表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/86

第22話 偶然の再会と胸のざわめき


「え?それどういう事?」


「あ、いや…あのさ?なんか、昔っからの友達みたいな…そう!友達みたいな感覚なんだよな」


「あぁ…だからいっぱい助けてくれるのか」


「ちょっと、それ俺にも分けて?夕張メロン」


「白玉は?」


「俺、白玉は餡子(あんこ)派なんだ」


「えー、メロンなくなっちゃうな~」


そう言って、わざと嫌そうに笑いながらも、彼女は夕張メロンを取り分けてくれた。


夕張メロンで誤魔化したけど、俺一体どうしちゃったんだろ…



俺は、この間胡蝶(こちょう)さんと桜庭(さくらば)が一緒にいるところを見て以来、ちょっとおかしいんだ。



今だって、何言おうとした?

ただの同期じゃない…って…


桜庭は、同期50人の中でも学生インターンからずっとうちにいるやつで、本当に頑張り屋な子だ。


初めて俺が話したのは、歓迎会の時。

なんか、うちの会社にない雰囲気の子だなって、そう思ったのを覚えてる。


ちゃんと仕事できるのかな…って。

それから一緒のチームを組むことも多くて、自然と“一番話す同期”になっていた。


桜庭は、さっき「ウザいか」って聞いてきたけど、俺にしてみれば頼られるのが嬉しくて、

自然と面倒を見るのが癖になってるっていうか…


「もうおなかいっぱいだぁ」


「明日もがんばろうな」


店を出た時、笑顔で伸びをした桜庭は、ちょっと気が晴れたらしい。


今日は朝から元気が無くて、ずっと気になって様子を見てたら案の定ミスをした。

その落ち込みようも半端なかったから、こうやって元気を取り戻してくれたなら嬉しい。


誘った甲斐があったってもんだ。


二人でどうでもいい話をしながら、駅の方に向かって歩いていた時だ。


花凛(かりん)?」


俺達の後ろから、優しそうな男の声がして俺たちは咄嗟にそれに反応した。


そこには同じ位の年の、アイドルみたいな綺麗な顔立ちの男が立っていて、桜庭に向かって手を振っている。


(さく)ちゃん!」


桜庭は見たこともないような笑顔になって、そいつの所へ駆けよった。


「久しぶり!花凛」


男は両手を広げて、桜庭を抱きしめていて、彼女も何の抵抗もなく抱きついてる。


「どうしたの!?こんなところに!」


「あぁ、ちょっとした付き合い。花凛は?」


「あ、仕事帰りにご飯食べてたの。朔ちゃん、こちら同期の相楽(さがら)君!」


桜庭にそう紹介されて、軽く頭を下げたら、男の顔が一瞬固まる。


「相楽君、こちら久世朔(くぜさく)君だよ!」


久世?なんかこの顔と、その名前どっかで聞いたことあるような…


「よろしく」


彼は作り笑顔でにこやかに、俺に手を挙げた。


品のいい優しい感じの男だ。


―――久世朔…?


「朔ちゃんまたね?気を付けて」


「花凛、体調いいの?」


「え?体調?全然いいよ。めっちゃ元気」


「…ふぅん…」


「朔ちゃん、今度大原先輩の結婚式の二次会行く?」


「あぁ!行く行く!」


「じゃあ、また会えるね!」


「花凛、一緒に行こうよ」


「うん!わかった。じゃあ連絡する!」


「了解」


二人はにこやかに手を振り合うと、彼はその場でタクシーを拾って帰っていった。


「わぁ。こんなところで会えると思わなかった」


「久世朔…どっかで聞いたことあるんだよな?」


「たまに、テレビとか出てるらしいよ?」


「アイドル?」


「ふふっ。見た目はそんな感じだけどね。「表久世流(おもてくぜりゅう)」の若宗匠(わかそうしょう)


「あぁ!うちの母さんが言ってたな。どっかで見たことあると思ったんだよ」


「高校でね、同じクラスだったんだ。大学でゼミも一緒だったの。何かとお世話になって」


「へぇ」


「はぁ。顔見たら元気出たな~」


「それは良かった。桜庭が元気なのが一番だ」


そう言って笑ったら、桜庭がこっちをじっと見てくる。


「相楽君も、ありがとうね」


「俺は…別に…」


「私、今日全然集中できてなくて…。相楽君にも迷惑かけちゃった。ごめんね」


「別にいいよ。今度助けてくれたら」


「そんな時あるかなぁ」


「あるだろ、普通に」


「じゃあ、その時倍にして返す」


「おっ。言ったな?」


こうやって、ふざけ合っているのが普通に楽しくて…

別れるのが名残惜しくて…


「じゃあ、おやすみなさい。また明日ね」


「おう!おやすみ」



明日になれば会えるのに、ずっとそばに居たい気がした。


胡蝶さんといい、今日の久世さんといい…


なんか、他の男の事が気になるとか…

まるで独占欲だ。



これって俺…もしかして…



「桜庭の事…」


女として意識してる…?


それに気づいた時―――



俺は、彼女の乗ったタクシーが見えなくなるまで、ずっとその場所から動けなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ