表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/21

第1話 頼れる同期



――新しい連載、始めました。

今回は「現代恋愛」です。





金曜日の午後八時過ぎ。

業務後、同期の相楽(さがら)君と私は、軽く食事をすることにした。


そこは大手町駅に直結した複合ビル1階にある、ワインと小皿料理のバル。

店内は木目調の内装で、落ち着いた雰囲気だ。


ガラス越しにちらちらと街の明かりが揺れ、金曜の夜だという事もありほとんどのテーブルが埋まっている。


私と相楽君は、窓際の二人掛けのテーブルに案内され、向かい合って座った。


BGMは、洋楽ポップスが控えめに流れ、適度なざわつきが二人の会話を自然に守ってくれている。


相楽恭平さがらきょうへいは私の同期で、同じ部署ということもあり、“頼れる親友のような存在”だ。

彼は、東京大学で国際関係論を専攻し、語学力と論理的思考力に優れたエリート。


幼少期は父親の海外赴任に伴い、アメリカやシンガポールなどで暮らした経験を持ち、異文化理解やグローバルな感覚を自然と身につけている。


私も海外生活の経験があったため、自然に彼と意気投合した。





「私、今日プレゼン…緊張して声裏返っちゃった。やっぱりそれ、聞こえてた?」


一杯目のワインをグラスに半分ほど口をつけた頃、切り出した仕事の話。

私は、目の前の相楽君の顔をそっとのぞき込む。


「んー、バレてたけど問題なしだろ。クライアント、納得してたし。」


「ほんとに?」


「むしろ、声震えてた割に中身しっかりしてた。あれ、完璧に論点整理したでしょ。」


「うん。今朝、朝方までロジック固めたもん。」


「お前、今日それで寝坊したのか?」


「あー。もうそれ…。言われたくない。」


私が顔を伏せいじけてると、ワイングラスをくるくる回しながら、相楽くんがクスッと笑った。


「なんか今日は、俺たち久しぶりに人間らしい夜かもな。こんだけ働いてたら、寝坊も寝落ちもするだろ普通。」



―――相楽君は優しい。


失敗すれば励まし、困れば手を貸してくれる。

まるで私の守護神みたいだ。気を遣わずにいられる。だからこそ、恋とは違うと思っていた。


仕事帰りに誰かとご飯を食べるなんて、いつぶりだろう。

私の毎日は、タスクとプレッシャーと、少しの自己嫌悪でできている。

そんな私を引っ張り出してくれるのが、相楽くんだった


私は目の前にある、トリュフポテトを一口。


「お前、ほんとそれ好きな?必ず頼むし。」


「だって。違うもの怖くて頼めない。」

そう言うと、相楽君は声を出して笑った。


「なんで?いろんなもの食べればいいじゃん!」


「どうして、頼まないんだろうね?私。」


「俺が、聞いてんの!」

目じりを下げながら、彼は私の額を指先でついた。


相楽君とのご飯は、いつも気楽で楽しい。

穏やかで、私の事を決して否定したりしないし、

仕事の事もだけど、不思議と悩みも色々相談出来た。


――そう…

凱斗(かいと)のこと以外は。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ