3杯目.むじゅん
あるところに矛と盾を売る商人がいた。
「この矛はどんな盾をも貫けるすごいものです!」
そして、ある時は盾を掲げて
「この盾はどんな矛でも貫くことのできない盾です。」
それを両方とも見ていたあるお客がいった。
「では、その矛で盾をついたならどうなる?」
商人は…………
ーーーーーー
昔、最強の矛を作る山の国と最強の盾を作る谷の国があったそうだ。谷の国は山の国からの攻撃に備え盾を作り上げていた。
「今年も奴らがまた攻めてくる。」
「いつもギリギリで守れているが、今度はしっかりと奴らの矛から守れる盾を作らなければ。」
「大丈夫です。今年は今までの倍、いや3倍硬いです。」
谷の国は山の国からの襲撃をギリギリでかわしていた。
ーいよいよ襲撃の日。
「うおーーーー。」
山の国は勢いよく谷の国に矛を構えて突進してくる。
パキン!
なんと最強の矛を盾が弾き返したのです。
「ば、ばかな。」
山の国はそそくさと帰って行った。
「やりましたよ!ついに山の国の矛を打ち破りましたぞ!」
谷の国は歓喜に溢れました。
そして、次の年も山の国の矛を打ち返し、その次の年もまたその次の年も…
「もう、山の国の攻撃も怖くないですね。」
「そうですね。この盾を強くしていけば、奴らに負けることなどはありません。」
谷の国はあれから負けることなく盾はどんどんと固くなって磐石のものになっていました。人々が安心に包まれる中一人の者が呟いた。
「この盾の素材で武器を作れば、あやつらに本当に負けることはないのでは?」
全員が沈黙に包まれた後ニヤニヤと笑い始めた。
谷の国はせっせと武器を作り固く鋭い矛を生み出した。そして翌年、山の国に谷の国は攻め入った。山の国は矛を構えたがその矛さえも貫いて全てを打ち倒した。最強の盾はいつのまにか最強の矛へと姿へ変えたのだった。
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「では、その矛で盾をついたならどうなる?」
商人はニヤリと笑ってこう答えた。
「では、試してみますか?」