第22話 偶然の再会と胸のざわめき
「え?それどういう事?」
「あ、いや…あのさ?なんか、昔っからの友達みたいな…そう!友達みたいな感覚なんだよな」
「あぁ…だからいっぱい助けてくれるのか」
「ちょっと、それ俺にも分けて?夕張メロン」
「白玉は?」
「俺、白玉は餡子派なんだ」
「えー、メロンなくなっちゃうな~」
そう言って、わざと嫌そうに笑いながらも、彼女は夕張メロンを取り分けてくれた。
夕張メロンで誤魔化したけど、俺一体どうしちゃったんだろ…
俺は、この間胡蝶さんと桜庭が一緒にいるところを見て以来、ちょっとおかしいんだ。
今だって、何言おうとした?
ただの同期じゃない…って…
桜庭は、同期50人の中でも学生インターンからずっとうちにいるやつで、本当に頑張り屋な子だ。
初めて俺が話したのは、歓迎会の時。
なんか、うちの会社にない雰囲気の子だなって、そう思ったのを覚えてる。
ちゃんと仕事できるのかな…って。
それから一緒のチームを組むことも多くて、自然と“一番話す同期”になっていた。
桜庭は、さっき「ウザいか」って聞いてきたけど、俺にしてみれば頼られるのが嬉しくて、
自然と面倒を見るのが癖になってるっていうか…
「もうおなかいっぱいだぁ」
「明日もがんばろうな」
店を出た時、笑顔で伸びをした桜庭は、ちょっと気が晴れたらしい。
今日は朝から元気が無くて、ずっと気になって様子を見てたら案の定ミスをした。
その落ち込みようも半端なかったから、こうやって元気を取り戻してくれたなら嬉しい。
誘った甲斐があったってもんだ。
二人でどうでもいい話をしながら、駅の方に向かって歩いていた時だ。
「花凛?」
俺達の後ろから、優しそうな男の声がして俺たちは咄嗟にそれに反応した。
そこには同じ位の年の、アイドルみたいな綺麗な顔立ちの男が立っていて、桜庭に向かって手を振っている。
「朔ちゃん!」
桜庭は見たこともないような笑顔になって、そいつの所へ駆けよった。
「久しぶり!花凛」
男は両手を広げて、桜庭を抱きしめていて、彼女も何の抵抗もなく抱きついてる。
「どうしたの!?こんなところに!」
「あぁ、ちょっとした付き合い。花凛は?」
「あ、仕事帰りにご飯食べてたの。朔ちゃん、こちら同期の相楽君!」
桜庭にそう紹介されて、軽く頭を下げたら、男の顔が一瞬固まる。
「相楽君、こちら久世朔君だよ!」
久世?なんかこの顔と、その名前どっかで聞いたことあるような…
「よろしく」
彼は作り笑顔でにこやかに、俺に手を挙げた。
品のいい優しい感じの男だ。
―――久世朔…?
「朔ちゃんまたね?気を付けて」
「花凛、体調いいの?」
「え?体調?全然いいよ。めっちゃ元気」
「…ふぅん…」
「朔ちゃん、今度大原先輩の結婚式の二次会行く?」
「あぁ!行く行く!」
「じゃあ、また会えるね!」
「花凛、一緒に行こうよ」
「うん!わかった。じゃあ連絡する!」
「了解」
二人はにこやかに手を振り合うと、彼はその場でタクシーを拾って帰っていった。
「わぁ。こんなところで会えると思わなかった」
「久世朔…どっかで聞いたことあるんだよな?」
「たまに、テレビとか出てるらしいよ?」
「アイドル?」
「ふふっ。見た目はそんな感じだけどね。「表久世流」の若宗匠」
「あぁ!うちの母さんが言ってたな。どっかで見たことあると思ったんだよ」
「高校でね、同じクラスだったんだ。大学でゼミも一緒だったの。何かとお世話になって」
「へぇ」
「はぁ。顔見たら元気出たな~」
「それは良かった。桜庭が元気なのが一番だ」
そう言って笑ったら、桜庭がこっちをじっと見てくる。
「相楽君も、ありがとうね」
「俺は…別に…」
「私、今日全然集中できてなくて…。相楽君にも迷惑かけちゃった。ごめんね」
「別にいいよ。今度助けてくれたら」
「そんな時あるかなぁ」
「あるだろ、普通に」
「じゃあ、その時倍にして返す」
「おっ。言ったな?」
こうやって、ふざけ合っているのが普通に楽しくて…
別れるのが名残惜しくて…
「じゃあ、おやすみなさい。また明日ね」
「おう!おやすみ」
明日になれば会えるのに、ずっとそばに居たい気がした。
胡蝶さんといい、今日の久世さんといい…
なんか、他の男の事が気になるとか…
まるで独占欲だ。
これって俺…もしかして…
「桜庭の事…」
女として意識してる…?
それに気づいた時―――
俺は、彼女の乗ったタクシーが見えなくなるまで、ずっとその場所から動けなかった。




