扉を閉めてるから、あっちからは見えない…
―――これはどう考えたって、梓の仕業だ。
あの日俺は、あいつの部屋に朝までスマホを忘れてた。
LINEの通話着信なら、暗証番号解除しなくても出られる…
あいつ花凛に何か言ったのか?
これはやばい…
花凛電話出るかな…
もう起きてるか??
俺は慌てて、機上から花凛にLINE通話した。




